ショパン・ピアノソナタ第2番変ロ短調Op.35・おすすめCD・聴き比べ
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ショパン・ピアノソナタ第2番変ロ短調Op.35 CD聴き比べ

   おすすめ度・第1位:マウリツィオ・ポリーニ(p), DG盤, 1984年録音
   おすすめ度・第2位:マルタ・アルゲリッチ(p), DG盤, 1974年録音 

1.所有音源
ピアニストレーベル録音年ランキング
ポリーニドイツ・グラモフォン1984年★★★★★
ルービンシュタインRCA1961年★★★
アシュケナージ英デッカ(ロンドン)1976-84年★★★
アルゲリッチドイツ・グラモフォン1974年★★★★
ペルルミュテールニンバス1978年★★★
横山幸雄CBSソニー1991年★★★★
ルービンシュタインRCA1946年★★★
ヴァーシャリドイツ・グラモフォン1965年★★★★
キーシンRCA1999年★★★★

2.短評/感想
マウリツィオ・ポリーニ(p), DG盤, 1984年録音<<特選>>

ポリーニ
※シャープな音色、正確無比のテクニック、高度な音楽性、卓抜な構成力、最優秀の録音、どれをとってもピカイチ!管理人 一押し!
レコード芸術誌86年度レコードアカデミー賞に輝いた誉れ高い名盤。 80年代半ばという録音データからも分かるように、従来のポリーニの持ち味であった硬質で明るく輝かしい音色は、 ここでは、重厚で柔軟な音色へと変わってきています。 ポリーニ神話が崩れ去る直前の超完璧な演奏として存在する最も新しい録音と思われます。 ピアノソナタ第2番は、「乱暴な4人の子供の手を無理やりつなぎ合わせただけ」とシューマンが評しているように、 各楽章間の関連性も薄く、構成的に弱いと言われる作品ですが、ポリーニは、楽想一つ一つを鋭敏な感覚で、 極めて明快に表現しています。その振幅の大きいダイナミクスの幅と、芯のしっかりしたシャープな音色は、 この作品の輪郭を極めて明確に際立たせており、冷静沈着に音の論理を組み立てて、聴く人を説得する強力な力を 持っていることに驚かされます。 第1楽章第1主題のシャープな立ち上がりから、第2主題の完璧な節回しによるロマンティシズムの表出は見事というほかなく、 中間部でのクライマックスへの流れの作り方の卓抜さは、ポリーニが理知的な演奏家であることを聞き手に強く印象付けます。 第2楽章、第3楽章では、デモーニッシュな表現もさることながら、その中間部の完璧なルバート、フレージングは、ポリーニの 高度な音楽性をもってして始めて可能な演奏と思われます。第4楽章は、本来曖昧な音楽であるはずですが、ポリーニの手にかかると、 まるで、太陽に向かって風にかざした砂塵のように、音の一粒一粒が、七色の輝きをもって主張しているように聴こえてきて恐ろしくなります。 全楽章を通して、聴きどころの多い超名演といってよく、本作品の本来の姿を完全再現していくポリーニの手腕の確かさと高度に 磨きぬかれた演奏技巧には、畏敬の念を抱かざるを得ないです。ピアノのシャープな音色をとらえた録音も優秀。 管理人一押しの決定版です!

アルトゥール・ルービンシュタイン(p), RCA盤, 1961年録音
ルービンシュタイン盤
ルービンシュタイン
※主情を排して真摯に楽譜に向き合った演奏だが、いくぶん淡白なきらいも…
ここでのルービンシュタインは、ことさら強い自己主張を持ち込むことなく、あくまで原典に忠実であろうとする 姿勢でこの作品に向き合っていると思われます。ノイエ・ザッハリッヒカイト(新即物主義)に根ざしたその作品解釈は、 虚飾を排した普遍性に基づくもので、ショパン演奏の規範として長く王座の地位を保つ価値のある演奏を実現しています。 とくにピアノソナタという、古典派時代にその様式が確立された作品では、そうした厳しい客観性が必要となる場合が ほとんどです。 但し、個人的には、本作品の場合は、もっと楽想を鋭く立ち上げて、デモーニッシュな感覚で聴く人をしびれさせるような ある種の「魔力」がほしい気がします。第1楽章、第2楽章の劇的なクライマックスでは、やや淡々としすぎているようで、 もう少しパッションが欲しい気がしますし、緩徐的な部分では、もう少し濃密さや細かいニュアンス、デリカシーが欲しい 気がします。聴く人によっては「つまらない演奏」と感じる人もいるのではないかと思います。 とはいうものの、この人のこのような真摯な演奏姿勢には、見習うべきところは多いと思います。

ヴラディーミル・アシュケナージ(p), ロンドン盤, 1979年録音
アシュケナージ盤
アシュケナージ
※各楽想の特徴を捉えて、きめの細かい繊細な表現を追及した美しい演奏だが…
いかにもアシュケナージらしい、バランスの取れた美しい演奏です。 決して感情には流されない冷静な音の運びによる第1主題の立ち上がりから、麗しい香気をもって立ち上がる第2主題のあたりは 惚れ惚れするほどの美しさで、音楽の持つ自然な流れを大切にしながら、微妙なニュアンスをそこに滲ませて、聴く人の 涙を誘います。アシュケナージという人は、決してスケールの大きい演奏をする人でもなく、極端な作品解釈で聴く人を 驚かせる演奏家でもないのですが、惚れ惚れするほどの輝かしい耽美的な音色をもって、一つ一つの楽想を丁寧に分かりやすく 聴く人に伝えてくれる演奏家ですね。こうした演奏は、今日多いとはいえ、作品そのものが本来備え持っている美しさを ここまで徹底的に作品そのものに語らせる主義を徹底して行うアシュケナージのピアニストとしての姿勢は、まさに 「ピアニストの鏡」。但し、僕はこの作品の場合は、もう少し激性、ダイナミクスの幅と、キレが欲しい気がします。 これは好みの問題というしかないでしょう。

マルタ・アルゲリッチ(p), DG盤, 1974年録音<<推薦>>
アルゲリッチ盤
アルゲリッチ
※アルゲリッチのほとばしる情熱の奔流に適度な抑制が加わって本能的なバランス感覚で構成された見事なソナタ演奏
いつものことながら、アルゲリッチの音楽のもつ勢いと激情の奔流には言葉を失います。 但し、ただ荒れ狂うだけの第3番とは違い、この第2番ではある種の抑制の美学が働いているようで、それが、この演奏に、 ピアノソナタとしての構成感やバランス感を与えているようで、非常に引き締まった印象を聴く人に与えます。 アルゲリッチが本来持っている表現手腕の確かさは、24の前奏曲などの緩徐系の作品で周知の通りですが、 ここでもそのルバートの卓抜さは光っています。そして、この作品に本来宿る鬱積した暗い激情の表出部は、 まさにアルゲリッチの独壇場といってよく、その圧倒的にすさまじい演奏は、激情の奔流と化して、聴く人を しびれさせます。 激情が激情たる所以を説得しながら音の論理によって組み立てていくポリーニの演奏とは違った意味で、感情を直情的に表現している アルゲリッチの演奏は、「感覚」を大切にして聴く人にとっては、ポリーニ以上に「分かりやすい」かもしれないですね。 作品のもつ激性と美観の両面から聴いてみると、なるほど、これは、素晴らしいの一言に尽きます。 個人的にはポリーニに軍配を上げるものの、ここでは、推薦盤として管理人が強力に推したい名演奏です。

ヴラド・ペルルミュテール(p), ニンバス盤, 1978年録音
ペルルミュテール盤
ペルルミュテール
※美しくまろやかな音色、自然で無理のない気品に満ちた音楽の流れ、ペルルミュテールの芸の深さ。
豊かなロマンが内側から香り立つような気品に満ちた美しさが印象的な演奏。でも、この人は 演奏技術が弱いのが何とも残念です。もともと技術的素質に恵まれなかったからのようで、勤勉さは 評価されている人です。ラヴェル演奏に関しては、作曲家本人から直に教えを受けたということもあり、 フランス近代演奏の大御所としても名高いお方です。 実に理に叶った演奏法で脱力がしっかり出来ているようで、音色は 美しいし、自然で無理がないです。溢れ出るようなロマンが音と音の間からこぼれ出てくるような 演奏で、センス、ニュアンスともに抜群です。 モコモコとした切れ味の悪い演奏なのは仕方ないです。フランス風のエスプリに富んだ粋で洒脱な香気に 彩られたショパン演奏がここにあります。

横山幸雄(p), ソニー盤, 1991年録音
横山幸雄盤
横山幸雄
※正確無比の演奏技術で弾き通された完全無欠の演奏。横山幸雄さんのデビュー盤。
横山幸雄は第12回ショパンコンクールで第3位入賞の他、第3次予選で弾いたピアノソナタ第2番が高く 評価されて「最優秀ソナタ演奏賞」を受賞しています。これはその受賞を受けて制作された彼の待望の CDデビュー作です。 ショパンコンクールで彼は、圧倒的に正確無比にして精緻な演奏スタイルを披露し、その完成度の高い演奏は 既に高く評価されていました。 ここでも、横山幸雄は、その高度に磨きぬかれた超完璧な演奏技巧によって、この第2番を隅々まで完全無欠に 表現しており、その完成度の高さは、精巧なつくりの第1級の工芸品とまで言ってよいと思います。 ポリーニほどの振幅がないのは、ただ単に録音のせいもあるかもしれません。 とにかく、これを聴くたびに何食わぬ顔(?)で平然とこの作品を演奏している彼の顔を思わず想像してしまい、 これを聞きながらそれを思うだびに笑ってしまいます。この作品の持っている技術的な難しさが聴く人には全く 伝わってこないという意味で、横山幸雄の決して破綻をきたすことのない高度に安定したテクニックには、 畏敬の念と尊敬の念を抱かざるを得ないです。なるほど、これを聴けば、ショパンコンクールで予選が進むにつれて、 本来の自分の演奏ができなくなっていく他の出場者を尻目に、彼1人で、この作品を平然、余裕綽々と演奏して 最優秀ソナタ演奏賞まで受賞してしまったのは分かるような気がしますね。 各楽想が無機質に鳴り響くのは、彼の技術が抜きん出ているからで、良し悪しです。 決して演奏技術が一人歩きしているとは思わないです。高度に完成された十全な演奏と思います。 個人的には好きな録音の一つです。

アルトゥール・ルービンシュタイン(p), RCA盤, 1946年録音
ルービンシュタイン・モノーラル盤
ルービンシュタイン
晩年のルービンシュタインとは一味も二味も違う表現意欲旺盛なモノーラル時代の名演奏。 技術的には今ひとつ精度に欠けますが、ショパンの暗い情緒が、極めてたくましい輪郭をもって直情的に 立ち上がってくる瞬間や、第2楽章の変ト長調のカンタービレの卓抜なルバートを聴くと、なるほど、 これは、20世紀前半という時代に、作曲家ショパンの感情の最大の翻訳者の1人だったルービンシュタイン の技量をしのばせるに十全な演奏といえます。あくまで客観性を踏まえたうえでの、ルービンシュタインの 個性が、表現意欲とともに示され、聴く人の胸を打ちます。 但し、録音は「非常に」悪く、ノイズのみでなく、音の歪み、つまり、テープヒスによるピッチの不安定が 耳に障ります。ルービンシュタイン・ファンの方のみにお薦めの演奏。

タマーシュ・ヴァーシャリ(p), DG盤, 1965年録音
ヴァーシャリ盤
ヴァーシャリ(輸入盤3枚組)
タマーシュ・ヴァーシャリは、知る人ぞ知るショパン弾きで、1960年代にショパンの主要な作品の多くをドイツ・グラモフォン に入れており、これはその中の一枚です。 ここでのヴァーシャリは、ことさら強い自己主張を持ち込むことなく、それでも、適度な即興性と自然な フレージングの感覚を大切にしながら、各楽想に程よい味付けを施すことに成功しています。 激情の表出部では、シャープに立ち上がる鋭い音色で、極めて明確な輪郭をもって楽想を立ち上げていて見事ですし、 カンタービレでは、その叙情性を適度に控えめな即興性でもって表現しており、感心させられます。 どこか中途半端な印象が否めないのは、第4楽章にも聴かれるような、レガートの技術的な不備が少々気になるのと、 この人の本来の演奏スタイルが、やや「おっとり系」だからかもしれないです。 この人のノン・レガートにこだわった格調高い優雅な演奏スタイルが堪能できる演奏です。

3.演奏時間比較
ピアニストレーベル録音年第1楽章第2楽章第3楽章第4楽章
ポリーニドイツ・グラモフォン1984年7'16''6'14''8'24''1'23''
ルービンシュタインRCA1961年5'38''6'38''9'00''1'26''
アシュケナージ英デッカ(ロンドン)1976-84年7'33''6'38''8'57''1'28''
アルゲリッチドイツ・グラモフォン1974年6'40''6'01''8'34''1'26''
ペルルミュテールニンバス1978年7'33''6'22''9'09''1'31''
横山幸雄CBSソニー1991年7'32''6'39''9'12''1'22''
ルービンシュタインRCA1946年4'58''5'43''8'38''1'19''
ヴァーシャリドイツ・グラモフォン1965年5'33''6'38''8'24''1'37''
キーシンRCA1999年5'20''6'07''10'39''1'30''

2005/02/20 「演奏時間比較」追加

 

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