曲目 | 演奏時間 | 演奏者コメント |
ワルツ第1番変ホ長調Op.18「華麗なる大円舞曲」 Waltz No.1 E-flat major(Es dur), Op.18 |
5' 17'' 2009/7/12
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遅まきながら、当サイト開設3年余りにして、ショパンの超有名曲「華麗なる大円舞曲」です。
この曲はショパンのワルツの中でも特に舞曲的な要素が際立った華やかな円舞曲で、
明るく溌剌としたテーマが次々と登場し、華麗に展開される構成になっています。
その中で、特に同音連打がモチーフとして頻繁に使われるため、この曲を弾く上ではある程度のピアノのアクションも
要求されるところです。僕が今弾いているピアノはアクション的に鍵盤の戻りが遅いため、
きちんと仕上げようとすると思いのほか大変でしたが、ショパンの曲の演奏を聴いていただくという
当サイトの運営趣旨を考えると絶対に避けて通ることのできない曲であることは初めから分かりつつも、
この曲の異常な弾きにくさが災いして実現しなかったという経緯があります。
まだ自分としては納得できない部分はありますが、これでようやくショパンの超有名曲が出揃いました。
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ワルツ第2番変イ長調Op.34-1 Waltz No.2 A-flat major(As dur), Op.34-1 |
5' 13'' 2008/3/29
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舞曲系の華やかで明るいワルツで、第1番「華麗なる大円舞曲」のスタイルを踏襲して、その路線でさらに内容を豊かにした
華麗系ワルツの名曲です。ショパンのワルツの中で最も規模が大きく、1番、5番と並んで難易度が最も高い曲です。
曲中何回か登場する速い上昇音階、跳躍、和音の連打、コーダの速いパッセージなどが難しく、
きちんと仕上げる場合、これらが大きな課題となります。ショパンのワルツの中では、僕にとって最も古いレパートリーで、
中学生以来長年弾き続けてきた1曲ですが、弾き込みを決心して、やっと公開の運びとなりました。
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ワルツ第3番イ短調Op.34-2 Waltz No.3 A minor(a moll), Op.34-2 |
5' 20'' 2007/11/17
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憂鬱なワルツですが、この曲は作曲者自身、特にお気に入りだったそうです。
技術的にはそれほど難しくはないですが、左手が旋律を受け持ったりする他、プラルトリラーが頻出するので、
これらをごまかしなくきちんと弾くのはかなり難しいと思います。この曲は単調に弾いてしまっては
面白みに欠ける演奏になってしまうということもあって、単に憂鬱に弾くのではなく、表現の振幅を付けて
聴く人を飽きさせないように工夫してみました。
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ワルツ第4番ヘ長調Op.34-3 Waltz No.4 F major(F dur), Op.34-3 |
2' 06'' 2009/7/26
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快活なテンポのワルツで右手の旋回する動きは「小犬のワルツ」を彷彿とさせ、一部では「子猫のワルツ」とも
呼ばれているようです。この曲で忘れられないのは、1985年第11回ショパンコンクールの2次予選でのブーニンの名演です。
本来速いテンポの曲なのですが、ブーニンはこの曲を、それまで誰も弾いたことがないような超高速のテンポで、
軽快、楽しげに遊び心満点で弾き、聴く人に新鮮な驚きと感動を与えたことが思い出されます。
しかし、ブーニンのあの演奏が伝説的な名演という最上級の評価を得たのは、この曲をあのテンポで弾けたという事実によるものではなく、
それまで誰も試そうとしなかった個性的で独創的な解釈が聴く人を魅了したことによるものです
(プロのピアニストなら誰でもブーニンと同じテンポでこの曲を弾くのは容易なはずです)。
僕にとってブーニンのあの演奏のインパクトがあまりにも強烈であったため、ここでの演奏もその影響を受けています。
そのときのブーニンの演奏はこちらで聴けます。
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ワルツ第5番変イ長調Op.42 Waltz No.5 A-flat major(As dur), Op.42 |
3' 45'' 2009/8/23
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ショパンのワルツ中、2番と並んで最も難易度の高い華やかなワルツです。
具体的な構成は、序奏-A-B-C-B-D-B-E-B-A-B-経過句-コーダで、3部形式のようでそうではなく、様々なテーマが現れ、
それらを巧みにつなぎ合わせることで成り立っている独特のワルツです。
長いトリルの序奏で始まった後、4分の3拍子でありながら、右手が刻む8分音符は、各小節における第1音と第4音が旋律、
それ以外の音は内声部となり、2拍子系となります。その間、一方の左手は通常のワルツと同様に3拍子を刻むため、
結果的に複合リズム(ポリリズム、クロスリズム)となる点がユニークです(A)。
それが終わると今度ははっきりとした3拍子系に戻り、右手が8分音符の軽やかなパッセージを刻む楽句が登場します(B)。
この楽句はこの曲の中でこれ以後、間奏的な役割を持ち、このパッセージ部が登場するごとに、
その次に異なる主題が3種類登場します。1回目(C)は優美、2回目(D)は溌剌かつ華やか、
3回目(E)はハ短調で始まり少し長めで、やや憂いを帯びた上品で艶やかな旋律となっています。
最初のポリリズムの主題が再登場した後は、頻出する8分音符の軽やかなパッセージ(B)と、中間部で2回目に登場した
溌剌としたテーマ(C)を発展させることにより、演奏効果の極めて高い華麗なコーダを形成し、
終結に向けてアッチェレランド、クレッシェンドして極めて華やかに締めくくられます。
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ワルツ第6番変ニ長調Op.64-1「小犬のワルツ」 Waltz No.6 D-flat major(Des dur), Op.64-1 |
1' 50'' 2007/1/22
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皆さんもご存知、「小犬のワルツ」です。恋人のジョルジュ・サンドが飼っていた小犬が自分の尻尾を追いかけて
くるくる回る様を音で描写したものと言われています。技術的には、装飾音をごまかさずにきちんと指定の場所に入れること、
細かいパッセージを粒を揃えて軽快に弾くのが結構難しいです。「初ショパン」として小学生が弾くのをよく聴きますが、
きちんと弾こうとすると難しい曲ですね。
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ワルツ第7番嬰ハ短調Op.64-2 Waltz No.7 C-sharp minor(cis moll), Op.64-2 |
3' 20'' 2006/3/29
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ワルツの中では人気が高い作品です。憂鬱で晩年のショパンの心境が現れた作品ですね。
主部ではワルツリズムがマズルカ化していて、哀愁が漂う旋律ですね。
3回現れる8分音符の連続部では、右手の音の粒を揃えるのが結構難しく意外に弾きにくいです。
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ワルツ第8番変イ長調Op.64-3 Waltz No.8 A-flat major(As dur), Op.64-3 |
2' 48'' 2009/5/4
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ショパンのワルツは9番以降は初期〜中期に作曲され出版されなかった遺作であるため、
この第8番がショパンにとって最後のワルツです。
長調のワルツとしてはテンポは遅めで、冒頭の変イ長調の主題は快活というよりも優雅で上品で優しい曲調です。
僕は「円舞曲」というのがどのような踊りなのかは知らないのですが、パリのサロンで貴婦人たちが踊る優雅な雰囲気を
想像しながらこの曲を弾いたり聴いたりすることが多く、ここでもそういう雰囲気を感じながら弾きました。
しかしショパンはこの曲をただの「円舞曲」として終わらせず、目まぐるしい遠隔転調を多用し、曲の流れの意外性や
面白さを存分に盛り込んでいます。中間部の2拍子ががったリズムもユニークです。最後は意外な転調によって
コーダに向かい、8分音符が徐々にアッチェレランドして締めくくられます。
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ワルツ第9番変イ長調Op.69-1「別れのワルツ」 Waltz No.9 A-flat major(As dur), Op.69-1 |
4' 05'' 2007/7/30
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ショパンが25歳の頃、交際していたポーランド貴族の娘マリア・ヴォジンスカに贈った愛らしい抒情詩風ワルツです。
「別れ」というタイトルは、結局2人の恋が実らず、別れることになったことから付けられたものです。
結局ショパンはこの曲を恋人と自分だけの思い出の作品として生前公開せず、死後発見されて出版されたようです。
甘くロマンティックで夢見るような旋律が魅力で、ショパンの抒情詩風ワルツの名作の1つです。
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ワルツ第10番ロ短調Op.69-2 Waltz No.10 B minor(h moll), Op.69-2 |
4' 19'' 2009/7/12
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ワルツの中では3番、7番と並んで深い哀愁と美しい詩情が漂う名曲で、広く親しまれているワルツの1つです。
この曲はショパンが19歳の時に作曲された作品と言われていますが、19歳の少年の作品とは、にわかには
信じがたいほど、深い哀愁に満ちた驚くべき作品です。ショパンがピアノの持つ美しい響きを生かして、聴く人に
この上ない共感を呼び起こす稀有の才能を持っていたことを証明するに十分な作品ではないかと思います。
標準的な弾き方は、ここでの僕の弾き方よりもテンポが多少速めで抑揚を大きくつける弾き方のようですが、
昔からこのような弾き方で定着しています。
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ワルツ第11番変ト長調Op.70-1 Waltz No.11 G-flat major(Ges dur), Op.70-1 |
1' 53'' 2007/7/9
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ショパンのワルツの中ではあまり人気がない曲ですが、個人的には好きな1曲です。
特に中間部には思い入れがあって、この部分を弾きたいがために、前後の部分も抱き合わせで練習したようなものです。
前後の主部は跳躍が多くて、気を抜くとミスタッチの連続になってしまう、かなり厄介な部分です。
この演奏も即席仕上げのため練習不足で、けっこうミスってます(苦笑)細かいところは目をつぶって(耳をふさいで)
聴いて下さいm(__)m
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ワルツ第12番ヘ短調Op.70-2 Waltz No.12 F minor(f moll), Op.70-2 |
3' 25'' 2008/6/8
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ショパンの作品番号付きのワルツの中ではおそらく一番人気が低い曲ではないかと思いますが、
華やかさはないものの、抒情的で優雅な雰囲気の小品です。難易度的にも、1番から14番のワルツの中では、
技術的に最も易しい曲です。多少弾きにくい部分もありますが、ワルツ入門用の1曲として
皆さんにもおすすめしたい1曲です。
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ワルツ第13番変ニ長調Op.70-3 Waltz No.13 D-flat major(Des dur), Op.70-3 |
2' 46'' 2006/12/27
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ショパンが祖国ポーランドを出国する直前、片想いをしていたソプラノ歌手・コンスタンツィア・グワドコフスカを思いながら
書かれたと言われる抒情詩的で優雅なワルツです。技術的な課題は主部に集中していて、冒頭の主題で旋律と他の声部とを
弾き分けることと、プラルトリラーをきちんと入れるのが課題です。易しく聴こえますが、
きちんと弾こうとするとかなりの難易度になります。
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ワルツ第14番ホ短調遺作 Waltz No.14 E minor(e moll), Op.posth |
2' 52'' 2006/10/3
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これも人気の高いワルツですね。短調ながら急速のテンポのワルツで、数多くの跳躍がこの曲の難易度を著しく上げています。
さらに、連打、プラルトリラーなどをきちんと処理するのも意外に難しく、演奏者にとっては嫌な箇所が多いです。
この曲は、何と言っても演奏効果の高いホ短調の主部が魅力ですが、中間部のホ長調の甘美な旋律も結構好きです。
少々ミスがありますが、とりあえずこの演奏を一旦アップしておきます。
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ワルツ第15番ホ長調遺作 Waltz No.15 E major(E dur), Op.posth |
1' 58'' 2009/7/26
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ショパンのワルツ15番以降は1番〜14番に比べて演奏される機会が極めて少なくなります。
このワルツ15番は、規模も小さく技術的にも極めて易しく書かれているため、ショパン入門用としてもおすすめの1曲です。
構成はABA-C-ABAの3部形式で、Aはホ長調、Bは嬰ト短調、Cはイ長調と変化していますが、それぞれの部分の中では
転調がなく、楽想の豊かさや変化に乏しいとも言えますが、逆に言えばそれだけ分かりやすく取り組みやすい曲とも言えます。
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ワルツ第16番変イ長調遺作 Waltz No.16 A-flat major(As dur), Op.posth |
2' 04'' 2009/10/24
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この曲はショパンのワルツの中では唯一、8分の3拍子となっています(それ以外は全て4分の3拍子です)。
このワルツ16番は常動曲(無窮動曲)の一種で、右手が16分音符で絶え間なく動きます。
構成的には15番と非常に似ていて、AA'(AA')BA'-C-AA'BA'と、短いトリオCを含む3部形式で書かれています。
Aは変イ長調、Bはヘ短調、Cは変ニ長調で、これも各部分内では転調が全くなく、従って変化に乏しいと言えます。
しかし、動きのある曲なので、比較的印象に残りやすいのではないかと思います。
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ワルツ第17番変ホ長調遺作 Waltz No.17 E-flat major(Es dur), Op.posth |
2' 48'' 2009/10/24
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この曲はワルツとしては唯一、ロンド形式で書かれているユニークな曲です。
構成はAABBACCADDAEAというように、軸となるテーマAを毎回挟みながら、異なった楽想B,C,D,Eが登場するという、
分かりやすいロンド形式です。曲の調性も、テーマCでハ短調が登場する以外は、変ホ長調で全く転調することがないです。
ワルツ15番以降18番までは、転調の技法を忘れてしまったかのような奇異な印象を与えますが、
ショパンは、おそらくそれを意図して作曲したことはほぼ間違いないというのが個人的見解です。
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ワルツ第18番変ホ長調遺作 Waltz No.18 E-flat major(Es dur), Op.posth |
2' 06'' 2006/12/15
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この曲は、譜面には「ソステヌート」としか記されていないため、ワルツに分類するかどうか、意見が分かれているようですが、
現在は、「ソステヌートワルツ」または「ワルツ18番」として定着しているようです。
ほろりとするようなロマンティックな旋律が魅力的ですが、ショパンの曲としては、プレリュード7番とともに
最も易しい曲です。
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ワルツ第19番イ短調遺作 Waltz No.19 A minor(a moll), Op.posth |
2' 06'' 2006/12/14
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マイナーな遺作のワルツです。悲しい旋律が心にしみる曲ですね。弾いていて泣けてくる曲です。
この曲は演奏が非常に易しいため、ワルツ入門、初ショパンの曲としてもおすすめです。
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曲目 | 演奏時間 | 演奏者コメント |
マズルカ第1番嬰へ短調Op.6-1 Mazurka No.1 F-sharp minor(fis moll), Op.6-1 |
2' 45'' 2006/5/23
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ショパンの作品番号付きの最初のマズルカとしては、なかなかの佳作ですね。
中間部の装飾音符連続部は右手の各指の独立性が試される
意外な難所で、左手の跳躍をケアしながらマズルカリズムを表出するのが結構厄介だったりします。
この演奏は、まだこなれていないですね。ほとんどワンテイクで済ませてしまったので、
再度取り上げて差し替える予定です。
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マズルカ第2番嬰ハ短調Op.6-2 Mazurka No.2 C-sharp minor(cis moll), Op.6-2 |
2' 43'' 2008/8/31
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単純で素朴で規模の小さいマズルカです(楽譜で2ページ)。繰り返しがあるため演奏時間的には中規模ですが、
使われている素材(楽句)は少なく、やや魅力に欠けるような印象もあります。
技術的にも非常に易しく、マズルカの入門用という意味ではおすすめしたいマズルカです。
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マズルカ第3番ホ長調Op.6-3 Mazurka No.3 E major(E dur), Op.6-3 |
2' 01'' 2008/9/7
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快活で陽気な農民の舞曲といった趣の素朴なマズルカです。
アクセントも3拍目に来る小節や、2拍単位でアクセントが繰り返される部分も多く、
何となくマズルカの本場ポーランドの土の臭いを感じさせる曲調です。
技術的には右手の和音の連打や重音進行など、やや弾きにくく感じる部分はありますが、
マズルカとしても、全体としては易しい部類に属する曲です。
あまり魅力ある曲調とは言えないかもしれませんが、マズルカ独特のリズムや和声進行を楽しめる曲です。
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マズルカ第4番変ホ短調Op.6-4 Mazurka No.4 E-flat minor(es moll), Op.6-4 |
0' 47'' 2008/9/7
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非常に短く、あっという間に終わってしまう曲で、演奏時間は短いプレリュード並みです。
第一印象としては、ぼんやりしていてつかみどころのない曲と感じる人が大半だと思いますが、
実際その通りだと思います。曲の初めから終わりまで、孤独な独り言が続くイメージですね。
その中で2拍目や3拍目が頻繁に強調されるところがこの曲の唯一面白いところと言えそうです。
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マズルカ第5番変ロ長調Op.7-1 Mazurka No.5 B-flat major(B dur), Op.7-1 |
2' 13'' 2006/5/23
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マズルカの中では一番有名ですね。皆さんもどこかで聴いたことがあるのでは?
溌剌とした軽快で明るい曲ですね。「有名曲」イコール「名曲」とは限らないのは皆さんもご存知の通りで、
マズルカにはもっと素晴らしい曲がたくさんあります。
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マズルカ第6番イ短調Op.7-2 Mazurka No.6 A minor(a moll), Op.7-2 |
3' 42'' 2008/9/13
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3部形式のマズルカです。主部はイ短調で、憂鬱で孤独な感じの右手の主題に対し、左手は基本的に1拍目が休符となっているのが
特徴的ですが、やや単純で面白みに欠けるような気もします。中間部はイ長調に転調し(途中、嬰へ短調も現れる)、
ここはリズム的に難しいだけでなく、右手の3連符の連打がやや弾きにくく感じました。
この曲はマズルカとしては演奏時間的にやや長めですが、これは繰り返し記号やダ・カーポ(D.C.)とフィーネ(Fine)が使われているためで、
実際は楽譜で2ページの小規模な曲です。
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マズルカ第7番ヘ短調Op.7-3 Mazurka No.7 F minor(f moll), Op.7-3 |
2' 38'' 2008/7/13
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このマズルカは、Op.7の5曲のマズルカの中で、位置的にも存在的にも中心的な曲で、
最も芸術性の高いマズルカだと思います。序奏付きというのは珍しくないですが、ヘ短調の民族色の強い主題の他に、
中間部では、様々なパーツ、楽句が登場し、起伏や感興に富んでいて、多くの転調が現れ、マズルカにしては構成が複雑なため、
高度な音楽性を必要とする部分が多い曲です。
個人的には初期のマズルカの中では、傑作の部類に入る曲だと思います。
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マズルカ第8番変イ長調Op.7-4 Mazurka No.8 A-flat major(As dur), Op.7-4 |
1' 10'' 2008/9/13
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この曲も、マズルカの中でも特に小規模な曲の1つです。
3部形式の主部は変イ長調で、不安定な左手の伴奏音型と軽快な楽句が特徴的です。
曲が短いながらユニークな中間部が挿入されていて、ここは変イ長調のテーマが示された後、
可憐なスタッカートでこのテーマが即興的に変奏されます。その後、いきなり何の脈絡もなく、
イ長調のエピソードが挿入されるところもユニークです。
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マズルカ第9番ハ長調Op.7-5 Mazurka No.9 C major(C dur), Op.7-5 |
0' 39'' 2008/9/13
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プレリュード並みの演奏時間の曲であっという間に終わってしまう、軽快で短い曲です。
序奏と終結とでGオクターブの連打による4小節の同じ楽句が使われているのも特徴的で、
メインの部分は前半はハ長調、後半はト長調で、同じものが繰り返されます。
マズルカの中では最も重要度の低い曲の1つと思いますが、ユニークな曲ではあると思います。
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マズルカ第10番変ロ長調Op.17-1 Mazurka No.10 B-flat major(B dur), Op.17-1 |
2' 18'' 2007/8/28
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「華麗なるマズルカ」と名付けたくなるような厚い和音が連続するマズルカです。
右手のプラルトリラーなど、意外に弾きにくい部分がありますが、そこをクリアできれば、流れが単調な分、
ものにしやすく、仕上げやすい曲だと思います。妥協の産物ですが、1日仕上げということでお許しを…。
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マズルカ第11番ホ短調Op.17-2 Mazurka No.11 E minor(e moll), Op.17-2 |
2' 01'' 2006/12/9
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憂鬱なマズルカです。主部のホ短調の憂鬱な気分を引きずったまま、中間部に入りますが、
ここはハ長調のであるにもかかわらず、鬱々とした楽想で、Durに哀愁を込めることができるショパンの才能を
感じさせますね。中間部後半は、低音をG音に保ったまま、1音毎に和声を変えるという、いわば「遊び」、「実験」
をやっていて、憂鬱の中に「冗談」、「遊び」を盛り込むという試みがなされているようです。
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マズルカ第12番変イ長調Op.17-3 Mazurka No.12 A-Flat major(As dur), Op.17-3 |
4' 09'' 2008/7/13
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冒頭の主題は、掛留音とシンコペーションを多用してハーモニーとリズムの不安定さがユニークですが、
同じ楽句の繰り返しが多く、極めて冗長な(ある意味ナンセンスな)音楽と感じます(ショパンには失礼な言い方かも^^;)。
にもかかわらず僕がこの曲を取り上げたのは、中間部が好きだからです。この中間部は、先程の変イ長調の掛留音のホ音を
主音としたホ長調で、遠隔調でありながら主部の主題との調性的な関連付けがなされているところがユニークです。
中間部は音楽性満点のホ長調の旋律と、ロ長調の軽いレッジェーロの上昇音階の2つの題材、どちらも魅力的です。
冒頭部分を聴いて「つまらない」と思わず、是非、ここまで聴いてほしいです。
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マズルカ第13番イ短調Op.17-4 Mazurka No.13 A minor(a moll), Op.17-4 |
4' 29'' 2008/7/27
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憂鬱なマズルカです。テンポが遅く音の数が少なくシンプルな譜面の曲ですが、左手の和音は小刻みかつ微妙に変化していて、
その移ろう微妙な和声が深い陰影を作る名曲です。本当にこの曲は繊細すぎて、
悪く言えば病的な印象がありますが、その特徴をどの方向に引き出すか(打ち消すか増長させるか)は
演奏者に委ねられています。ここでは、この曲の持つ憂鬱で病的な感じを目いっぱい出したかったこともあって、
遅めのテンポで1音1音にそれぞれ異なった深い陰影をつけることを強く意識して弾いています。
中間部は同名長調であるイ長調に転調し、低音のバスのA音がほとんど変化せず一定していることにより、
マズルカ本来の郷土色(土臭さ)が強調されているという印象を持ちました。
最後は、序奏に使われているのと全く同じ楽句がそのまま使われていますが(これはノクターン10番と似てますね)、
結局、イ短調の終止和音ではない和音を最後に、終了感のないまま消えるように終わります。
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マズルカ第14番ト短調Op.24-1 Mazurka No.14 G minor(g moll), Op.24-1 |
2' 52'' 2007/10/27
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マイナーなマズルカの中でもかなり地味で素朴な作品です。主部はト短調の憂鬱な第1主題と、途中から現れる2拍子の混じった
変ロ長調の第2主題からなり、中間部では変ホ長調に転調して、やや盛り上がりを見せます。主部が戻ってからは
第1主題のみ再現されて静かに消えるように終わります。このマズルカは、マズルカの中でも技術的にかなり易しい部類に入ります。
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マズルカ第15番ハ長調Op.24-2 Mazurka No.15 C major(C dur), Op.24-2 |
2' 20'' 2008/9/6
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素朴で愉快な農民の舞曲といった趣のリズミカルなマズルカです。3部形式で、主部はハ長調で黒鍵を全く弾かないという徹底ぶりですが、
譜面そのものは易しくても、3535〜のトリルや連打、装飾音が集中し、技術的には決して易しいとは言えない(初級レベルではない)曲です。
中間部は変ニ長調に転調して、ここでも3拍目にアクセントを付けるなどリズミカルで、マズルカ独特のリズム感がユニークです。
全体的に2拍目や3拍目、時には1拍目にアクセントを多用し、何とも不思議なリズムを持つ曲ですが、
マズルカのリズムを本能的に感じ取って表現できるかどうかが良い演奏をする上で重要なポイントになると思います。
この演奏の中で自分のやりたいことは一応やったつもりですが、本当にこれでよいのか、正直なところ自信はないです。
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マズルカ第16番変イ長調Op.24-3 Mazurka No.16 A-flat major(As dur), Op.24-3 |
2' 10'' 2008/9/6
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ワルツ風の優雅なマズルカです。3部形式の主部は、バス&2つの和音からなるワルツ風の左手の伴奏の上に、
右手で単旋律を奏でるという明快で分かりやすい作りは、ワルツを彷彿とさせますが、
右手のリズムは、やはりマズルカのものですね。中間部の短いエピソード風の進行は
2拍単位となっていて、3拍子でありながら「2拍子」を意識しながら演奏することが要求されています。
技術的にはマズルカ全曲中最も易しい部類に入る曲で、優雅で親しみやすいマズルカです。
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マズルカ第17番変ロ短調Op.24-4 Mazurka No.17 B-flat minor(b moll), Op.24-4 |
5' 00'' 2008/9/7
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数あるショパンのマズルカの中でも屈指の名曲です。マズルカの中では25番、32番、35番のような名曲と並ぶ最大の規模を持ち、
曲想やモチーフを豊富に盛り込んで統一することに成功した音楽性豊かなマズルカと言えます。
序奏は「はさみうち」で、上の音と下の音が半音ずつ狭まりながら主部の第1主題につながります。
第1主題は変ロ短調→変ニ長調→へ短調→変ロ短調と2小節毎に転調し不安定さがユニークですが、
この主題は登場するたびに変化します(一種の変奏)。中間部はソットヴォーチェの導入部から始まりますが、
聴きどころは強奏と弱奏が交互に繰り返される音楽性豊かな後半部です。ここは強弱だけでなく、
楽譜の指示に従いながら共感を持ってテンポを動かす必要がある部分です。
主部の再現は短く行われ、静かな長いコーダによって消え入るように終わります。
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マズルカ第18番ハ短調Op.30-1 Mazurka No.18 C minor(c moll), Op.30-1 |
1' 38'' 2008/7/13
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主部は、孤独なモノローグといった趣の憂鬱な旋律が流れてきますが、実は拍の頭の音は和音を取るために1指が
「占領」されていることが多いので、他の指、特に3指〜5指を使いながら、装飾音付きの旋律をきれいに均質に
弾かなければならず、「慣れ」を必要とします。技術的には易しいですが、3指〜5指が十分に強く独立していることが
前提となります。中間部は変ホ長調に転調して、幾分明るい情緒を見せます。
短いながら、芸術性の高い見事な小品だと思います。
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マズルカ第19番ロ短調Op.30-2 Mazurka No.19 B minor(h moll), Op.30-2 |
1' 19'' 2008/7/27
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短い曲ですが、曲想の変化に富んだユニークで面白いマズルカです。
冒頭はリズミカルで、ピアノとフォルテが唐突、交互に繰り返されますが、次の部分ではピアノから始まって、
徐々にクレッシェンドして高揚していきます。同じ楽句は曲の最後にもう一度現れますが、その間に、
右手は同じ音型を繰り返しながら、左手の伴奏和音の構成音が微妙に変化し、それぞれ異なるニュアンスを持っているのが
非常にユニークです。短い中に面白い要素が盛り込まれたマズルカです。
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マズルカ第20番変ニ長調Op.30-3 Mazurka No.20 D-flat major(Des dur), Op.30-3 |
2' 52'' 2009/4/5
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3部形式の中規模のマズルカで、主部は変ニ長調で始まり、その第3音を半音下げることによって同名短調(=変ニ短調でこれは
嬰ハ短調と同等)に転調するだけでなく、その際にffからppへと強弱のコントラストを極端に付けるところがユニークです。
これはマズルカの名曲である17番Op.24-4の中間部でも使われている手法です。
しかしこの曲の中で個人的に好きなのは中間部で、目まぐるしく頻繁に転調し、それに伴ってデュナーミクも変化し、
千変万化する楽想が豊かな音楽性に支えられて自由に流れていきます。ここがこの曲の最大の魅力ではないかと思います。
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マズルカ第21番嬰ハ短調Op.30-4 Mazurka No.21 C-sharp minor(cis moll), Op.30-4 |
3' 39'' 2009/4/9
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ショパンのマズルカの中でもリズムやハーモニーが独特で強い個性を持ち、特異な存在とも言えるマズルカです。
主部は、右手は基本的に3度の和音でマズルカリズムを刻みながら、その上の音に頻繁にプラルトリラーが
挿入されていて弾きにくく各指の独立性が求められますが、この部分の弾きやすさはピアノのアクションに大きく左右されます。
それに対しこの部分の左手は幅の広い分散和音の連続となっています。中間部は、前半は嬰ハ短調、嬰ト短調で
同一楽句が繰り返され、その間に長いトリルが挿入されるという構成が2回繰り返され、中間部後半はロ長調に始まり
盛り上がる楽句が2回繰り返されます。主部は省略されずに同じ長さで再現され、短いコーダで静かに締めくくられます。
このコーダに現れる、半音ずつ下降する不思議な和声進行もマズルカに特有のものとはいえ、この曲の個性と思います。
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マズルカ第22番嬰ト短調Op.33-1 Mazurka No.22 G-sharp minor(gis moll), Op.33-1 |
1' 33'' 2007/8/31
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憂鬱な出だしで始まりますが、13小節目(細かく言えば12小節目第3拍)から変化が現れて、
ロマンティックな曲想に変化して聴く人を惹きつけます。1分30秒〜40秒であっという間に終わってしまう
短い小品ですが、哀愁やロマンを帯びた素敵な曲想を持ったマズルカの名曲だと思います。
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マズルカ第24番ハ長調Op.33-3 Mazurka No.24 C major(C dur), Op.33-3 |
1' 58'' 2008/9/14
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長調のマズルカとしては珍しく、ゆっくりとした静かな癒し系の曲です。
両手の1指どうしが交差するため、最初はやや弾きにくく感じる人も多いと思いますが、
弾き慣れてしまえば、難易度は非常に低く、数あるマズルカの中でも最も易しいものの1つと言えます。
活発で明るい名曲である23番と、詩情豊かな名曲である25番の間に挟まれた、束の間の休息といった感じの曲です。
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マズルカ第25番ロ短調Op.33-4 Mazurka No.25 B minor(h moll), Op.33-4 |
5' 29'' 2008/9/14
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数あるマズルカの中でも特に内容が豊かな名曲として、多くの人に親しまれている曲です。
やはり3部形式で書かれていて、主部はプラルトリラーを多用して美しい旋律に彩りを添えています。
主部ではほぼ同じものが2度繰り返されますが、その繰り返し単位の最後には跳躍が連続する部分があり、
演奏効果を上げています。中間部はロ長調に転調し、ここはこの曲の中で最も詩情豊かで美しい部分だと思います。
頻繁に転調するため、それを魅力的に聴かせるためにはテンポルバートが必要になります。
中間部後半では、跳躍が必要になる部分が登場し、ここもやや難易度が高い部分です。
この曲はショパンのマズルカの中では難易度がやや高めで長い曲ですが、
是非、皆さんにも取り組んでいただきたい、おすすめの1曲です。
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マズルカ第26番嬰ハ短調Op.41-1 Mazurka No.26 C-sharp minor(cis moll), Op.41-1 |
3' 26'' 2006/12/9
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作品41の4つのマズルカはショパンの逃避行先のマジョルカ島で書かれたと言われています。
このOp.41-1のマズルカは、主部の出だしが少し変わった音階で、嬰ハ短調にもかかわらず、D音に♯が付かないため、
不思議な印象を与えます。もう1つの主題は同名長調に転調してリズミカルです。
そして、中間部の嬰ヘ長調の極上の旋律…この部分が好きなため、あえてこの曲を取り上げたのですが、
主部が再現された後の6度の中のプラルトリラー攻撃が結構きつく、結局ここはピアノのアクションのせいにして、
妥協して逃げてしまいました。即席仕上げになってしまいましたが、もっときちんと練習しないとダメですね。
なお、この曲は、マズルカの中では、33番、38番と並んで特に難しい曲ではないか、と思います。
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マズルカ第27番ホ短調Op.41-2 Mazurka No.27 E minor(e moll), Op.41-2 |
2' 13'' 2006/12/9
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憂鬱な曲調で、マジョルカ島に降る雨を僧院の中から眺めているような沈鬱な雰囲気が漂っています。
この憂鬱な旋律とハーモニーは、一種独特のもので、特にロ長調に転調してからの和声及びその進行はかなり特異なものです。
聴けば聴くほど、何か不思議な雰囲気が漂いますね。この曲は技術的には非常に易しいため、取り組みやすいと思います。
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マズルカ第29番変イ長調Op.41-4 Mazurka No.29 A-flat major(As dur), Op.41-4 |
2' 18'' 2007/8/31
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ワルツ風で優雅な曲調のマズルカです。優雅さがより一層際立っているのは、変イ長調という調性のためだと思いますが、
技術的には、マズルカ全曲の中でも非常に易しく譜読みも易しいため、初心者の方にもおすすめしたい1曲です。
但し、優雅さを出すためには、ちょっとした表現のコツがいるようです。
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マズルカ第30番ト長調Op.50-1 Mazurka No.30 G major(G dur), Op.50-1 |
2' 37'' 2008/7/20
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リズミカルで明るいマズルカですが、明るさの中にも優雅さがあり、哀愁やメランコリーなど、
豊かな楽想に彩られた内容の濃い典型的な中期のマズルカです。技術的には、右手の6度和音が連続する箇所が多く、
多少弾きにくいため、丁寧な練習が必要です。但し、マズルカの中でも技術的には難しい部類には入らないため、
気軽に取り組むことができる曲です。
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マズルカ第31番変イ長調Op.50-2 Mazurka No.31 A-flat major(As dur), Op.50-2 |
3' 12'' 2008/4/6
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ロマンティックで優しく優雅な旋律が魅力的なマズルカの小品です。中間部の和音は幅が広く、短10度が届く手の大きさが必要で、
さらに連打が多少弾きにくいですが、全体的にはマズルカの中でもかなり易しい部類に入ります。
音楽的にはマズルカ独特のリズムや繊細な表現が必要とされますが、取り組みやすい曲だと思います。
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マズルカ第32番嬰ハ短調Op.50-3 Mazurka No.32 C-sharp minor(cis moll), Op.50-3 |
5' 18'' 2008/3/29
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マズルカの中では規模が大きく、名曲としての評価が定まっています。主部は、遠くからかすかに聴こえてくるような音で
始まり、哀愁漂う憂鬱な旋律が心にしみる部分と、突然フォルテの和音で始まる後半部からなります。
中間部は右手で同じ音型を繰り返しながら左手の伴奏が微妙に変化することにより曲調に微妙な変化を付けているところが
ユニークで面白い試みとなっています。
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マズルカ第34番ハ長調Op.56-2 Mazurka No.34 C major(C dur), Op.56-2 |
1' 36'' 2009/4/29
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明朗、快活でリズミカルなマズルカです。素朴で力強く、いかにもポーランドの田舎で踊る農民の舞曲といった趣の曲です。
その原因を探ってみると、主部の左手の伴奏和音の最下音(バス)が全てC音であることが、素朴さと土着的な印象を強く受ける
最も大きな原因となっているようです。
左手の伴奏和音のタイミングも特徴的ですが、そのリズムは4小節の序奏で明らかにされています。
中間部では3種類の楽句がいずれも2回ずつ繰り返されており、いずれも印象深いものとなっています。
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マズルカ第35番ハ短調Op.56-3 Mazurka No.35 C minor(c moll), Op.56-3 |
5' 48'' 2009/4/9
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ショパンのマズルカ全曲中、最大の規模を誇る充実した作品で、ショパンのマズルカの名曲の1つです。
独り言をつぶやくような出だしを聴くと惹きつけられる要素が少ないように聴こえそうですが、
実はこの曲の最大の聴きどころは、充実した中間部とコーダではないかと個人的には思います。
中間部では目まぐるしく、予測できないような遠隔転調や移調を多用し、豊かな楽想が次々に現れ、その多彩さと複雑さ、喜怒哀楽を超えた
複雑で病的とも言える感情を呼び起こす錯綜したこの音楽は、幻想ポロネーズの前身としての意味があると考えています。
コーダも病的な美しさを放つ音楽で、肺結核に侵された青白い青年ショパンの紡ぎ出す、現実のものとは思えないピアノ音楽の
神々しい美しさに触れることのできるマズルカの名曲です。
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マズルカ第36番イ短調Op.59-1 Mazurka No.36 A minor(a moll), Op.59-1 |
3' 42'' 2006/7/24
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ショパンのマズルカの中で最も好きな作品と言い切ってもよいのが、このOp.59-1です。
疑いなく、ショパンのマズルカの最高傑作の1つだと思います。哀愁に満ちた旋律で始まりますが、微妙な感情の揺れ動きの
重ね合わせの結果、物理的にかなりの振幅を持った幅広いデュナーミクとアゴーギクにまで達します。
それを違和感なく聴き手に聴かせるのが、演奏者にとって大きな課題ではないか、と思います。
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マズルカ第37番変イ長調Op.59-2 Mazurka No.37 A-flat major(As dur), Op.59-2 |
2' 26'' 2007/9/24
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このマズルカも名曲の1つだと思います。充実した力強いハーモニーの中に、優雅さがあり、
明るい曲調にもかかわらず、哀愁が漂っています。マズルカではありますが、むしろワルツに近い雰囲気です。
親しみやすさと分かりやすさから、多くの人に親しまれているマズルカの1つです。
演奏はそれほど易しくないですが、是非皆さんにも取り組んでいただきたい1曲です。
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マズルカ第38番嬰へ短調Op.59-3 Mazurka No.38 F-sharp minor(fis moll), Op.59-3 |
3' 22'' 2006/10/5
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これも特別にお気に入りのマズルカで、ショパンのマズルカの最高傑作の1つだと思います。
マズルカリズムを強調する弾き方をしてみましたが、演奏者自身、ポーランド本場のマズルカリズムを知らないため、
少し不自然に聴こえるかもしれないですね。それとこの曲は、マズルカ全曲の中で、技術的に一番難しいのではないでしょうか。
マズルカは大抵の曲は譜面の音をそのまま出せば、一応それらしく弾けてしまうのですが、この曲の場合、
なかなかそういうわけには行かず、ちょっと時間がかかりました。途中怪しいところもありますが、
とりあえずこの演奏で一旦打ち切りとします。再度、取り上げたときに差し替えしたいと思います。
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マズルカ第39番ロ長調Op.63-1 Mazurka No.39 B major(H dur), Op.63-1 |
2' 08'' 2009/4/5
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リズミカルで溌剌とした明るいマズルカですが、その和声の中に何故か不思議な哀愁を感じさせ、
この曲がショパンの晩年の作品であることを改めて感じます。この曲は和音の連続する部分にも
4指、5指で弾くプラルトリラーが挿入されていることと、主部とその再現部とで微妙な違いがあるため、
技術的には結構弾きにくい部分が多いです。完璧に弾ききるには4指と5指の強さ、独立性を必要とする曲です。
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マズルカ第40番ヘ短調Op.63-2 Mazurka No.40 F minor(f moll), Op.63-2 |
1' 58'' 2007/10/27
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寂しく孤独感漂うマズルカです。独り言のようなヘ短調の旋律が物憂く孤独に奏でられます。
右手のゆっくりした8分音符が連続するところでは、一音ごとに異なったニュアンスを持つため、
ルバートや間の取り方など、音楽的な表現が難しいと思います。マイナーなマズルカの中でも
さらにマイナーで影の曲という存在ですが、味わい深い曲だと思います。
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マズルカ第41番嬰ハ短調Op.63-3 Mazurka No.41 C-sharp minor(cis moll), Op.63-3 |
2' 16'' 2006/12/18
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哀愁に満ちた旋律美が魅力的なマズルカの名曲です。非常に内省的で微妙な陰影に富んだ曲で、表現が難しいと思いますが、
この曲の一番の特徴、聴きどころは、曲の最後にカノンが登場するところです。バロック時代のカノンとは違いますが、
このようなマズルカに、緻密な対位法的処理、多声音楽を登場させるところに、ショパンの斬新な試みが見て取れて
非常に興味深い作品です。
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マズルカ第42番ト長調Op.67-1 Mazurka No.42 G major(G dur), Op.67-1 |
1' 16'' 2008/7/6
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素朴で不思議なマズルカリズムが濃厚に現れていて、ポーランド農民の舞曲といった趣を持つ曲です。
3拍子とはいっても、拍の間の取り方やアクセントが付く拍がワルツの場合と違っていて、リズムの取り方が難しいと思います。
この曲を聴くと、本場ポーランドでマズルカがどのように踊られるのか、何となくわかるような気がします。
この曲は装飾音が多く、マズルカの中では技術的にやや難しめの曲ですが、
半日で無理やり仕上げてしまいました。本当はもう少し速いテンポの方がこの曲の良さが生きるというのは
分かってはいたのですが…(苦笑)明らかに弾き込みが足りないですね。
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マズルカ第43番ト短調Op.67-2 Mazurka No.43 G minor(g moll), Op.67-2 |
2' 03'' 2006/12/18
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ト短調と変ロ長調(この2つは平行調)の間を不安定にさまよいながら、物憂い旋律が淡々と流れていきます。
3拍目のスフォルツァンドや突然のフォルテなどがあって、このような部分では音色の変化も同時に要求されていて、
弾いていると表現の面白さを感じさせてくれる曲です。この曲は、良くも悪くも単調に弾かないで、
聴く人を退屈させず、面白く聴かせるのがポイントだと思います。
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マズルカ第44番ハ長調Op.67-3 Mazurka No.44 C major(C dur), Op.67-3 |
1' 38'' 2008/7/12
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ハ長調ながら遅めのテンポで、瞑想的で素朴な曲想を持つマズルカです。
単純なテーマが単音で示された後、今度は主に6度の和音を用いてテーマが再現されますが、この6度の和音の連続の中の
上の音に入ってくるプラルトリラーが多少弾きにくいです。中間部は非常に短くエピソード風のト長調のパッセージからなります。
この曲はハ長調ということで譜読みも易しく、仕上げるのに時間がかからないので、気軽に取り組むことができる曲です。
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マズルカ第45番イ短調Op.67-4 Mazurka No.45 A minor(a moll), Op.67-4 |
3' 04'' 2006/7/26
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マズルカの中では一般的な認知度、評価ともに高い作品で、優美で哀愁を帯びた旋律が心にしみます。
イ短調の主部はまさにショパンの悲しみの涙。対して中間部は同名長調(イ長調)に転調し、わずかに
明るい光が差し込んできます。
曲全体に渡ってマズルカ独特のリズムが濃厚に表れていますが、ここでは、マズルカリズムを
強調せず、遅めのテンポで哀愁漂う雰囲気を出す方向で演奏しています。
ちょっと大人しすぎたかも?
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マズルカ第46番ハ長調Op.68-1 Mazurka No.46 C major(C dur), Op.68-1 |
1' 41'' 2008/9/16
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快活でリズミカル、かつ力強さも兼ね備えたマズルカです。
ハ長調の主部は、前打音、プラルトリラーの装飾音や連打など、やや弾きにくい部分があり、
マズルカとしては難易度もやや高めです。中間部はヘ長調に転調し、響きが美しい部分です。
全体的に旋律、和声ともに単純明快で、曲想的にはショパン特有の詩情には乏しい感じですが、
哀愁に満ちたマズルカをずっと聴いてきた耳には、むしろ新鮮に響く曲だと思います。
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マズルカ第47番イ短調Op.68-2 Mazurka No.47 A minor(a moll), Op.68-2 |
2' 47'' 2009/4/19
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初期のシンプルなマズルカです。憂鬱なイ短調の旋律が平行調のハ長調を挟んで繰り返されますが、
ショパンの作品の典型とも言える変奏は使われず、装飾として頻繁に使われるトリルも終始一定の音型を保っています。
中間部は同名調のイ長調に転調し、主題も雰囲気も前後の主部と少し変わります。
ちなみに、この曲は僕にとってショパンのマズルカの中でも5番とともに初めに覚えた曲でした。
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マズルカ第48番ヘ長調Op.68-3 Mazurka No.48 F major(F dur), Op.68-3 |
1' 37'' 2008/9/16
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この曲も快活でリズミカルなマズルカですが、Op.68-1ほどの華麗な力強さはなく、シンプルに書かれています。
但し、付点音符を含んだ6度の連続などでは、メロディーラインの表出に丁寧さと滑らかさが要求されている上に、
快活さも失わないことも必要で、これがこの曲の一番の課題ではないかと思います。
短い中間部は一応変ロ長調ですが、E音にナチュラルが付いているため音階的にはやや不思議な響きです。
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マズルカ第49番ヘ短調Op.68-4 Mazurka No.49 F minor(f moll), Op.68-4 |
1' 54'' 2006/3/31
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ショパンの絶筆となった文字通り最後の作品、ショパンの白鳥の歌です。ショパンはこの曲を病床で書きましたが、
一度もピアノで音にすることができなかったそうです。
一聴すると印象の薄い曲のように思えますが、悲しみに似た感情は確かに存在しているようです。
しかし、これは悲しみを超越した悟りの境地、
諦観と捉えた方が感覚に合うようです。神々しいばかりの美しさを持った作品で、個人的にはマズルカの傑作に数えています。
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マズルカ第58番変イ長調遺作 Mazurka No.58 A-flat major(As dur), Op.posth |
1' 24'' 2007/8/28
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この曲は、ショパンの死後、ショパンの知人マリア・シマノフスカ(1831年他界)のアルバムの中から発見された遺作で、
「シマノフスカ」という副題が付いた短いマズルカです。自筆譜には1834年の日付が記されており、その年の作とされているようです。
軽いレッジェーロを使いながら、軽妙で品の良いパッセージが奏でられていく優雅な小品です。
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曲目 | 演奏時間 | 演奏者コメント |
プレリュード第1番ハ長調Op.28-1 Prelude No.1 C major(C dur), Op.28-1 |
0' 38'' 2007/7/11
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ショパンの24の前奏曲の最初の曲です。楽譜にして1ページの非常に短い曲で、調性もハ長調のままで音型もほぼ一定ですが、
その中で♯を多用しつつハ長調の枠内で自在に音楽を操ることができるショパンの才能に改めて驚かされる曲です。
24の前奏曲は通して聴かれることが多いので、是非、皆さんにも24曲通して聴いてほしい曲です。
その中でこの曲がどのような位置づけなのかを理解すると、この曲を演奏する際、さらに内容が良くなると思います。
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プレリュード第4番ホ短調Op.28-4 Prelude No.4 E minor(e moll), Op.28-4 |
1' 48'' 2006/11/22
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ショパンの葬儀の際に、オルガンで演奏されたと言われる憂鬱なプレリュードです。
左手の連打による伴奏の上に、右手が単音の旋律を奏でるという音楽からは、「雨だれの前奏曲」同様、
「雨」を連想させます。この曲は、楽譜にして1ページの短い曲で、技術的にも非常に易しいですが、
雰囲気を出すのは非常に難しいです。左手の和声が変わる毎にテンポや強弱、音色に微妙に変化をつける必要があるようです。
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プレリュード第7番イ長調Op.28-7 Prelude No.7 A major(A dur), Op.28-7 |
0' 45'' 2008/9/21
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この曲は胃腸薬(この曲の「イ長調」という調性にかけたのだとか…)のテレビCMで昔から流れている曲ということで、
日本国民誰もが知っていると言っていいほどの超有名曲です。
難易度的にはショパンの曲の中でも1,2を争うほど易しい曲で、ショパン入門用の1曲としておすすめです。
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プレリュード第11番ロ長調Op.28-11 Prelude No.11 B major(H dur), Op.28-11 |
0' 38'' 2008/9/21
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この曲も一瞬で終わってしまうプレリュードですが、軽妙で上品な響きで詩情豊かな曲調が魅力的な1曲です。
この短いシンプルな1曲にも音楽性豊かな旋律とハーモニーに溢れていて、
ショパンの才能に改めて驚かされます。個人的には好きな曲です。
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プレリュード第13番嬰ヘ長調Op.28-13 Prelude No.13 F-sharp major(Fis dur), Op.28-13 |
2' 43'' 2006/12/15
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ノクターン風の甘美でロマンティックなプレリュードで、個人的に好きなプレリュードの5本指に入る曲です。
揺れ動く海の波を思わせる左手の伴奏に乗って、和音を基調とした右手の旋律が美しく歌われる曲で、
何となくマジョルカ島への希望に満ちた船旅を連想させる曲調と個人的には思います。
それにしても、本当に美しい響きで、何度聴いてもいい曲だなぁ…とため息が出るほどです。
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プレリュード第15番変ニ長調Op.28-15 「雨だれの前奏曲」 Prelude No.15 D-flat major(Des dur), Op.28-15 'Rain drop' |
4' 52'' 2006/5/26
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前奏曲の中では一番有名な曲ではないかと思いますが、実はあまり人気がない曲のようですね。
恋人のジョルジュ・サンドとともに逃避行したスペイン沖のマジョルカ島で作曲されたとされています。
その時期は雨ばかり降っていたようで、暗い僧院の中で憂鬱に外の雨を眺めながらピアノに向かっているうちに、
このような素晴らしい曲想を思いついたことは想像に難くないですね。
特に左手の変イ音の連続が雨の滴の落下をイメージさせますし、右手の旋律も潤いに満ちていて、
音によってここまで雨の風景を描写できるショパンの才能にも驚かされます。
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プレリュード第17番変イ長調Op.28-17 Prelude No.17 A-flat major(As dur), Op.28-17 |
3' 07'' 2008/9/21
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プレリュードの中でも特に音楽性豊かな名曲で、個人的には特に好きなプレリュードです。
曲の中ほどは多様で意外な転調と臨時記号の嵐となっていて感興豊かな音楽ですが、
和声の変化は複雑多様で、これらを微妙なルバートと強弱変化によって表現する必要があり、
かなり高度な音楽性が必要になる部分だと思います。
技術的には、左右両手の1指が頻繁に重なり合う(交差する)ためにやや弾きにくく、決して易しい曲ではないです。
僕の演奏がこの曲の本当の良さを引き出せているかどうかは分からないですけど、この曲、本当にいい曲ですよ。
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プレリュード第24番ニ短調Op.28-24 Prelude No.24 D minor(d moll), Op.28-24 |
2' 32'' 2013/9/23
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ショパンの24の前奏曲の最後を飾るにふさわしい壮大な難曲です。
これは偶然だと思うのですが、ショパンの前奏曲は8の倍数(8番、16番、24番)が
エチュード並みの三大難曲プレリュードとも言われていて、それぞれ異質の難しさです。
この24番はまず左手の伴奏音型が普通の手の大きさの人にとって届かない幅の広がりがあり、
正確な跳躍を連続させなければならない点がまず大きな難関となります。
しかも跳躍の幅は一定せず、時に13度の跳躍が要求されます。
コツとしては第2指あるいは第3指を所定の音を弾いた後も、その位置を保ち、
それを支点にして尺を取るように最後の第1指の音を取るような動きをすると跳躍の正確さが上がります。
しかもその跳躍をこなしながら、右手で急速の上昇音階、アルペジオ、下降アルペジオ、
あるいは最後の方に出てくる3度の下降半音階パッセージを弾かなければならない点がこの曲の最大の難しさです。
左手単独、右手単独でそれぞれ弾けても、両手を合わせると左手が慌ただしく動く中、右手のこれらの速いパッセージを弾くのは
また別の難しさがあり、これはもう何度も弾いて体で覚えるより仕方のないところです。
この曲の終わり方も特殊で、最後は最も低い二音を3回強打して終わります。
穏やかに始まった24の前奏曲はこうして劇的な幕切れとなります。
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プレリュード第25番嬰ハ短調Op.45 Prelude No.25 C-sharp minor(cis moll), Op.45 |
3' 55'' 2006/5/26
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ショパンの24の前奏曲からは外れてしまうため、演奏される機会の少ないマイナーな曲ですが、
個人的には、前奏曲の中では特にお気に入りの1曲です。
調性が不安定で目まぐるしく転調しますが、転調の手法が斬新で既にロマン派の枠組みを超えていて
最初に聴くとショパンの曲とは思えないという人も多いのではないかと思います。
調性だけでなく基本的な和声も斬新で、既に印象派の手法を先取りしたかのような印象も持ちます。
この世のものとは思えない極上の美しさを持つ和声に浸ることができるショパンの隠れた名曲の1つです。
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プレリュード第26番変イ長調遺作 Prelude No.26 A-flat major(As dur), Op.posth |
0' 43'' 2008/8/10
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この曲もショパンの24の前奏曲から外れていて、25番に比べてもはるかにマイナーな曲で、
演奏される機会は皆無に等しい曲です。曲は40秒程度で終わってしまう非常に短い曲で、
曲の初めから終わりまで左右両手ともに16分音符が絶え間なく続く常動曲(無窮動曲)ですが、
この1曲の中にもクライマックスがあって、しっかりと聴きどころが作られています。
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曲目 | 演奏時間 | 演奏者コメント |
エチュードホ長調Op.10-3「別れの曲」 Etude No.3 E major(E dur), Op.10-3 |
3' 52'' 2007/9/16
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遅くなりましたが、ショパンの超名曲「別れの曲」です。この曲がエチュード(練習曲)だという事実を
知らない人も多いと思いますが、れっきとした練習曲です。この曲は、主部(前後の部分)ではメロディーラインと他の声部を
きれいに弾き分けて歌うことが課題ですが、何と言っても課題は中間部に集中しています。
中間部最初の6度の連続からしてクセモノですが、左右ともに4度の連続で乖離進行したり、クライマックスには10度を
つかめる手の大きさがないとかなり苦戦する6度の連続部があって、かなり難易度の高い曲です。
中間部をものにするには相当の技術が必要になりますが、そこは無理でも、
前後のホ長調の美しい旋律を弾いて陶酔するのも、この曲の楽しみ方だと思います。
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エチュード変ト長調Op.10-5「黒鍵」 Etude No.5 G-flat major(Ges dur), Op.10-5 'Black key' |
1' 43'' 2007/9/23
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「黒鍵のエチュード」として知られる有名曲です。右手は1つの音を除き、後は最初から最後まで黒鍵だけを弾き続けます。
ショパンはこの曲について、「右手が黒鍵ばかりを弾き続ける曲だということを知らないと、何の面白みもない曲」と
言っていたそうですが、確かにエチュードの他の曲に比べると、音楽的にやや物足りないものがあるかもしれない、
とも感じます。なお、この曲はエチュードとしては難しい部類には入らないものの、
ごまかしなくきちんと弾こうとするとかなりの難易度になると思います。
もっと軽いアクションのピアノだったら、もう少しマシな演奏ができるのに…というのは独り言です(笑)
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エチュード変ホ短調Op.10-6 Etude No.6 E-flat minor(Es moll), Op.10-6 |
3' 04'' 2009/9/22
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ショパンの作品10,25のエチュード全24曲の中で、技術的に最も易しい(と思う)曲です。
しかし曲を聴けば分かると思いますが、音楽的には決して易しくない曲で、ただ単に暗いというだけでなく
独特の和声と雰囲気を持ち、不安定で曖昧な調性の間をゆらゆらとさまようところなど、聴く人に奇異な印象を与える曲です。
構成は分かりやすい3部形式で、主部は右手の旋律vs左手の伴奏という明快な構造でありながら、
旋律がほぼ小節ごとに保持され、各小節の終わりのみに動きを持つ
というパターンで、小節の終わりに動く部分でややテンポを落として「ため」を作ることが、
単調な流れになるのを避けるうえで重要なポイントとなります。但しこれをあまり意識してやりすぎると「嫌味」になります。
中間部ではゆっくりした16分音符を刻む役目が右手に移り、右手は5指で旋律を、それ以外の指で内声の16分音符を刻み、
左手はバスを支えるというパターンになります。右手の5指の旋律が他の音に埋もれてしまわないように浮き立たせながら、
不安定な調性の間をさまよう、曖昧で不思議な雰囲気を醸し出すのが課題になります。
主部が再現された後は、そのまま変ホ短調で静かに締めくくられそうな流れで消え入りますが、
最後の音は、当然G♭だろうとの予想を覆し、ナチュラルを付けて半音あげることにより、この一音のみの影響によって
この曲は変ホ長調での終結となります(このようなところはノクターン9番の終わり方と相通じるものがありますね)。
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エチュードヘ短調Op.10-9 Etude No.9 F minor(f moll), Op.10-9 |
2' 18'' 2009/9/22
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左手の指を広げることと右手の表現力を目的とした練習曲で、ショパンのエチュードの中では特に易しい部類に入ります。
左手は同じような音型を繰り返しますが、カバーする音の範囲が広いため、指が短いと厄介な曲ではないかと思います。
(当然のことながら、手が小さいのと指が短いのは別の問題で、この曲の場合は特に指の長さが問題となります。)
左手の伴奏部の運指は531313を基本としますが、ここでの'1313'に当たる部分が9度の広がりを持つ箇所では、
13指で9度が届かない場合には'1414'に変更し、また'53'に相当する部分が6度の広がりを持つ箇所では'52'に変更するなど、
軸となる3指を2指や4指に素早く交代する技術が必要になります。指が短い人ほどこのようなことに気を使う必要がありますが、
いずれにしても手の柔軟性が十分にあればあまり難しくない曲です。右手は旋律を受け持ちますが、左手の伴奏の推進力によって
自然に導かれるようなイメージで右手の旋律を歌えばよい演奏になると思います。右手の5連符のオクターブの強音と
単音の弱音のコントラストもユニークですが、これも楽譜の指示を忠実に守り、そこにテンポの「ため」を入れると良い演奏になります。
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エチュード変ホ長調Op.10-11 Etude No.11 E-flat major(Es dur), Op.10-11 |
2' 35'' 2009/8/23
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初めから終わりまで左右両手のアルペジオが延々と続くユニークな練習曲です。
パラン、パランというアルペジオは、あたかもハープを連想させるものがあり、
エオリアンハープというサブタイトルは、エチュードOp.25-1よりも、むしろこの曲の方にこそふさわしいとすら思えるほどです。
このアルペジオの多くは1オクターブ以上、場合によっては13度の広がりを持つ幅の広い分散和音で、
普通の手の大きさの人にとって、その多くは一度に抑えることのできない広がりを持ちます。
つまり、手を柔軟に保った上で手首の柔軟な回転を利用して指の広がりを調節しながら
下から上へと順番に的確に打鍵していくことになりますが、このような理由から、
奏法上最もミスタッチをしやすい音はやはり最上音です。ところが多くの場合、その最上音が旋律を受け持つ
最も重要な音となる点がこの曲の厄介なところで、美しい旋律が、外しやすい音の連続によって成り立っているため、
綱渡り的な要素が多分にあります。
1つ1つの和音ごとにアルペジオの構成音が目まぐるしく変わるため、
その都度、指の広がりを調節して自分の覚えた位置感覚を頼りに的確に打鍵するのがこの曲の課題です。
しかし、一度、手になじんでしまえば案外楽に弾けてしまうことに加え、特別な指の運動神経を必要としない曲であるため、
ショパンのエチュードの中ではかなり易しい部類に入ります。
アルペジオが広い範囲にまたがるため、手の小さい人、指の短い人ほど難易度が高く感じる曲だと思います。
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エチュードハ短調Op.10-12「革命」 Etude No.12 C minor(c moll), Op.10-12 'Revolutionary' |
2' 34'' 2006/12/25
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「革命のエチュード」として知られる曲で、ショパンのエチュード(練習曲)の中では、「別れの曲」とともに、
最も有名な曲の1つです。速い左手の怒涛のアルペジオの上で、右手が怒りのオクターブを叩きつける曲で、
ショパンの曲としては、かなり激しい曲です。ショパンが祖国ポーランドを離れてパリへ向かう旅の途上で、
祖国ポーランドを支配するロシアへの反乱(革命)が失敗に終わり、再びロシアに制圧されたという知らせを聞き、
激しく激怒して、ピアノに向かって怒りを叩きつけるように弾いたのがこの曲の作曲の動機と言われています。
激しい曲調とは裏腹に、エチュードとしてはそれほど難しい部類には入らないのですが、
左手の速い動きをごまかしなく弾くのはかなり難しいと思います。
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エチュード変イ長調Op.25-1「エオリアンハープ」 Etude No.13 A-flat major(As dur), Op.25-1 |
2' 16'' 2008/10/19
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ショパンのエチュードの中では人気の高い曲で、「エオリアンハープ」(「牧童」とも)というサブタイトルで
親しまれています。非常にユニークな曲で、1拍の中にある6連符のうち右手の拍の頭の音だけが旋律で、
残りの分散アルペジオは基本的には全てその旋律を支える伴奏としての役割に徹しています。練習曲としての課題もまさにそこにあり、
ハープで奏でられるような細かい伴奏は大きな1つの波として均質なタッチで滑らかに弾き、その上で旋律のみが
その伴奏から美しく浮かび上がって聴こえてくるように弾くことが求められています。音型自体は終始一定していて
一種の常動曲とも言えますが、拍ごとに各指の位置関係や広がりが変化します。冒頭を弾いてみただけでは
「この調子で最後まで続くなら難しくない」と感じる人も多いと思いますが、途中に弾きにくい部分が出てくるので注意が必要です。
この曲は音楽的にも陰影、起伏に富んだ素晴らしい内容で、美しくロマンティックな旋律がわずかに憂いを帯びた
雄大なハーモニーに支えられて感動的に流れてきます。僕自身もこの曲は特にお気に入りのエチュードの1つです。
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エチュードヘ短調Op.25-2 Etude No.14 F minor(f moll), Op.25-2 |
1' 43'' 2008/10/13
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ショパンのエチュードとしては目立たず地味な存在ですが、味わい深い曲で指のための良い練習にもなる曲です。
右手が一瞬も途切れることなく3連符で終始狭い音域を駆け巡る曲ですが、そのパッセージのパーツは複雑で、
音階、トリルを含みながら、不規則な動きが多く現れます。これらを全てもつれずに弾き切るには
右手の各指に、完成された高度な独立性が求められ、上手く弾けない場合、運指の考察も必要になることも多いと思います。
このような理由で、易しそうに聴こえてもそれなりの難易度になりますが、やはりエチュードの中では易しい部類です。
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エチュード嬰ハ短調Op.25-7 Etude No.19 C-sharp minor(cis moll), Op.25-7 |
4' 57'' 2009/5/31
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この曲は「エチュード」の中の1曲ではありますが、速度表示は「レント」と非常にゆっくりしたテンポの情緒豊かな曲で、
ノクターンに分類した方がよいとさえ思える曲です。
この曲は右手、左手の音型や役割がやや特殊で、右手のゆっくりした連打の伴奏に伴って、
左手が主旋律を歌う形式で、雨音のする外を眺めながら、ため息混じりの男声の孤独なつぶやきを聴くかのようです。
このようなところは、プレリュード6番ロ短調を彷彿とさせます。
やや慣れない人は戸惑うことも多いのではないかと思いますが、技術的にはショパンのエチュードの中では特に易しい部類です。
途中、左手に速いパッセージが現れますが、一番速い部分はほとんど規則的なスケールなので難しくはないです。
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エチュード変ニ長調Op.25-8 Etude No.20 D-flat major(Des dur), Op.25-8 |
1' 13'' 2006/12/22
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ショパンのエチュードの中でも指折りの難曲として知られる6度の練習曲に挑戦してみました。
右手は絶え間なく6度で動き回る上に、左手も激しく動き、しかもかなり大きな跳躍があって、1分の間に
難しさがぎゅっと凝縮されています。これを弾いていると、まるで拷問にかけられるような気分です。
ちょっと疲れてきたので、この辺で一度アップしてみます。もっと弾き込めば、完成度、テンポともに
上がりそうな感触はあるので、これを暫定アップとして、引き続き練習を頑張ってみようと思います。
もしよかったら、皆さんも是非、この曲に挑戦してみてください。
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エチュードハ短調Op.25-12「大洋」 Etude No.24 C minor(c moll), Op.25-12 |
2' 47'' 2008/11/9
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両手がアルペジオと素早いポジション移動で鍵盤を目まぐるしく上下に駆け巡る動きをしますが、
その上下動から生まれる壮大な響きが大海原の波のうねりを連想させることから、
「大洋」というタイトルで知られている曲です。演奏時間的には決して長い曲ではありませんが、
響きが壮大で華やかなため、スケールの大きさを感じさせる曲です。
技術的には、両手ともワンポジションで弾くアルペジオはほとんどがオクターブ以内であるため、
それほど手に大きな緊張を強いる箇所は多くないです(手の大きさはあまり必要ではないです)が、
両手とも同音を5指→1指、あるいは1指→5指への置き換えによる連打を素早く正確に行う必要があります。
この素早く正確なポジション移動がこの曲の弾く上で技術的な課題になります。
曲自体、この絶え間ないポジション移動で成り立っているようなものですが、
このポジション移動は常にミスタッチのリスクがあり、これを正確にできないとミスタッチばかりで曲にならない
というケースもありえます。その意味でこの曲はエチュードとしても難易度は決して易しくはないと思います。
練習方法としてはとにかく遅いテンポでミスせずに繰り返し弾いて、その感覚を体で覚えるしかないと思います。
この演奏はやや守りに入っていてテンポは遅めですが、本当はもっと速いテンポの方が
この曲の荒々しい激しさや暗い情熱が伝わる演奏になりますよね。
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3つの新練習曲第1番へ短調 Three New Etude No.1 F minor(f moll) |
1' 54'' 2006/9/17
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ショパンのエチュードと言えば、作品10、25の24曲がよく聴かれますが、その他に3つの新練習曲も書いています。
この曲はその中の第1曲で、左4、右3の複合リズムと、音楽的表現が課題の曲です。エチュードとしては
技術的には易しいほうです。
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3つの新練習曲第3番変イ長調 Three New Etude No.3 A-flat major(As dur)
| 1' 36'' 2006/9/19
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この曲は3つの新練習曲の第3曲(第2曲?)です。左2、右3の複合リズムの曲ですが、
右手のややこしい和音をしっかり譜読みして記憶し再現すること、和声の微妙な変化を感じ取って音楽の流れに
反映させることが大きな課題です。エチュードとしては易しい曲ですが、右手の和音は本当にややこしいですよ。
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