ショパン演奏
〜ショパン・バラード〜
 
バラード第1番ト短調Op.23
演奏時間 8' 46''

ショパンの4曲のバラードの中で特に人気が高いのが、この第1番です。 序奏の後に現れるト短調の憂鬱な第1主題と、技巧的なパッセージを挟んで現れるロマンティックな変ホ長調の第2主題が、 登場するたびに形を変え、特に第2主題の発展を主体として曲の後半に向かって華やかで劇的なドラマを築き上げる名曲です。 難易度も非常に高く、特に曲の後半、第2主題がイ長調で高々と再現される部分以降が技巧的ですが、 それ以上にコーダの跳躍の連続が難しい部分です。曲の至るところに技巧的なパッセージがちりばめられていて、 取り組むたびに難しさを感じます。今回も部分練習と弾き込みにかなりの時間を費やして、 鑑賞に耐える演奏を目標に汗を流して練習しましたが、他の曲とは比べ物にならないくらい練習が疲れました。 バラードはどの曲も難易度が高く、本格的に仕上げようとすると一大決心が必要ですね。

バラード第3番変イ長調Op.47
演奏時間 7' 26''

ショパンの4曲のバラードはいずれも劇的、情熱的で規模の大きい作品ですが、その中にあってこの曲は比較的規模が小さく、 粋で典雅な趣を持つ作品です。冒頭で示される変イ長調の第1主題は本曲の至る所に登場する重要なテーマですが、これは、 しばしば男性と女性の対話に例えられます(女性→男性、男性→女性)。このテーマに付随して美しい楽句も次々に登場し、 何度も転調をしますが、再び変イ長調に戻ってこの第1部が締めくくられます。第2主題はハ長調で登場し、軽快で優雅な旋律です。 この第2主題部が終わると、突然変イ長調に転調し、右手の速いパッセージの部分を過ぎると、左手のアルペジオの伴奏に乗って、 右手で極上の美しい旋律を奏でる部分となります。ここがこの曲の中で僕が一番好きなところです。 その後、変イ長調で第2主題を再現した後は、嬰ハ短調に転調して次第に盛り上がり、嬰ハ短調で分散和音が連続する部分が この曲中、一番の難所です。その後はコーダに向かって不安定な楽句が続きますが、ここは左手の音型が広域にまたがっているため、 地味に難しい部分です。そして次第に高揚した後は和音中心の華やかなコーダを迎えて、華麗に締めくくられます。 ショパンの4曲のバラードの中では、個人的には最も弾きやすいとは思いますが、やはりかなりの難曲です。 技術的な難所は、やはり後半に集中しているため、ここを集中的に取り組むことが仕上げる上で重要となります。

バラード第4番ヘ短調Op.52
演奏時間 10' 56''

この曲はショパンの4曲のバラードの中で最も規模が大きく、豊かで深い内容を持つ作品で、ショパンの最高傑作の1つに数えられる名曲です。 同時期の作品として、英雄ポロネーズ、スケルツォ第4番、即興曲第3番などがあり、ショパンの創作力が最も充実していた 円熟期の作品です。曲は自由な構成となっていて、ハ長調の序奏の後にヘ短調の第一主題が登場した後、それをモチーフとして 経過句や他の主題を挟んで効果的に変奏されます(第1変奏:和音型、第2変奏:パッセージ型、ともにヘ短調)。 その間には変ロ長調のコラール風の第2主題が現れ、 これは第1主題の第2変奏の直後に、変ニ長調に移調して効果的な左手の速い伴奏を伴って変奏され、そのまま終わりに向かって 突き進みます。また第2主題登場後にはこの曲に一度しか登場しない楽句が長く置かれていたかと思うと、今度はハ長調で登場した 序奏がイ長調に移調して現れたりと、本当に自由で複雑な構成となっています。コーダの前には束の間の静寂があり、 嵐のような激しいコーダによってこの大曲が締めくくられます。 全体的に詩的で内省的な趣を持つバラードですが、哀愁極まる旋律から華やかで演奏効果の高いパッセージまで、 あらゆる楽想を盛り込んだ、実に「欲張り」な1曲です。難易度的にはショパンの4曲のバラードの中で最も高いというのが 定説のようですが、もちろん個人差はあると思います。高校1年のときに初めて取り組んで以来、 本格的にこの曲に取り組んだのは今回が5度目ですが、 皆さんに聴いてもらうというはっきりとした目的があったので、今回が一番気合が入りました(この演奏もまだ納得できない部分がありますが…)。 まだまだこれからも一生弾き続けていきたい曲です。