ショパン演奏
〜全演奏・コメント付き〜

フレデリック・ショパン(Frederic Francois Chopin, 1810〜1849、ポーランド)

 

ポロネーズ〜Polonaise〜

曲目演奏時間演奏者コメント
ポロネーズ第1番嬰ハ短調Op.26-1
Polonaise No.1 C-sharp minor(cis moll) Op.26-1
7' 08''
2008/7/19
「ポロネーズ第1番」という番号が与えられていますが、ショパンは少年時代から習作のポロネーズを数曲手がけていたので、 この曲はショパンの初ポロネーズではないということは、皆さんもよく知っていると思います。 曲の構成は複合三部形式で、主部は嬰ハ短調のリズミカルな序奏と憂鬱な旋律からなる部分と、シンコペーションのリズムと 急速な上昇アルペジオとからなる部分とに分けられます。中間部(トリオ)は変ニ長調に転調し、瞑想的で優美な旋律が 響き渡りますが、中ほどから徐々に感情が高まりながら、再度変ニ長調の旋律に突入します。この辺りの表現の巧拙が この曲の演奏の良し悪しを左右するポイントではないかと思います。中間部が終わり、主部が再現されると、 コーダもなく突然終わります(女性終止)。この曲は、ポロネーズとしては演奏が易しいこともあり、 ポロネーズ入門用として比較的ポピュラーな曲で、ピアノレッスンでも好んで取り上げられるようです。
ポロネーズ第3番イ長調Op.40-1「軍隊ポロネーズ」
Polonaise No.3 A major(A dur) Op.40-1
4' 06''
2007/7/11
ショパン名曲集の定番、軍隊ポロネーズです。力強い和音の連続は、まさに「軍隊」の行進を思わせますね。 この曲も、初期のポロネーズ同様、三部形式で書かれていますが、特徴的なのは、中間部(トリオ)も主部と 同じテンポを保ち、力強い和音の連続に終始するところです。従って、この曲は、ショパンらしい繊細な旋律が垣間見える瞬間は 一瞬もない曲です。それでも力強い複雑な和音の連続は、何故か聴く人を惹き付ける魅力があるんですよね。 この演奏はややミスタッチが多いですが、これは勢いで弾くことを重視した結果です(という言い訳?(笑))
ポロネーズ第6番変イ長調Op.53「英雄ポロネーズ」
Polonaise No.6 A-flat major(As dur) Op.53 'Polonaise-Heroique'
6' 35''
2006/3/19
ショパンのピアノ曲の中では、超人気曲です。ショパンの男性的側面が最もよく現れた曲で、変イ長調で 高らかに奏でられる第一主題は、一度聴いたら忘れられないほど衝撃的で印象に残ります。 実は演奏者も、子供時代、この曲への憧れが、ピアノに向かうモチベーションになっていました。 あの頃から何回となく弾いているのにミスがなくならないですね。これで勘弁してください。 難所は色々ありますが、序奏の4度の半音階進行の3度目(この演奏もここでこけてしまいました)、 中間部のオクターブ連続部(最後疲れ果ててしまいました)が特に難しいですね。
ポロネーズ第7番変イ長調Op.61「幻想ポロネーズ」
Polonaise No.7 A-flat major(As dur) Op.61 'Polonaise-Fantasie'
12' 01''
2006/9/5
ピアノ独奏曲としては、ショパン最後の大曲です。「幻想ポロネーズ」という標題で統一されていますが、英語表記では 'POLONAISE-FANTASIE'となっており、直訳すれば、「ポロネーズ風幻想曲」とでも言うのでしょうか?? 確かにこのポロネーズは、それまでの3部形式の典型的ポロネーズとは違って、特定の形式を持たず、 極めて自由に書かれており、色々な楽想が現れては消えていきます。その意味で音楽的に非常に難解な曲と言えます。 技術的には、手に馴染めば何とかものにできますが、コーダの前半、特に最後から3ページ目が難しく、 この演奏も、ここで少し崩壊してしまいました。このような曲をミスなく弾き切るのは本当に大変なことなのだということを 痛感しました。

 

ピアノソナタ〜Piano sonata〜

ピアノソナタ第2番変ロ短調Op.35

曲目演奏時間演奏者コメント
ピアノソナタ第2番変ロ短調Op.35〜第1楽章
Piano Sonata No.2 B-flat minor(b moll) Op.35〜1st.mov.
7' 21''
2008/5/18
ショパンのピアノソナタは1番〜3番まで3曲ありますが、その中でよく知られているのは2番と3番で、今回は第2番の全楽章を 一度にアップすることにしました。第3楽章に有名な「葬送行進曲」があることが一般的な人気を高めているようですが、 僕が一番好きな楽章は、この第1楽章です。曲中に渡って、細切れのモチーフ(「愛って何」と聴こえると言う人がいますね(笑))を 巧みに使いながら曲を構成していますが、技術的には提示部のDoppio movimento(2倍の速さで)と表示されている部分の 左手が特に難しく、完璧に弾くには柔軟性に加えてある程度の手の大きさが必要になる部分です。しかし僕がこの曲で一番好きなのは、 実はロマンティックで痛切な第2主題です。展開部で徐々に盛り上がってクライマックスに達する部分もいいですね。 暗い激しさと静けさが同居しつつも巧みに融合されていて、これはショパンの名作の1つに間違いないと思っています。
ピアノソナタ第2番〜第2楽章(変ホ短調)6' 45''
2008/5/18
この第2楽章は、主部では跳躍が多く、かなり体育会系的なハードさがあり、弾いていて体力を消耗します。 かなり速いテンポで弾かなければならないので、少ない練習量では、頻発するミスを避けることが難しく感じました。 その意味で、この楽章は、技術的にはかなり危険度が高いと思います。 それからこの楽章の中間部が実はとても好きで、この演奏でもテンポルバートを多用して歌ってみました。 主部が弾き込み不足でやや完成度が甘いですが、この季節にもかかわらず汗だくになって練習した成果は 一応残せたかな、と思っています。
ピアノソナタ第2番〜第3楽章「葬送行進曲」(変ロ短調)8' 38''
2008/5/18
「ショパン名曲集」の定番にもなっている有名な「葬送行進曲」です。 死者を弔う儀式の音楽ということで、主部は暗く荘厳で重厚な和音が続き、実際、ショパンの葬儀にもこの曲が使われたそうです。 中間部は御霊を鎮めるという趣旨なのか、天国的な美しさを持つ旋律が静かに歌われます。 曲の内容に比べて若干冗長な印象がありますが、印象深い曲だと思います。
ピアノソナタ第2番〜第4楽章(変ロ短調)1' 35''
2008/5/18
この楽章は、最初から最後までユニゾン(左手と右手がオクターブ違いの音を弾き続ける)が 絶え間なく延々と続く常動曲ですが、 音のカオス、混沌とした音の配列で、音楽の流れが把握しにくく、つかみどころのない曲調ですよね。 実際、調性もはっきりせず、最後の数小節になって、やっと変ロ短調という調性がはっきりしてきます。 荒涼とした響きで、ショパンはこの楽章を「葬送行進曲」の後において締めくくることで、 ピアノソナタ2番の印象をより暗く絶望的なものにしようという意図があったのではないかと個人的には感じます。 ちなみにこの楽章は技術的にはかなり難しく、エチュードと同じ感覚で弾いています。 やや雑な仕上がりですね。もう少し弾き込みが必要だったかも…

ピアノソナタ第3番ロ短調Op.58

曲目演奏時間演奏者コメント
ピアノソナタ第3番ロ短調Op.58〜第1楽章
Piano Sonata No.3 in B minor(h moll) Op.58〜1st.mov.〜Allegro maestoso
8' 34''
2010/5/8
ショパンの3曲のピアノソナタの中で最も人気が高い、ショパン円熟期の傑作・ピアノソナタ第3番です。 4楽章構成という点では、第1番、第2番と同じですが、より一層規模が大きく構成や和声が複雑になっており、 楽想が豊富に盛り込まれています。 楽章別ではこの第1楽章と最終の第4楽章(特に第4楽章)の人気がとりわけ高いですが、個人的に思い入れがあり最も好きなのが、 今回取り上げたこの第1楽章です。構成はソナタ形式で、提示部は第1主題がロ短調、第2主題がニ長調、終結部がニ長調ですが、 穏やかで安定した第2主題に入るまでの構成や和声は実に複雑で、実は調性さえもはっきりしない箇所がほとんどです。 それに加えて提示部の技巧的な難所もこの前半部分に集中しているため、この曲を弾く人にとって、この鬼門を乗り越えるのも 大きな課題となります。また第2主題が嬰ヘ短調で終了してから、ニ長調の提示部の終結部に入るまでの何とも形容しがたい 、まさに抽象的としか言いようがない楽想は並みの発想では到底思い浮かばない、まさに天才の音楽と思います。 提示部の終結部はニ長調で、神々しさを感じさせる詩情豊かな旋律で締めくくります。 展開部は提示部の第1主題のモチーフを使いながら調性不明の激しい楽句が吹き荒れます。 ここは技術的にこの楽章最大の難所です。展開部が終わると、再現部の第1主題部は大幅に省略・変更され、 第2主題は短3度低いロ長調で再現されます。あとは細かい違いを除いて、提示部の再現となり、 短いコーダによってそのままの調性(ロ長調)で締めくくられます。構成は複雑ですが、このような予備知識を持って この曲を聴いていくと何度か聴くうちに構成や曲想が把握できるのではないかと思います。 とにかく素晴らしい楽章です。なお、演奏は提示部の繰り返しを省略しています(今では省略するのが多数派です)。
ピアノソナタ第3番〜第2楽章(変ホ長調)
Piano Sonata No.3〜2nd.mov. in E-flat major 〜Scherzo〜molto vivace
2' 33''
2010/8/20
3部形式で書かれたスケルツォの短い楽章です。主部はいきなり変ホ長調で始まり、これはロ長調で終わった第1楽章とは かなりの遠隔調で、調性の関連性が一見希薄に思えてきますが、第1楽章の最終和音の最高音がロ長調の主音ではなく第3音のD♯(E♭と等価で、 これは変ホ長調の本楽章の主音)としたことで、一見遠隔調のようでも、調性の関連性が見出されます。 この主部では、右手は控えめな音量で軽いレッジェーロで粒を揃えながら疾駆しなければならないため、やや高度な技巧が要求されます。 中間部は変ホ長調からロ長調へと再び遠隔転調しますが、既に第1楽章の再現部で登場済みの調性であるため、そこまで大きな違和感は ないと思います。ショパンはこの楽章で変ホ長調とロ長調という水と油のような調性を融合させるという斬新な試みをしているようです。
ピアノソナタ第3番〜第3楽章(ロ長調)
Piano Sonata No.3〜3rd.mov. in B major 〜Largo
8' 24''
2010/8/20
本ソナタの中では唯一の純粋な緩徐楽章で、静かで深くロマンティックな旋律はノクターンを想わせます。 序奏はD♯から始まりますが、これは第2楽章の最終音E♭と等価であり、この序奏を経て、ようやくロ長調という調性に至ります。 この楽章も3部形式で書かれており、主部はほぼ一定のリズムを刻む左手の伴奏が特徴で、ロ長調をメインに嬰ヘ長調、その他、 調性不明の経過楽句を経て、ホ長調で始まる中間部へと流れていきます。ここは右手でゆっくりと流れるような絶え間ない3連符を 奏し、一方の左手は和音を保持するというのが基本のパターンになっており、いささか退屈に感じる人もいるかもしれないと 思います。しかし、その時その時を支配する和声が刻々と微妙に変化し、移り行くはかない楽想の美しさや移ろいの妙は 例えようもないほど美しく、ピアノソナタ3番の全楽章の中で本楽章が最も好きというショパン愛好家もいるほどです。 本楽章の8分〜9分間という演奏時間は、全楽章の規模からみてバランス的にやや長すぎる、冗長すぎる、という評価も 時に目にしますが、ショパンはもしかしたら、この作品において、意識的にか無意識的にか、 ベートーヴェンの第9交響曲の影響を受けていたのかもしれない、と個人的には思ったりもします。 こうして余韻を残して静かに本楽章を終わった後、その流れは華やかな第4楽章に受け渡されます。
ピアノソナタ第3番〜第4楽章(ロ短調)
Piano Sonata No.3〜4th.mov. in B minor 〜Presto, ma non tanto
5' 01''
2010/8/21
ピアノソナタ第3番の最後を飾るにふさわしい華麗で演奏効果の高い楽章で、一般的にこの作品の中で最も人気の高い楽章です。 構成はロンド形式で、大まかには、序奏+A+B+A'+B'+A''+コーダという構成です。 和音の強打の連続で始まる序奏の後、早速ロンドの主題がロ短調で示され、右手のロンドの主題は後半、 オクターブとなります。この主題部は、計3回登場し、1回目ロ短調、2回目ホ短調、3回目ロ短調という調性で、伴奏型は、 1回目が左手と同じ8分音符(8分の6拍子であるため、「3連符」のようなもの)、2回目が「4連符」、3回目が「6連符」と、 登場するたびに速度が速くなり、難易度が上がっていきます。左手の伴奏型の音域も広く、2回目や3回目は結構大変です。 その間に登場するもう1つの主題(こちらの方がインパクトがありそうですが)B、B'は右手に華麗なスケール、パッセージが登場し、 この曲の演奏効果をさらに高める効果があります。コーダも華やかで、右手の速いパッセージと力強く輝かしい和音によって、 本曲ピアノソナタ3番は華麗に締めくくられます。 この第4楽章は難易度的にも全楽章中、最も高いと個人的には思います。 この曲の速度表示は'Presto'という最高に近い速度ですが、'ma non tanto'として「あまり速すぎないように」という 注意書きが添えられています。しかし、アルゲリッチのテンポは破格としても、ポリーニも4分50秒弱で弾いており、 個人的には速い演奏の方が好きであるため、多少正確さを犠牲にしても速く弾くことが必要と感じます。

バラード〜Ballade〜

曲目演奏時間演奏者コメント
バラード第1番ト短調Op.23
Ballade No.1 G minor(g moll) Op.23
8' 46''
2008/8/3
ショパンの4曲のバラードの中で特に人気が高いのが、この第1番です。 序奏の後に現れるト短調の憂鬱な第1主題と、技巧的なパッセージを挟んで現れるロマンティックな変ホ長調の第2主題が、 登場するたびに形を変え、特に第2主題の発展を主体として曲の後半に向かって華やかで劇的なドラマを築き上げる名曲です。 難易度も非常に高く、特に曲の後半、第2主題がイ長調で高々と再現される部分以降が技巧的ですが、 それ以上にコーダの跳躍の連続が難しい部分です。曲の至るところに技巧的なパッセージがちりばめられていて、 取り組むたびに難しさを感じます。今回も部分練習と弾き込みにかなりの時間を費やして、 鑑賞に耐える演奏を目標に汗を流して練習しましたが、他の曲とは比べ物にならないくらい練習が疲れました。 バラードはどの曲も難易度が高く、本格的に仕上げようとすると一大決心が必要ですね。
バラード第3番変イ長調Op.47
Ballade No.3 A-flat major(As dur) Op.47
7' 26''
2009/12/29
2010年正月特別企画の曲として2009年末に集中的に取り組みました。 ショパンの4曲のバラードはいずれも劇的、情熱的で規模の大きい作品ですが、その中にあってこの曲は比較的規模が小さく、 粋で典雅な趣を持つ作品です。冒頭で示される変イ長調の第1主題は本曲の至る所に登場する重要なテーマですが、これは、 しばしば男性と女性の対話に例えられます(女性→男性、男性→女性)。このテーマに付随して美しい楽句も次々に登場し、 何度も転調をしますが、再び変イ長調に戻ってこの第1部が締めくくられます。第2主題はハ長調で登場し、軽快で優雅な旋律です。 この第2主題部が終わると、突然変イ長調に転調し、右手の速いパッセージの部分を過ぎると、左手のアルペジオの伴奏に乗って、 右手で極上の美しい旋律を奏でる部分となります。ここがこの曲の中で僕が一番好きなところです。 その後、変イ長調で第2主題を再現した後は、嬰ハ短調に転調して次第に盛り上がり、嬰ハ短調で分散和音が連続する部分が この曲中、一番の難所です。その後はコーダに向かって不安定な楽句が続きますが、ここは左手の音型が広域にまたがっているため、 地味に難しい部分です。そして次第に高揚した後は和音中心の華やかなコーダを迎えて、華麗に締めくくられます。 ショパンの4曲のバラードの中では、個人的には最も弾きやすいとは思いますが、やはりかなりの難曲です。 技術的な難所は、やはり後半に集中しているため、ここを集中的に取り組むことが仕上げる上で重要となります。
バラード第4番ヘ短調Op.52
Ballade No.4 F minor(f moll) Op.52
10' 56''
2009/8/9
2009年夏の一大企画として本格的に取り組みました。 この曲はショパンの4曲のバラードの中で最も規模が大きく、豊かで深い内容を持つ作品で、ショパンの最高傑作の1つに数えられる名曲です。 同時期の作品として、英雄ポロネーズ、スケルツォ第4番、即興曲第3番などがあり、ショパンの創作力が最も充実していた 円熟期の作品です。曲は自由な構成となっていて、ハ長調の序奏の後にヘ短調の第一主題が登場した後、それをモチーフとして 経過句や他の主題を挟んで効果的に変奏されます(第1変奏:和音型、第2変奏:パッセージ型、ともにヘ短調)。 その間には変ロ長調のコラール風の第2主題が現れ、 これは第1主題の第2変奏の直後に、変ニ長調に移調して効果的な左手の速い伴奏を伴って変奏され、そのまま終わりに向かって 突き進みます。また第2主題登場後にはこの曲に一度しか登場しない楽句が長く置かれていたかと思うと、今度はハ長調で登場した 序奏がイ長調に移調して現れたりと、本当に自由で複雑な構成となっています。コーダの前には束の間の静寂があり、 嵐のような激しいコーダによってこの大曲が締めくくられます。 全体的に詩的で内省的な趣を持つバラードですが、哀愁極まる旋律から華やかで演奏効果の高いパッセージまで、 あらゆる楽想を盛り込んだ、実に「欲張り」な1曲です。難易度的にはショパンの4曲のバラードの中で最も高いというのが 定説のようですが、もちろん個人差はあると思います。高校1年のときに初めて取り組んで以来、 本格的にこの曲に取り組んだのは今回が5度目ですが、 皆さんに聴いてもらうというはっきりとした目的があったので、今回が一番気合が入りました(この演奏もまだ納得できない部分がありますが…)。 まだまだこれからも一生弾き続けていきたい曲です。

スケルツォ〜Scherzo〜

曲目演奏時間演奏者コメント
スケルツォ第1番ロ短調Op.20
Scherzo No.1 B minor(h moll) Op.20
9' 24''
2008/12/29
2009年正月特別企画用の曲としてこの曲、スケルツォ1番を選びました。 冒頭の2つの調性不明の鋭い和音がこの曲の型破りな楽想を予告していますが、この曲はショパンの曲としても 全く型破りで、斬新、アバンギャルドで意表を突く展開を見せます。ヴィルトゥオジティ溢れる速いパッセージと 圧倒的な迫力、推進力は、さながらリストを彷彿とさせます。 しかし、主部はほぼ同じような単位が繰り返し現れるだけなので、 最初は面食らっても1回聴けば、聴き終わる頃にはこの曲の曲想が把握できるのではないかと思います。 中間部は一転してロ長調の穏やかな旋律が流れます。これはポーランドの古いクリスマスの歌(眠れ、幼児イエスよ)が 使われているということですが、途中、静かな中にもやるせない情緒の高まりを見せ、 心を揺さぶる不思議な力のある感動的な旋律で、この曲の中で僕が最も好きな部分です。 中間部が終わると主部は短く再現され、荒々しく激しいコーダで締めくくられます。 この演奏はやや粗っぽく、力で強引にねじ伏せるような弾き方になってしまいましたが、 このピアノのアクションの重さを考えると、正直やむを得ないと感じる部分があるのも事実です。
スケルツォ第2番変ロ短調Op.31
Scherzo No.2 B-flat minor(b moll) Op.31
9' 42''
2008/4/6
ショパンの4曲のスケルツォはいずれも大曲、難曲で、当サイトの訪問者の皆さんにとって、なじみの薄い曲ではないかと思いますが、 その中でこの第2番は最もメジャーで、親しみやすい名曲です。冒頭の謎めいた問いかけと甲高い和音との対話で始まりますが、 何よりもこの曲の魅力は、その後に続くロマンティックで流麗な旋律と、中間部後半、コーダの華麗なピアニズムではないかと思います。 この曲は僕にとって大切なレパートリーの1つで、中学生以来長年弾いてきた曲ですが、実際に皆さんに聴いていただく形に 仕上げようとすると、色々な課題が見えてきて、難所を中心に何度も弾き込みを繰り返しました。 何回取り組んでも、そのたびに難しい曲だと痛感します。
スケルツォ第3番嬰ハ短調Op.39
Scherzo No.3 C-sharp minor(cis moll) Op.39
6' 59''
2009/10/25
ショパンの4曲のスケルツォの中では最も短い曲ですが、激しく情熱的でスケールの大きな傑作です。 調性不明で謎めいた短い序奏の後に登場する嬰ハ短調の第1主題は、両手の力強いオクターブの連続で始まり、 その後も鍵盤を叩きつけるような激しい和音の連続で、このような手法によって華やかな演奏効果を上げるところは、 同時代の作曲家リストを彷彿とさせます。しかし、変ニ長調(嬰ハ短調とは事実上同名調と同じ)の第2主題になると一転して、美しいコラール風の和音が鳴り響いた後に、 高音からキラキラと音が降り注いでくる楽句が続き、あたかも天から地上に降り注ぐ陽の光を想わせるものがあり、 清々しく爽やかな印象を残します。激しい第1主題の後だからこそ、この第2主題の神々しい美しさが一層際立ち、 ショパンの作曲の「設計」の上手さに改めて感心させられます。この第2主題は美しい間奏を挟んで、同じような単位を 微妙に変えながら3回繰り返され、再び嬰ハ短調の第1主題が戻ってきます。その後、再び第2主題が登場しますが、 今度は平行調のホ長調で、変ニ長調の場合とは弾きにくさが全く違います(聴いているだけでは分からないかもしれませんが)。 そして最後は第2主題がソットヴォーチェで呟く嘆き節へと変貌し、気分も沈みますが、静かに立ち上がって次第に高揚する 経過句を経て、嬰ハ短調の激しいコーダに突入し、華やかに締めくくられます。 もちろんこの曲は技術的にも難易度は高いですが、スケルツォ2番同様、もっと多くの人に弾かれる価値のある曲ではないかと 思います。

即興曲〜Impromptu〜

曲目演奏時間演奏者コメント
即興曲第1番変イ長調Op.29
Impromptu No.1 A-flat major(As dur) Op.29
4' 08''
2008/8/10
ショパンの即興曲の中では比較的よく知られている曲です。3部形式で、主部は右手、左手ともに3連符が続きますが、 音型は一定ながら、転調によって微妙な陰影を作り出していて、感興豊かな音楽です。 中間部は主にへ短調と変イ長調によって書かれていて、中間部後半は、単純なテーマが繰り返されるたびに 少しずつ複雑なパッセージへと変奏されていきます。この曲はショパンの即興曲の中では技術的に最も易しいため、 ピアノ学習者のショパン入門用としてもよく使われているようです。
即興曲第3番変ト長調Op.51
Impromptu No.3 G-flat major(Ges dur) Op.51
4' 50''
2008/8/31
内省的で詩情豊かな即興曲です。華やかさがないために地味で目立たない存在ですが、 シンプルながら深い内面性と簡素で上品な響きを持った詩的な佳作です。 曲はやはり3部形式で、3連符を基調にしているところは即興曲1番と同趣向です。 実際、出だしの序奏は即興曲1番の右手の音型との類似性がしばしば指摘されます。 主部は右手の単音で主題が示された後は、この主題が主に6度(3度、4度を含む)の重音を伴って繰り返され、 美しい旋律に厚みと彩りを添えます。その合間には美しい間奏的な楽句も登場します。 中間部は主声部が左手に移動し、基本的には右手の伴奏音型が3連符(1つ目は休符になっていることが多い)、 主旋律を受け持つ左手が主に4分音符、8分音符と、複合リズムとなっていて、慣れないとリズム的には若干難しい部分です。 主部の再現は間奏句を除いて短く行われます。
即興曲第4番嬰ハ短調Op.66「幻想即興曲」
Impromptu No.4 C-sharp minor(cis moll) Op.66 'Fantasie Impromptu'
4' 47''
2007/1/17
この曲もショパン・名曲集の定番の作品ですね。ピアノを習う人が一度は憧れる曲ではないでしょうか? 特に主部の嬰ハ短調のパッセージは、この曲を初めて聴く人には衝撃ではないか、と思います。 しかも、実際に取り組んでみると、多くの人が、右手と左手のリズムが合わないことにさらに衝撃を受けるのではないかと思います。 この複合リズムは、慣れれば大丈夫ですが、右手のパッセージそのものが難しく完璧に弾きこなすのは至難の業ですね。 まだ納得できるレベルではないですが、妥協ラインをわずかに上回る録音がとれたため、アップすることにしました。

ノクターン(夜想曲)〜Nocturne〜

曲目演奏時間演奏者コメント
ノクターン第1番変ロ短調Op.9-1
Nocturne No.1 B-flat minor(b moll) Op.9-1
5' 07''
2006/11/7
このノクターン1番も人気が高いですね。もの憂い旋律が胸に迫ってくるようで最初のノクターンとしては かなりシリアスな内容ですね。技術的には、左手の伴奏型のアルペジオの音域がかなり広いので、 慣れないうちは難しく感じます。それと、右手に再三登場する不規則連符や主部の最後の方に登場する跳躍が 少し難易度が高いです。ノクターン2番や20番と比べると少し弾きにくいのではないかと思います。
ノクターン第2番変ホ長調Op.9-2
Nocturne No.2 E-flat major(Es dur) Op.9-2
3' 35''
2006/3/14
最も有名なノクターンですね。映画「愛情物語」で使われて有名になったそうです。 感傷的で美しい旋律に満ちた名曲だと思います。同じ旋律が少しずつ変わりながら何回も登場する ロンド形式で書かれた曲で、最後まで聴く人を飽きさせないで聴かせるのが課題ですね。
ノクターン第3番ロ長調Op.9-3
Nocturne No.3 B major(H dur) Op.9-3
6' 08''
2008/8/31
ショパンの初期のノクターンの傑作で、作品9の3曲の中では内容が最も充実した作品でありながら、 皮肉にも認知度が不当に低いという、いわば「隠れた名曲」です。 3部形式で、主部はロ長調、嬰ヘ長調を主体とした、穏やかでありながらもやや感傷を伴った美しい旋律が魅力的で、 主題が再登場するたびに装飾音や多連符を変えながら変奏され、即興的な趣を持ちます。 中間部はロ短調に転調して突然激しくなり、穏やかな主部と著しい対比を示しています。 主部が短く再現された後は、美しく充実したコーダを経て、余韻を残して締めくくります。 この曲は、前2曲に比べると技術的な難易度も高く、穏やかな主部と激しい中間部の対比という、 後に見られるショパンのノクターンの典型を初めて示した、ノクターン名作の原点とも言える存在です。
ノクターン第4番ヘ長調Op.15-1
Nocturne No.4 F major(F dur) Op.15-1
4' 06''
2008/8/24
個人的にはお気に入りのノクターンです。3部形式で書かれていて、主部は水のしずくをイメージさせるヘ長調の美しい旋律が 魅力的です。左手の伴奏型には最下音と連打音、右手の主旋律に対する対旋律など、3つの異なる声部を同時に含んでいて、 魅力的な旋律と相まって、この部分の響きの美しさの鍵を握っていると思います。中間部は突然落ちる雷のように 始まります。ここは右手の重音トリルが音を変えながら連続し、技術的には難易度がかなり高い部分で、 右手のエチュードと言っても過言ではないくらいです。このノクターン4番はあまり人気が高くないようですが、 内容的には次の5番に決して引けを取らない名作だと思います。
ノクターン第5番嬰ヘ長調Op.15-2
Nocturne No.5 F-sharp major(Fis dur) Op.15-2
3' 23''
2006/11/7
ショパンのノクターンとしては2番、20番に次いで人気が高い作品ではないかと思います。 色々な装飾的パッセージで手の込んだ優美な旋律が魅力的ですね。個人的には動きのある中間部が好きです。 技術的には中間部と、前後の主部に登場する速いパッセージが難しく、以前の録音ではここでこけてしまってましたが、 さすがにこれではまずいということで、再録音しました。 これで完成度も少しマシになったのではないか、と思っています。
ノクターン第6番ト短調Op.15-3
Nocturne No.6 G minor(g moll) Op.15-3
4' 48''
2008/8/30
ショパンのノクターンの中で最もマイナーで演奏される機会の少ない曲です。 曲は主に3つの部分からなり(3部形式ではないです)、 第1部は、左手の伴奏が3拍目で休符となっていて、最後に激しく盛り上がります。ここがこの曲唯一の聴かせどころではないか と個人的には思います。第2部はヘ長調の瞑想的なコラールで宗教色を強く感じさせます。 第3部は一定音を指で保持したままそれ以外の指で和音をスラー、スタッカートで弾くところがユニークです。 この曲は流れが単調で面白みに欠けますが、ショパンのノクターンの中では技術的に最も易しい曲なので、 ショパンの曲を何か1曲という方にはおすすめしたい曲です。
ノクターン第7番嬰ハ短調Op.27-1
Nocturne No.7 C-sharp minor(cis moll) Op.27-1
4' 45''
2006/7/31
個人的にはすごく好きなノクターンです。ショパンの「月光」とでも名づけたいような曲。主部の旋律は、一聴して何ともつかみどころのない印象を 持たれるかもしれないですが、何回も聴くとハマります。 そして情熱的な中間部も主部と対照的で、聴き応えがある部分です。 自分で弾くと、もっとこの曲が好きになるかも?
ノクターン第8番変ニ長調Op.27-2
Nocturne No.8 D-flat major(Des dur) Op.27-2
5' 15''
2006/9/22
ショパンのノクターンの最高傑作の1つで、ノクターンの中では比較的人気の高い作品です。 例えようもないほど甘く美しい旋律は、細やかな装飾的パッセージに彩られて一層美しく響きます。 この曲の難所は、52小節目の48連符の前半で、ここは冗談抜きに難しかったです。 やや完成度が低い出来で終わってしまいましたが、機会があったら再度、取り上げたいと思います。
ノクターン第9番ロ長調Op.32-1
Nocturne No.9 B major(H dur) Op.32-1
4' 11''
2006/11/10
このノクターン9番はあまり人気がないようですが、技術的には非常に易しくすぐに弾けるようになるため、 ノクターン入門用の1曲としてもおすすめです。 「ノクターン」とは言いますが、この曲は平和で穏やかな曲調で、個人的には「午後の昼下がり」といったイメージの曲です。 終わり方がすごく特徴的ですが、ショパンもこの曲に何か変化を付けたかったのでしょうね。
ノクターン第10番変イ長調Op.32-2
Nocturne No.10 A-flat major(As dur) Op.32-2
5' 00''
2006/11/1
ショパンのノクターンの中では地味な存在ですが、実際に弾いてみると面白い曲です。 一聴して平凡そうに聴こえる楽想の中に表現すべきことが色々盛り込まれていて、 ルバートや間の取り方など、この1曲から学ぶものは多いと思います。 そして技術的課題は、中間部の装飾音攻撃(?)です。これでもか、と装飾音が続きますが、 普通に弾いていると、音が鳴らない箇所があまりに多くて困りました。 しかし、このプラルトリラーの運指を一見自然そうな'343'から少々窮屈な'353'に変えると弾きやすくなり、これは新たな発見でした。 これからこの曲を弾こうとしている皆さんもよかったら是非試してみてください。
ノクターン第13番ハ短調Op.48-1
Nocturne No.13 C minor(c moll) Op.48-1
5' 51''
2008/1/1
このノクターン13番は、ショパンのノクターンの最高傑作の1つと言われています。 冒頭の主部では憂鬱な旋律が淡々と流れていきますが、中間部ではハ長調のアルペジオ連続部を経て、 旋律の間に速いオクターブ連打をはさみながら次第に盛り上がっていきます。 主部が戻った後は、3連符の音型に変わり、魅力的な旋律に手の込んだ和声が施されていて、 この曲一番の聴きどころと個人的には思っています。難易度もショパンのノクターン中最高レベルで、 完璧に演奏するのが非常に難しい難曲です。その分、演奏効果の極めて高いノクターンでもあります。
ノクターン第14番嬰ヘ短調Op.48-2
Nocturne No.14 F-sharp minor(fis moll) Op.48-2
6' 56''
2009/4/5
味わい深いノクターンですが、他のノクターンと比べて華やかさがなくて地味であるためか、 やや人気が低いようです。主部の嬰ヘ短調の旋律は、右手で旋律、左手で伴奏というように明確に分かれている上に それぞれほとんど和音が登場しないため、響きがシンプルですが、それだけに音価、音量のごまかしがきかず、 繊細なタッチとコントロールが必要とされます。中間部は変ニ長調に転じ、拍子も4分の3拍子に転じますが、 華やかさがなく地味で間合いを図るような楽句が続きます。その後、主部は短く再現され、最後は同名調である 嬰ヘ長調に転じて静かに曲を締めくくります。この曲はノクターンの中でも難易度的に易しく、 気軽に取り組むことができる曲です。
ノクターン第15番ヘ短調Op.55-1
Nocturne No.15 F minor(f moll) Op.55-1
5' 12''
2006/11/11
このノクターンは、実際に弾いてみて初めて本当の良さに気付くといった類の曲ではないかと思います。 出だしから中間部に入るまでは単調な楽想ですが、弾いていると表現すべきものが見えてきて、結構面白いです。 でも、やはりこの曲の聴きどころはドラマチックな中間部と、主部の再現された後の右手の美しい3連符 ではないか、と思います。これはつくづく地味にいい曲だと思います。
ノクターン第16番変ホ長調Op.55-2
Nocturne No.16 E-flat major(Es dur) Op.55-2
4' 58''
2008/5/25
ショパンのノクターンは美しい旋律の宝庫ですが、その中でもこの曲の旋律はひときわ甘く美しくロマンティックで 魅力的だと思います。僕自身、ショパンのノクターンの中でも特にお気に入りの1曲です。 いきなり冒頭から流麗な旋律が流れるのを聴いて、一瞬にしてこの曲に心を奪われた遠い昔のことを思い出して、 少しでもこの曲の魅力を皆さんに伝えられたら、と思いながら弾きました。この曲は、華やかさはないものの、 トリルや装飾音、装飾的パッセージ、多連符など、旋律を彩るために様々な小技が使われていて、 これらをきれいに弾くのはかなり洗練されたテクニックが必要になると思っています。 その意味で、技術的には結構難しい曲ではないかと思います。
ノクターン第17番ロ長調Op.62-1
Nocturne No.17 B major(H dur) Op.62-1
6' 10''
2006/8/3
ショパンの晩年の内省的な作品。華やかさはないですが、感動的な旋律に心を奪われました。 何と言っても、ロ長調の主部の旋律が魅力でここを聴かせるのが課題ですが、中間部の変イ長調の何ともやるせない感じを 出すのも結構難しいです。技術的には、前半に登場する速いスケールと主部の再現部のトリルが多少厄介ですね。
ノクターン第18番ホ長調Op.62-2
Nocturne No.18 E major(E dur) Op.62-2
4' 57''
2006/8/8
ショパンの最後のノクターン。明るく、一曲を通してあまり情緒的なかげりが見られないですが、 ショパンの晩年の心境が時折現れて、はっとさせられます。 中間部はやや動きを伴い、しっかり弾くのが結構難しい部分です。 ちょっと心もとない演奏ですが、本当はすごくいい曲です。
ノクターン第19番ホ短調Op.72-1
Nocturne No.19 E minor(e moll) Op.72-1
4' 18''
2007/7/8
ショパン17歳のときの最初期の作品。この1曲をもって、21曲のノクターンの幕開けとなりました。 後期傑作3曲(16番〜18番)を聴いてきた後でこの曲を聴くと、和声的に変化や個性に乏しいと感じてしまうのは 仕方ないと思いますが、左手の伴奏に乗って、胸にぐっと迫るような哀愁に満ちた悲しげな旋律が 流れてくるのを聴くと、ショパンの「ピアノの詩人」、「メロディーメーカー」としての非凡な才能が、 少年時代から花開こうとしていたのが分かると思います。聴いていると目頭が熱くなる曲ですね。 なお、ここでのノクターンの演奏は全てパデレフスキ版を使っていますが、この曲の場合は他の版と 音の違う箇所が目立っているため、少し違和感を感じる人もいるかもしれないと思い、追記しました。
ノクターン第20番嬰ハ短調遺作
Nocturne No.20 C-sharp minor(cis moll) Op.posth
3' 22''
2006/10/3
「戦場のピアニスト」でますます人気が高まったノクターンですね。何と言っても、もの悲しい第1主題が魅力的ですね。 ショパンはこの曲をノクターンとして作ったのではなく、タイトルは、この曲のテンポ指示である、 「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」そのもので、後年、ノクターンとして組み込まれて出版された遺作です。 ノクターンとしては技術的に易しい方ですが、たびたび現れるトリルをきれいに弾くこと、 最後の35連符をきちんと弾くことなど、意外に難しい課題が多い曲です。
ノクターン第21番ハ短調遺作
Nocturne No.21 C minor(c moll) Op.posth
3' 15''
2008/1/14
ショパンのノクターンの中でも半ば「忘れられた存在」です。演奏される機会も非常に少ないのですが、 練習の負担が軽いため、気軽に取り組むことができます。他のノクターンほど重要な作品ではありませんが、 ショパン特有の哀愁を帯びた旋律が魅力的な作品です。

ワルツ〜Waltz〜

曲目演奏時間演奏者コメント
ワルツ第1番変ホ長調Op.18「華麗なる大円舞曲」
Waltz No.1 E-flat major(Es dur), Op.18
5' 17''
2009/7/12
遅まきながら、当サイト開設3年余りにして、ショパンの超有名曲「華麗なる大円舞曲」です。 この曲はショパンのワルツの中でも特に舞曲的な要素が際立った華やかな円舞曲で、 明るく溌剌としたテーマが次々と登場し、華麗に展開される構成になっています。 その中で、特に同音連打がモチーフとして頻繁に使われるため、この曲を弾く上ではある程度のピアノのアクションも 要求されるところです。僕が今弾いているピアノはアクション的に鍵盤の戻りが遅いため、 きちんと仕上げようとすると思いのほか大変でしたが、ショパンの曲の演奏を聴いていただくという 当サイトの運営趣旨を考えると絶対に避けて通ることのできない曲であることは初めから分かりつつも、 この曲の異常な弾きにくさが災いして実現しなかったという経緯があります。 まだ自分としては納得できない部分はありますが、これでようやくショパンの超有名曲が出揃いました。
ワルツ第2番変イ長調Op.34-1
Waltz No.2 A-flat major(As dur), Op.34-1
5' 13''
2008/3/29
舞曲系の華やかで明るいワルツで、第1番「華麗なる大円舞曲」のスタイルを踏襲して、その路線でさらに内容を豊かにした 華麗系ワルツの名曲です。ショパンのワルツの中で最も規模が大きく、1番、5番と並んで難易度が最も高い曲です。 曲中何回か登場する速い上昇音階、跳躍、和音の連打、コーダの速いパッセージなどが難しく、 きちんと仕上げる場合、これらが大きな課題となります。ショパンのワルツの中では、僕にとって最も古いレパートリーで、 中学生以来長年弾き続けてきた1曲ですが、弾き込みを決心して、やっと公開の運びとなりました。
ワルツ第3番イ短調Op.34-2
Waltz No.3 A minor(a moll), Op.34-2
5' 20''
2007/11/17
憂鬱なワルツですが、この曲は作曲者自身、特にお気に入りだったそうです。 技術的にはそれほど難しくはないですが、左手が旋律を受け持ったりする他、プラルトリラーが頻出するので、 これらをごまかしなくきちんと弾くのはかなり難しいと思います。この曲は単調に弾いてしまっては 面白みに欠ける演奏になってしまうということもあって、単に憂鬱に弾くのではなく、表現の振幅を付けて 聴く人を飽きさせないように工夫してみました。
ワルツ第4番ヘ長調Op.34-3
Waltz No.4 F major(F dur), Op.34-3
2' 06''
2009/7/26
快活なテンポのワルツで右手の旋回する動きは「小犬のワルツ」を彷彿とさせ、一部では「子猫のワルツ」とも 呼ばれているようです。この曲で忘れられないのは、1985年第11回ショパンコンクールの2次予選でのブーニンの名演です。 本来速いテンポの曲なのですが、ブーニンはこの曲を、それまで誰も弾いたことがないような超高速のテンポで、 軽快、楽しげに遊び心満点で弾き、聴く人に新鮮な驚きと感動を与えたことが思い出されます。 しかし、ブーニンのあの演奏が伝説的な名演という最上級の評価を得たのは、この曲をあのテンポで弾けたという事実によるものではなく、 それまで誰も試そうとしなかった個性的で独創的な解釈が聴く人を魅了したことによるものです (プロのピアニストなら誰でもブーニンと同じテンポでこの曲を弾くのは容易なはずです)。 僕にとってブーニンのあの演奏のインパクトがあまりにも強烈であったため、ここでの演奏もその影響を受けています。 そのときのブーニンの演奏はこちらで聴けます。
ワルツ第5番変イ長調Op.42
Waltz No.5 A-flat major(As dur), Op.42
3' 45''
2009/8/23
ショパンのワルツ中、2番と並んで最も難易度の高い華やかなワルツです。 具体的な構成は、序奏-A-B-C-B-D-B-E-B-A-B-経過句-コーダで、3部形式のようでそうではなく、様々なテーマが現れ、 それらを巧みにつなぎ合わせることで成り立っている独特のワルツです。 長いトリルの序奏で始まった後、4分の3拍子でありながら、右手が刻む8分音符は、各小節における第1音と第4音が旋律、 それ以外の音は内声部となり、2拍子系となります。その間、一方の左手は通常のワルツと同様に3拍子を刻むため、 結果的に複合リズム(ポリリズム、クロスリズム)となる点がユニークです(A)。 それが終わると今度ははっきりとした3拍子系に戻り、右手が8分音符の軽やかなパッセージを刻む楽句が登場します(B)。 この楽句はこの曲の中でこれ以後、間奏的な役割を持ち、このパッセージ部が登場するごとに、 その次に異なる主題が3種類登場します。1回目(C)は優美、2回目(D)は溌剌かつ華やか、 3回目(E)はハ短調で始まり少し長めで、やや憂いを帯びた上品で艶やかな旋律となっています。 最初のポリリズムの主題が再登場した後は、頻出する8分音符の軽やかなパッセージ(B)と、中間部で2回目に登場した 溌剌としたテーマ(C)を発展させることにより、演奏効果の極めて高い華麗なコーダを形成し、 終結に向けてアッチェレランド、クレッシェンドして極めて華やかに締めくくられます。
ワルツ第6番変ニ長調Op.64-1「小犬のワルツ」
Waltz No.6 D-flat major(Des dur), Op.64-1
1' 50''
2007/1/22
皆さんもご存知、「小犬のワルツ」です。恋人のジョルジュ・サンドが飼っていた小犬が自分の尻尾を追いかけて くるくる回る様を音で描写したものと言われています。技術的には、装飾音をごまかさずにきちんと指定の場所に入れること、 細かいパッセージを粒を揃えて軽快に弾くのが結構難しいです。「初ショパン」として小学生が弾くのをよく聴きますが、 きちんと弾こうとすると難しい曲ですね。
ワルツ第7番嬰ハ短調Op.64-2
Waltz No.7 C-sharp minor(cis moll), Op.64-2
3' 20''
2006/3/29
ワルツの中では人気が高い作品です。憂鬱で晩年のショパンの心境が現れた作品ですね。 主部ではワルツリズムがマズルカ化していて、哀愁が漂う旋律ですね。 3回現れる8分音符の連続部では、右手の音の粒を揃えるのが結構難しく意外に弾きにくいです。
ワルツ第8番変イ長調Op.64-3
Waltz No.8 A-flat major(As dur), Op.64-3
2' 48''
2009/5/4
ショパンのワルツは9番以降は初期〜中期に作曲され出版されなかった遺作であるため、 この第8番がショパンにとって最後のワルツです。 長調のワルツとしてはテンポは遅めで、冒頭の変イ長調の主題は快活というよりも優雅で上品で優しい曲調です。 僕は「円舞曲」というのがどのような踊りなのかは知らないのですが、パリのサロンで貴婦人たちが踊る優雅な雰囲気を 想像しながらこの曲を弾いたり聴いたりすることが多く、ここでもそういう雰囲気を感じながら弾きました。 しかしショパンはこの曲をただの「円舞曲」として終わらせず、目まぐるしい遠隔転調を多用し、曲の流れの意外性や 面白さを存分に盛り込んでいます。中間部の2拍子ががったリズムもユニークです。最後は意外な転調によって コーダに向かい、8分音符が徐々にアッチェレランドして締めくくられます。
ワルツ第9番変イ長調Op.69-1「別れのワルツ」
Waltz No.9 A-flat major(As dur), Op.69-1
4' 05''
2007/7/30
ショパンが25歳の頃、交際していたポーランド貴族の娘マリア・ヴォジンスカに贈った愛らしい抒情詩風ワルツです。 「別れ」というタイトルは、結局2人の恋が実らず、別れることになったことから付けられたものです。 結局ショパンはこの曲を恋人と自分だけの思い出の作品として生前公開せず、死後発見されて出版されたようです。 甘くロマンティックで夢見るような旋律が魅力で、ショパンの抒情詩風ワルツの名作の1つです。
ワルツ第10番ロ短調Op.69-2
Waltz No.10 B minor(h moll), Op.69-2
4' 19''
2009/7/12
ワルツの中では3番、7番と並んで深い哀愁と美しい詩情が漂う名曲で、広く親しまれているワルツの1つです。 この曲はショパンが19歳の時に作曲された作品と言われていますが、19歳の少年の作品とは、にわかには 信じがたいほど、深い哀愁に満ちた驚くべき作品です。ショパンがピアノの持つ美しい響きを生かして、聴く人に この上ない共感を呼び起こす稀有の才能を持っていたことを証明するに十分な作品ではないかと思います。 標準的な弾き方は、ここでの僕の弾き方よりもテンポが多少速めで抑揚を大きくつける弾き方のようですが、 昔からこのような弾き方で定着しています。
ワルツ第11番変ト長調Op.70-1
Waltz No.11 G-flat major(Ges dur), Op.70-1
1' 53''
2007/7/9
ショパンのワルツの中ではあまり人気がない曲ですが、個人的には好きな1曲です。 特に中間部には思い入れがあって、この部分を弾きたいがために、前後の部分も抱き合わせで練習したようなものです。 前後の主部は跳躍が多くて、気を抜くとミスタッチの連続になってしまう、かなり厄介な部分です。 この演奏も即席仕上げのため練習不足で、けっこうミスってます(苦笑)細かいところは目をつぶって(耳をふさいで) 聴いて下さいm(__)m
ワルツ第12番ヘ短調Op.70-2
Waltz No.12 F minor(f moll), Op.70-2
3' 25''
2008/6/8
ショパンの作品番号付きのワルツの中ではおそらく一番人気が低い曲ではないかと思いますが、 華やかさはないものの、抒情的で優雅な雰囲気の小品です。難易度的にも、1番から14番のワルツの中では、 技術的に最も易しい曲です。多少弾きにくい部分もありますが、ワルツ入門用の1曲として 皆さんにもおすすめしたい1曲です。
ワルツ第13番変ニ長調Op.70-3
Waltz No.13 D-flat major(Des dur), Op.70-3
2' 46''
2006/12/27
ショパンが祖国ポーランドを出国する直前、片想いをしていたソプラノ歌手・コンスタンツィア・グワドコフスカを思いながら 書かれたと言われる抒情詩的で優雅なワルツです。技術的な課題は主部に集中していて、冒頭の主題で旋律と他の声部とを 弾き分けることと、プラルトリラーをきちんと入れるのが課題です。易しく聴こえますが、 きちんと弾こうとするとかなりの難易度になります。
ワルツ第14番ホ短調遺作
Waltz No.14 E minor(e moll), Op.posth
2' 52''
2006/10/3
これも人気の高いワルツですね。短調ながら急速のテンポのワルツで、数多くの跳躍がこの曲の難易度を著しく上げています。 さらに、連打、プラルトリラーなどをきちんと処理するのも意外に難しく、演奏者にとっては嫌な箇所が多いです。 この曲は、何と言っても演奏効果の高いホ短調の主部が魅力ですが、中間部のホ長調の甘美な旋律も結構好きです。 少々ミスがありますが、とりあえずこの演奏を一旦アップしておきます。
ワルツ第15番ホ長調遺作
Waltz No.15 E major(E dur), Op.posth
1' 58''
2009/7/26
ショパンのワルツ15番以降は1番〜14番に比べて演奏される機会が極めて少なくなります。 このワルツ15番は、規模も小さく技術的にも極めて易しく書かれているため、ショパン入門用としてもおすすめの1曲です。 構成はABA-C-ABAの3部形式で、Aはホ長調、Bは嬰ト短調、Cはイ長調と変化していますが、それぞれの部分の中では 転調がなく、楽想の豊かさや変化に乏しいとも言えますが、逆に言えばそれだけ分かりやすく取り組みやすい曲とも言えます。
ワルツ第16番変イ長調遺作
Waltz No.16 A-flat major(As dur), Op.posth
2' 04''
2009/10/24
この曲はショパンのワルツの中では唯一、8分の3拍子となっています(それ以外は全て4分の3拍子です)。 このワルツ16番は常動曲(無窮動曲)の一種で、右手が16分音符で絶え間なく動きます。 構成的には15番と非常に似ていて、AA'(AA')BA'-C-AA'BA'と、短いトリオCを含む3部形式で書かれています。 Aは変イ長調、Bはヘ短調、Cは変ニ長調で、これも各部分内では転調が全くなく、従って変化に乏しいと言えます。 しかし、動きのある曲なので、比較的印象に残りやすいのではないかと思います。
ワルツ第17番変ホ長調遺作
Waltz No.17 E-flat major(Es dur), Op.posth
2' 48''
2009/10/24
この曲はワルツとしては唯一、ロンド形式で書かれているユニークな曲です。 構成はAABBACCADDAEAというように、軸となるテーマAを毎回挟みながら、異なった楽想B,C,D,Eが登場するという、 分かりやすいロンド形式です。曲の調性も、テーマCでハ短調が登場する以外は、変ホ長調で全く転調することがないです。 ワルツ15番以降18番までは、転調の技法を忘れてしまったかのような奇異な印象を与えますが、 ショパンは、おそらくそれを意図して作曲したことはほぼ間違いないというのが個人的見解です。
ワルツ第18番変ホ長調遺作
Waltz No.18 E-flat major(Es dur), Op.posth
2' 06''
2006/12/15
この曲は、譜面には「ソステヌート」としか記されていないため、ワルツに分類するかどうか、意見が分かれているようですが、 現在は、「ソステヌートワルツ」または「ワルツ18番」として定着しているようです。 ほろりとするようなロマンティックな旋律が魅力的ですが、ショパンの曲としては、プレリュード7番とともに 最も易しい曲です。
ワルツ第19番イ短調遺作
Waltz No.19 A minor(a moll), Op.posth
2' 06''
2006/12/14
マイナーな遺作のワルツです。悲しい旋律が心にしみる曲ですね。弾いていて泣けてくる曲です。 この曲は演奏が非常に易しいため、ワルツ入門、初ショパンの曲としてもおすすめです。

マズルカ〜Mazurka〜

曲目演奏時間演奏者コメント
マズルカ第1番嬰へ短調Op.6-1
Mazurka No.1 F-sharp minor(fis moll), Op.6-1
2' 45''
2006/5/23
ショパンの作品番号付きの最初のマズルカとしては、なかなかの佳作ですね。 中間部の装飾音符連続部は右手の各指の独立性が試される 意外な難所で、左手の跳躍をケアしながらマズルカリズムを表出するのが結構厄介だったりします。 この演奏は、まだこなれていないですね。ほとんどワンテイクで済ませてしまったので、 再度取り上げて差し替える予定です。
マズルカ第2番嬰ハ短調Op.6-2
Mazurka No.2 C-sharp minor(cis moll), Op.6-2
2' 43''
2008/8/31
単純で素朴で規模の小さいマズルカです(楽譜で2ページ)。繰り返しがあるため演奏時間的には中規模ですが、 使われている素材(楽句)は少なく、やや魅力に欠けるような印象もあります。 技術的にも非常に易しく、マズルカの入門用という意味ではおすすめしたいマズルカです。
マズルカ第3番ホ長調Op.6-3
Mazurka No.3 E major(E dur), Op.6-3
2' 01''
2008/9/7
快活で陽気な農民の舞曲といった趣の素朴なマズルカです。 アクセントも3拍目に来る小節や、2拍単位でアクセントが繰り返される部分も多く、 何となくマズルカの本場ポーランドの土の臭いを感じさせる曲調です。 技術的には右手の和音の連打や重音進行など、やや弾きにくく感じる部分はありますが、 マズルカとしても、全体としては易しい部類に属する曲です。 あまり魅力ある曲調とは言えないかもしれませんが、マズルカ独特のリズムや和声進行を楽しめる曲です。
マズルカ第4番変ホ短調Op.6-4
Mazurka No.4 E-flat minor(es moll), Op.6-4
0' 47''
2008/9/7
非常に短く、あっという間に終わってしまう曲で、演奏時間は短いプレリュード並みです。 第一印象としては、ぼんやりしていてつかみどころのない曲と感じる人が大半だと思いますが、 実際その通りだと思います。曲の初めから終わりまで、孤独な独り言が続くイメージですね。 その中で2拍目や3拍目が頻繁に強調されるところがこの曲の唯一面白いところと言えそうです。
マズルカ第5番変ロ長調Op.7-1
Mazurka No.5 B-flat major(B dur), Op.7-1
2' 13''
2006/5/23
マズルカの中では一番有名ですね。皆さんもどこかで聴いたことがあるのでは? 溌剌とした軽快で明るい曲ですね。「有名曲」イコール「名曲」とは限らないのは皆さんもご存知の通りで、 マズルカにはもっと素晴らしい曲がたくさんあります。
マズルカ第6番イ短調Op.7-2
Mazurka No.6 A minor(a moll), Op.7-2
3' 42''
2008/9/13
3部形式のマズルカです。主部はイ短調で、憂鬱で孤独な感じの右手の主題に対し、左手は基本的に1拍目が休符となっているのが 特徴的ですが、やや単純で面白みに欠けるような気もします。中間部はイ長調に転調し(途中、嬰へ短調も現れる)、 ここはリズム的に難しいだけでなく、右手の3連符の連打がやや弾きにくく感じました。 この曲はマズルカとしては演奏時間的にやや長めですが、これは繰り返し記号やダ・カーポ(D.C.)とフィーネ(Fine)が使われているためで、 実際は楽譜で2ページの小規模な曲です。
マズルカ第7番ヘ短調Op.7-3
Mazurka No.7 F minor(f moll), Op.7-3
2' 38''
2008/7/13
このマズルカは、Op.7の5曲のマズルカの中で、位置的にも存在的にも中心的な曲で、 最も芸術性の高いマズルカだと思います。序奏付きというのは珍しくないですが、ヘ短調の民族色の強い主題の他に、 中間部では、様々なパーツ、楽句が登場し、起伏や感興に富んでいて、多くの転調が現れ、マズルカにしては構成が複雑なため、 高度な音楽性を必要とする部分が多い曲です。 個人的には初期のマズルカの中では、傑作の部類に入る曲だと思います。
マズルカ第8番変イ長調Op.7-4
Mazurka No.8 A-flat major(As dur), Op.7-4
1' 10''
2008/9/13
この曲も、マズルカの中でも特に小規模な曲の1つです。 3部形式の主部は変イ長調で、不安定な左手の伴奏音型と軽快な楽句が特徴的です。 曲が短いながらユニークな中間部が挿入されていて、ここは変イ長調のテーマが示された後、 可憐なスタッカートでこのテーマが即興的に変奏されます。その後、いきなり何の脈絡もなく、 イ長調のエピソードが挿入されるところもユニークです。
マズルカ第9番ハ長調Op.7-5
Mazurka No.9 C major(C dur), Op.7-5
0' 39''
2008/9/13
プレリュード並みの演奏時間の曲であっという間に終わってしまう、軽快で短い曲です。 序奏と終結とでGオクターブの連打による4小節の同じ楽句が使われているのも特徴的で、 メインの部分は前半はハ長調、後半はト長調で、同じものが繰り返されます。 マズルカの中では最も重要度の低い曲の1つと思いますが、ユニークな曲ではあると思います。
マズルカ第10番変ロ長調Op.17-1
Mazurka No.10 B-flat major(B dur), Op.17-1
2' 18''
2007/8/28
「華麗なるマズルカ」と名付けたくなるような厚い和音が連続するマズルカです。 右手のプラルトリラーなど、意外に弾きにくい部分がありますが、そこをクリアできれば、流れが単調な分、 ものにしやすく、仕上げやすい曲だと思います。妥協の産物ですが、1日仕上げということでお許しを…。
マズルカ第11番ホ短調Op.17-2
Mazurka No.11 E minor(e moll), Op.17-2
2' 01''
2006/12/9
憂鬱なマズルカです。主部のホ短調の憂鬱な気分を引きずったまま、中間部に入りますが、 ここはハ長調のであるにもかかわらず、鬱々とした楽想で、Durに哀愁を込めることができるショパンの才能を 感じさせますね。中間部後半は、低音をG音に保ったまま、1音毎に和声を変えるという、いわば「遊び」、「実験」 をやっていて、憂鬱の中に「冗談」、「遊び」を盛り込むという試みがなされているようです。
マズルカ第12番変イ長調Op.17-3
Mazurka No.12 A-Flat major(As dur), Op.17-3
4' 09''
2008/7/13
冒頭の主題は、掛留音とシンコペーションを多用してハーモニーとリズムの不安定さがユニークですが、 同じ楽句の繰り返しが多く、極めて冗長な(ある意味ナンセンスな)音楽と感じます(ショパンには失礼な言い方かも^^;)。 にもかかわらず僕がこの曲を取り上げたのは、中間部が好きだからです。この中間部は、先程の変イ長調の掛留音のホ音を 主音としたホ長調で、遠隔調でありながら主部の主題との調性的な関連付けがなされているところがユニークです。 中間部は音楽性満点のホ長調の旋律と、ロ長調の軽いレッジェーロの上昇音階の2つの題材、どちらも魅力的です。 冒頭部分を聴いて「つまらない」と思わず、是非、ここまで聴いてほしいです。
マズルカ第13番イ短調Op.17-4
Mazurka No.13 A minor(a moll), Op.17-4
4' 29''
2008/7/27
憂鬱なマズルカです。テンポが遅く音の数が少なくシンプルな譜面の曲ですが、左手の和音は小刻みかつ微妙に変化していて、 その移ろう微妙な和声が深い陰影を作る名曲です。本当にこの曲は繊細すぎて、 悪く言えば病的な印象がありますが、その特徴をどの方向に引き出すか(打ち消すか増長させるか)は 演奏者に委ねられています。ここでは、この曲の持つ憂鬱で病的な感じを目いっぱい出したかったこともあって、 遅めのテンポで1音1音にそれぞれ異なった深い陰影をつけることを強く意識して弾いています。 中間部は同名長調であるイ長調に転調し、低音のバスのA音がほとんど変化せず一定していることにより、 マズルカ本来の郷土色(土臭さ)が強調されているという印象を持ちました。 最後は、序奏に使われているのと全く同じ楽句がそのまま使われていますが(これはノクターン10番と似てますね)、 結局、イ短調の終止和音ではない和音を最後に、終了感のないまま消えるように終わります。
マズルカ第14番ト短調Op.24-1
Mazurka No.14 G minor(g moll), Op.24-1
2' 52''
2007/10/27
マイナーなマズルカの中でもかなり地味で素朴な作品です。主部はト短調の憂鬱な第1主題と、途中から現れる2拍子の混じった 変ロ長調の第2主題からなり、中間部では変ホ長調に転調して、やや盛り上がりを見せます。主部が戻ってからは 第1主題のみ再現されて静かに消えるように終わります。このマズルカは、マズルカの中でも技術的にかなり易しい部類に入ります。
マズルカ第15番ハ長調Op.24-2
Mazurka No.15 C major(C dur), Op.24-2
2' 20''
2008/9/6
素朴で愉快な農民の舞曲といった趣のリズミカルなマズルカです。3部形式で、主部はハ長調で黒鍵を全く弾かないという徹底ぶりですが、 譜面そのものは易しくても、3535〜のトリルや連打、装飾音が集中し、技術的には決して易しいとは言えない(初級レベルではない)曲です。 中間部は変ニ長調に転調して、ここでも3拍目にアクセントを付けるなどリズミカルで、マズルカ独特のリズム感がユニークです。 全体的に2拍目や3拍目、時には1拍目にアクセントを多用し、何とも不思議なリズムを持つ曲ですが、 マズルカのリズムを本能的に感じ取って表現できるかどうかが良い演奏をする上で重要なポイントになると思います。 この演奏の中で自分のやりたいことは一応やったつもりですが、本当にこれでよいのか、正直なところ自信はないです。
マズルカ第16番変イ長調Op.24-3
Mazurka No.16 A-flat major(As dur), Op.24-3
2' 10''
2008/9/6
ワルツ風の優雅なマズルカです。3部形式の主部は、バス&2つの和音からなるワルツ風の左手の伴奏の上に、 右手で単旋律を奏でるという明快で分かりやすい作りは、ワルツを彷彿とさせますが、 右手のリズムは、やはりマズルカのものですね。中間部の短いエピソード風の進行は 2拍単位となっていて、3拍子でありながら「2拍子」を意識しながら演奏することが要求されています。 技術的にはマズルカ全曲中最も易しい部類に入る曲で、優雅で親しみやすいマズルカです。
マズルカ第17番変ロ短調Op.24-4
Mazurka No.17 B-flat minor(b moll), Op.24-4
5' 00''
2008/9/7
数あるショパンのマズルカの中でも屈指の名曲です。マズルカの中では25番、32番、35番のような名曲と並ぶ最大の規模を持ち、 曲想やモチーフを豊富に盛り込んで統一することに成功した音楽性豊かなマズルカと言えます。 序奏は「はさみうち」で、上の音と下の音が半音ずつ狭まりながら主部の第1主題につながります。 第1主題は変ロ短調→変ニ長調→へ短調→変ロ短調と2小節毎に転調し不安定さがユニークですが、 この主題は登場するたびに変化します(一種の変奏)。中間部はソットヴォーチェの導入部から始まりますが、 聴きどころは強奏と弱奏が交互に繰り返される音楽性豊かな後半部です。ここは強弱だけでなく、 楽譜の指示に従いながら共感を持ってテンポを動かす必要がある部分です。 主部の再現は短く行われ、静かな長いコーダによって消え入るように終わります。
マズルカ第18番ハ短調Op.30-1
Mazurka No.18 C minor(c moll), Op.30-1
1' 38''
2008/7/13
主部は、孤独なモノローグといった趣の憂鬱な旋律が流れてきますが、実は拍の頭の音は和音を取るために1指が 「占領」されていることが多いので、他の指、特に3指〜5指を使いながら、装飾音付きの旋律をきれいに均質に 弾かなければならず、「慣れ」を必要とします。技術的には易しいですが、3指〜5指が十分に強く独立していることが 前提となります。中間部は変ホ長調に転調して、幾分明るい情緒を見せます。 短いながら、芸術性の高い見事な小品だと思います。
マズルカ第19番ロ短調Op.30-2
Mazurka No.19 B minor(h moll), Op.30-2
1' 19''
2008/7/27
短い曲ですが、曲想の変化に富んだユニークで面白いマズルカです。 冒頭はリズミカルで、ピアノとフォルテが唐突、交互に繰り返されますが、次の部分ではピアノから始まって、 徐々にクレッシェンドして高揚していきます。同じ楽句は曲の最後にもう一度現れますが、その間に、 右手は同じ音型を繰り返しながら、左手の伴奏和音の構成音が微妙に変化し、それぞれ異なるニュアンスを持っているのが 非常にユニークです。短い中に面白い要素が盛り込まれたマズルカです。
マズルカ第20番変ニ長調Op.30-3
Mazurka No.20 D-flat major(Des dur), Op.30-3
2' 52''
2009/4/5
3部形式の中規模のマズルカで、主部は変ニ長調で始まり、その第3音を半音下げることによって同名短調(=変ニ短調でこれは 嬰ハ短調と同等)に転調するだけでなく、その際にffからppへと強弱のコントラストを極端に付けるところがユニークです。 これはマズルカの名曲である17番Op.24-4の中間部でも使われている手法です。 しかしこの曲の中で個人的に好きなのは中間部で、目まぐるしく頻繁に転調し、それに伴ってデュナーミクも変化し、 千変万化する楽想が豊かな音楽性に支えられて自由に流れていきます。ここがこの曲の最大の魅力ではないかと思います。
マズルカ第21番嬰ハ短調Op.30-4
Mazurka No.21 C-sharp minor(cis moll), Op.30-4
3' 39''
2009/4/9
ショパンのマズルカの中でもリズムやハーモニーが独特で強い個性を持ち、特異な存在とも言えるマズルカです。 主部は、右手は基本的に3度の和音でマズルカリズムを刻みながら、その上の音に頻繁にプラルトリラーが 挿入されていて弾きにくく各指の独立性が求められますが、この部分の弾きやすさはピアノのアクションに大きく左右されます。 それに対しこの部分の左手は幅の広い分散和音の連続となっています。中間部は、前半は嬰ハ短調、嬰ト短調で 同一楽句が繰り返され、その間に長いトリルが挿入されるという構成が2回繰り返され、中間部後半はロ長調に始まり 盛り上がる楽句が2回繰り返されます。主部は省略されずに同じ長さで再現され、短いコーダで静かに締めくくられます。 このコーダに現れる、半音ずつ下降する不思議な和声進行もマズルカに特有のものとはいえ、この曲の個性と思います。
マズルカ第22番嬰ト短調Op.33-1
Mazurka No.22 G-sharp minor(gis moll), Op.33-1
1' 33''
2007/8/31
憂鬱な出だしで始まりますが、13小節目(細かく言えば12小節目第3拍)から変化が現れて、 ロマンティックな曲想に変化して聴く人を惹きつけます。1分30秒〜40秒であっという間に終わってしまう 短い小品ですが、哀愁やロマンを帯びた素敵な曲想を持ったマズルカの名曲だと思います。
マズルカ第24番ハ長調Op.33-3
Mazurka No.24 C major(C dur), Op.33-3
1' 58''
2008/9/14
長調のマズルカとしては珍しく、ゆっくりとした静かな癒し系の曲です。 両手の1指どうしが交差するため、最初はやや弾きにくく感じる人も多いと思いますが、 弾き慣れてしまえば、難易度は非常に低く、数あるマズルカの中でも最も易しいものの1つと言えます。 活発で明るい名曲である23番と、詩情豊かな名曲である25番の間に挟まれた、束の間の休息といった感じの曲です。
マズルカ第25番ロ短調Op.33-4
Mazurka No.25 B minor(h moll), Op.33-4
5' 29''
2008/9/14
数あるマズルカの中でも特に内容が豊かな名曲として、多くの人に親しまれている曲です。 やはり3部形式で書かれていて、主部はプラルトリラーを多用して美しい旋律に彩りを添えています。 主部ではほぼ同じものが2度繰り返されますが、その繰り返し単位の最後には跳躍が連続する部分があり、 演奏効果を上げています。中間部はロ長調に転調し、ここはこの曲の中で最も詩情豊かで美しい部分だと思います。 頻繁に転調するため、それを魅力的に聴かせるためにはテンポルバートが必要になります。 中間部後半では、跳躍が必要になる部分が登場し、ここもやや難易度が高い部分です。 この曲はショパンのマズルカの中では難易度がやや高めで長い曲ですが、 是非、皆さんにも取り組んでいただきたい、おすすめの1曲です。
マズルカ第26番嬰ハ短調Op.41-1
Mazurka No.26 C-sharp minor(cis moll), Op.41-1
3' 26''
2006/12/9
作品41の4つのマズルカはショパンの逃避行先のマジョルカ島で書かれたと言われています。 このOp.41-1のマズルカは、主部の出だしが少し変わった音階で、嬰ハ短調にもかかわらず、D音に♯が付かないため、 不思議な印象を与えます。もう1つの主題は同名長調に転調してリズミカルです。 そして、中間部の嬰ヘ長調の極上の旋律…この部分が好きなため、あえてこの曲を取り上げたのですが、 主部が再現された後の6度の中のプラルトリラー攻撃が結構きつく、結局ここはピアノのアクションのせいにして、 妥協して逃げてしまいました。即席仕上げになってしまいましたが、もっときちんと練習しないとダメですね。 なお、この曲は、マズルカの中では、33番、38番と並んで特に難しい曲ではないか、と思います。
マズルカ第27番ホ短調Op.41-2
Mazurka No.27 E minor(e moll), Op.41-2
2' 13''
2006/12/9
憂鬱な曲調で、マジョルカ島に降る雨を僧院の中から眺めているような沈鬱な雰囲気が漂っています。 この憂鬱な旋律とハーモニーは、一種独特のもので、特にロ長調に転調してからの和声及びその進行はかなり特異なものです。 聴けば聴くほど、何か不思議な雰囲気が漂いますね。この曲は技術的には非常に易しいため、取り組みやすいと思います。
マズルカ第29番変イ長調Op.41-4
Mazurka No.29 A-flat major(As dur), Op.41-4
2' 18''
2007/8/31
ワルツ風で優雅な曲調のマズルカです。優雅さがより一層際立っているのは、変イ長調という調性のためだと思いますが、 技術的には、マズルカ全曲の中でも非常に易しく譜読みも易しいため、初心者の方にもおすすめしたい1曲です。 但し、優雅さを出すためには、ちょっとした表現のコツがいるようです。
マズルカ第30番ト長調Op.50-1
Mazurka No.30 G major(G dur), Op.50-1
2' 37''
2008/7/20
リズミカルで明るいマズルカですが、明るさの中にも優雅さがあり、哀愁やメランコリーなど、 豊かな楽想に彩られた内容の濃い典型的な中期のマズルカです。技術的には、右手の6度和音が連続する箇所が多く、 多少弾きにくいため、丁寧な練習が必要です。但し、マズルカの中でも技術的には難しい部類には入らないため、 気軽に取り組むことができる曲です。
マズルカ第31番変イ長調Op.50-2
Mazurka No.31 A-flat major(As dur), Op.50-2
3' 12''
2008/4/6
ロマンティックで優しく優雅な旋律が魅力的なマズルカの小品です。中間部の和音は幅が広く、短10度が届く手の大きさが必要で、 さらに連打が多少弾きにくいですが、全体的にはマズルカの中でもかなり易しい部類に入ります。 音楽的にはマズルカ独特のリズムや繊細な表現が必要とされますが、取り組みやすい曲だと思います。
マズルカ第32番嬰ハ短調Op.50-3
Mazurka No.32 C-sharp minor(cis moll), Op.50-3
5' 18''
2008/3/29
マズルカの中では規模が大きく、名曲としての評価が定まっています。主部は、遠くからかすかに聴こえてくるような音で 始まり、哀愁漂う憂鬱な旋律が心にしみる部分と、突然フォルテの和音で始まる後半部からなります。 中間部は右手で同じ音型を繰り返しながら左手の伴奏が微妙に変化することにより曲調に微妙な変化を付けているところが ユニークで面白い試みとなっています。
マズルカ第34番ハ長調Op.56-2
Mazurka No.34 C major(C dur), Op.56-2
1' 36''
2009/4/29
明朗、快活でリズミカルなマズルカです。素朴で力強く、いかにもポーランドの田舎で踊る農民の舞曲といった趣の曲です。 その原因を探ってみると、主部の左手の伴奏和音の最下音(バス)が全てC音であることが、素朴さと土着的な印象を強く受ける 最も大きな原因となっているようです。 左手の伴奏和音のタイミングも特徴的ですが、そのリズムは4小節の序奏で明らかにされています。 中間部では3種類の楽句がいずれも2回ずつ繰り返されており、いずれも印象深いものとなっています。
マズルカ第35番ハ短調Op.56-3
Mazurka No.35 C minor(c moll), Op.56-3
5' 48''
2009/4/9
ショパンのマズルカ全曲中、最大の規模を誇る充実した作品で、ショパンのマズルカの名曲の1つです。 独り言をつぶやくような出だしを聴くと惹きつけられる要素が少ないように聴こえそうですが、 実はこの曲の最大の聴きどころは、充実した中間部とコーダではないかと個人的には思います。 中間部では目まぐるしく、予測できないような遠隔転調や移調を多用し、豊かな楽想が次々に現れ、その多彩さと複雑さ、喜怒哀楽を超えた 複雑で病的とも言える感情を呼び起こす錯綜したこの音楽は、幻想ポロネーズの前身としての意味があると考えています。 コーダも病的な美しさを放つ音楽で、肺結核に侵された青白い青年ショパンの紡ぎ出す、現実のものとは思えないピアノ音楽の 神々しい美しさに触れることのできるマズルカの名曲です。
マズルカ第36番イ短調Op.59-1
Mazurka No.36 A minor(a moll), Op.59-1
3' 42''
2006/7/24
ショパンのマズルカの中で最も好きな作品と言い切ってもよいのが、このOp.59-1です。 疑いなく、ショパンのマズルカの最高傑作の1つだと思います。哀愁に満ちた旋律で始まりますが、微妙な感情の揺れ動きの 重ね合わせの結果、物理的にかなりの振幅を持った幅広いデュナーミクとアゴーギクにまで達します。 それを違和感なく聴き手に聴かせるのが、演奏者にとって大きな課題ではないか、と思います。
マズルカ第37番変イ長調Op.59-2
Mazurka No.37 A-flat major(As dur), Op.59-2
2' 26''
2007/9/24
このマズルカも名曲の1つだと思います。充実した力強いハーモニーの中に、優雅さがあり、 明るい曲調にもかかわらず、哀愁が漂っています。マズルカではありますが、むしろワルツに近い雰囲気です。 親しみやすさと分かりやすさから、多くの人に親しまれているマズルカの1つです。 演奏はそれほど易しくないですが、是非皆さんにも取り組んでいただきたい1曲です。
マズルカ第38番嬰へ短調Op.59-3
Mazurka No.38 F-sharp minor(fis moll), Op.59-3
3' 22''
2006/10/5
これも特別にお気に入りのマズルカで、ショパンのマズルカの最高傑作の1つだと思います。 マズルカリズムを強調する弾き方をしてみましたが、演奏者自身、ポーランド本場のマズルカリズムを知らないため、 少し不自然に聴こえるかもしれないですね。それとこの曲は、マズルカ全曲の中で、技術的に一番難しいのではないでしょうか。 マズルカは大抵の曲は譜面の音をそのまま出せば、一応それらしく弾けてしまうのですが、この曲の場合、 なかなかそういうわけには行かず、ちょっと時間がかかりました。途中怪しいところもありますが、 とりあえずこの演奏で一旦打ち切りとします。再度、取り上げたときに差し替えしたいと思います。
マズルカ第39番ロ長調Op.63-1
Mazurka No.39 B major(H dur), Op.63-1
2' 08''
2009/4/5
リズミカルで溌剌とした明るいマズルカですが、その和声の中に何故か不思議な哀愁を感じさせ、 この曲がショパンの晩年の作品であることを改めて感じます。この曲は和音の連続する部分にも 4指、5指で弾くプラルトリラーが挿入されていることと、主部とその再現部とで微妙な違いがあるため、 技術的には結構弾きにくい部分が多いです。完璧に弾ききるには4指と5指の強さ、独立性を必要とする曲です。
マズルカ第40番ヘ短調Op.63-2
Mazurka No.40 F minor(f moll), Op.63-2
1' 58''
2007/10/27
寂しく孤独感漂うマズルカです。独り言のようなヘ短調の旋律が物憂く孤独に奏でられます。 右手のゆっくりした8分音符が連続するところでは、一音ごとに異なったニュアンスを持つため、 ルバートや間の取り方など、音楽的な表現が難しいと思います。マイナーなマズルカの中でも さらにマイナーで影の曲という存在ですが、味わい深い曲だと思います。
マズルカ第41番嬰ハ短調Op.63-3
Mazurka No.41 C-sharp minor(cis moll), Op.63-3
2' 16''
2006/12/18
哀愁に満ちた旋律美が魅力的なマズルカの名曲です。非常に内省的で微妙な陰影に富んだ曲で、表現が難しいと思いますが、 この曲の一番の特徴、聴きどころは、曲の最後にカノンが登場するところです。バロック時代のカノンとは違いますが、 このようなマズルカに、緻密な対位法的処理、多声音楽を登場させるところに、ショパンの斬新な試みが見て取れて 非常に興味深い作品です。
マズルカ第42番ト長調Op.67-1
Mazurka No.42 G major(G dur), Op.67-1
1' 16''
2008/7/6
素朴で不思議なマズルカリズムが濃厚に現れていて、ポーランド農民の舞曲といった趣を持つ曲です。 3拍子とはいっても、拍の間の取り方やアクセントが付く拍がワルツの場合と違っていて、リズムの取り方が難しいと思います。 この曲を聴くと、本場ポーランドでマズルカがどのように踊られるのか、何となくわかるような気がします。 この曲は装飾音が多く、マズルカの中では技術的にやや難しめの曲ですが、 半日で無理やり仕上げてしまいました。本当はもう少し速いテンポの方がこの曲の良さが生きるというのは 分かってはいたのですが…(苦笑)明らかに弾き込みが足りないですね。
マズルカ第43番ト短調Op.67-2
Mazurka No.43 G minor(g moll), Op.67-2
2' 03''
2006/12/18
ト短調と変ロ長調(この2つは平行調)の間を不安定にさまよいながら、物憂い旋律が淡々と流れていきます。 3拍目のスフォルツァンドや突然のフォルテなどがあって、このような部分では音色の変化も同時に要求されていて、 弾いていると表現の面白さを感じさせてくれる曲です。この曲は、良くも悪くも単調に弾かないで、 聴く人を退屈させず、面白く聴かせるのがポイントだと思います。
マズルカ第44番ハ長調Op.67-3
Mazurka No.44 C major(C dur), Op.67-3
1' 38''
2008/7/12
ハ長調ながら遅めのテンポで、瞑想的で素朴な曲想を持つマズルカです。 単純なテーマが単音で示された後、今度は主に6度の和音を用いてテーマが再現されますが、この6度の和音の連続の中の 上の音に入ってくるプラルトリラーが多少弾きにくいです。中間部は非常に短くエピソード風のト長調のパッセージからなります。 この曲はハ長調ということで譜読みも易しく、仕上げるのに時間がかからないので、気軽に取り組むことができる曲です。
マズルカ第45番イ短調Op.67-4
Mazurka No.45 A minor(a moll), Op.67-4
3' 04''
2006/7/26
マズルカの中では一般的な認知度、評価ともに高い作品で、優美で哀愁を帯びた旋律が心にしみます。 イ短調の主部はまさにショパンの悲しみの涙。対して中間部は同名長調(イ長調)に転調し、わずかに 明るい光が差し込んできます。 曲全体に渡ってマズルカ独特のリズムが濃厚に表れていますが、ここでは、マズルカリズムを 強調せず、遅めのテンポで哀愁漂う雰囲気を出す方向で演奏しています。 ちょっと大人しすぎたかも?
マズルカ第46番ハ長調Op.68-1
Mazurka No.46 C major(C dur), Op.68-1
1' 41''
2008/9/16
快活でリズミカル、かつ力強さも兼ね備えたマズルカです。 ハ長調の主部は、前打音、プラルトリラーの装飾音や連打など、やや弾きにくい部分があり、 マズルカとしては難易度もやや高めです。中間部はヘ長調に転調し、響きが美しい部分です。 全体的に旋律、和声ともに単純明快で、曲想的にはショパン特有の詩情には乏しい感じですが、 哀愁に満ちたマズルカをずっと聴いてきた耳には、むしろ新鮮に響く曲だと思います。
マズルカ第47番イ短調Op.68-2
Mazurka No.47 A minor(a moll), Op.68-2
2' 47''
2009/4/19
初期のシンプルなマズルカです。憂鬱なイ短調の旋律が平行調のハ長調を挟んで繰り返されますが、 ショパンの作品の典型とも言える変奏は使われず、装飾として頻繁に使われるトリルも終始一定の音型を保っています。 中間部は同名調のイ長調に転調し、主題も雰囲気も前後の主部と少し変わります。 ちなみに、この曲は僕にとってショパンのマズルカの中でも5番とともに初めに覚えた曲でした。
マズルカ第48番ヘ長調Op.68-3
Mazurka No.48 F major(F dur), Op.68-3
1' 37''
2008/9/16
この曲も快活でリズミカルなマズルカですが、Op.68-1ほどの華麗な力強さはなく、シンプルに書かれています。 但し、付点音符を含んだ6度の連続などでは、メロディーラインの表出に丁寧さと滑らかさが要求されている上に、 快活さも失わないことも必要で、これがこの曲の一番の課題ではないかと思います。 短い中間部は一応変ロ長調ですが、E音にナチュラルが付いているため音階的にはやや不思議な響きです。
マズルカ第49番ヘ短調Op.68-4
Mazurka No.49 F minor(f moll), Op.68-4
1' 54''
2006/3/31
ショパンの絶筆となった文字通り最後の作品、ショパンの白鳥の歌です。ショパンはこの曲を病床で書きましたが、 一度もピアノで音にすることができなかったそうです。 一聴すると印象の薄い曲のように思えますが、悲しみに似た感情は確かに存在しているようです。 しかし、これは悲しみを超越した悟りの境地、 諦観と捉えた方が感覚に合うようです。神々しいばかりの美しさを持った作品で、個人的にはマズルカの傑作に数えています。
マズルカ第58番変イ長調遺作
Mazurka No.58 A-flat major(As dur), Op.posth
1' 24''
2007/8/28
この曲は、ショパンの死後、ショパンの知人マリア・シマノフスカ(1831年他界)のアルバムの中から発見された遺作で、 「シマノフスカ」という副題が付いた短いマズルカです。自筆譜には1834年の日付が記されており、その年の作とされているようです。 軽いレッジェーロを使いながら、軽妙で品の良いパッセージが奏でられていく優雅な小品です。

プレリュード(前奏曲)〜Prelude〜

曲目演奏時間演奏者コメント
プレリュード第1番ハ長調Op.28-1
Prelude No.1 C major(C dur), Op.28-1
0' 38''
2007/7/11
ショパンの24の前奏曲の最初の曲です。楽譜にして1ページの非常に短い曲で、調性もハ長調のままで音型もほぼ一定ですが、 その中で♯を多用しつつハ長調の枠内で自在に音楽を操ることができるショパンの才能に改めて驚かされる曲です。 24の前奏曲は通して聴かれることが多いので、是非、皆さんにも24曲通して聴いてほしい曲です。 その中でこの曲がどのような位置づけなのかを理解すると、この曲を演奏する際、さらに内容が良くなると思います。
プレリュード第4番ホ短調Op.28-4
Prelude No.4 E minor(e moll), Op.28-4
1' 48''
2006/11/22
ショパンの葬儀の際に、オルガンで演奏されたと言われる憂鬱なプレリュードです。 左手の連打による伴奏の上に、右手が単音の旋律を奏でるという音楽からは、「雨だれの前奏曲」同様、 「雨」を連想させます。この曲は、楽譜にして1ページの短い曲で、技術的にも非常に易しいですが、 雰囲気を出すのは非常に難しいです。左手の和声が変わる毎にテンポや強弱、音色に微妙に変化をつける必要があるようです。
プレリュード第7番イ長調Op.28-7
Prelude No.7 A major(A dur), Op.28-7
0' 45''
2008/9/21
この曲は胃腸薬(この曲の「イ長調」という調性にかけたのだとか…)のテレビCMで昔から流れている曲ということで、 日本国民誰もが知っていると言っていいほどの超有名曲です。 難易度的にはショパンの曲の中でも1,2を争うほど易しい曲で、ショパン入門用の1曲としておすすめです。
プレリュード第11番ロ長調Op.28-11
Prelude No.11 B major(H dur), Op.28-11
0' 38''
2008/9/21
この曲も一瞬で終わってしまうプレリュードですが、軽妙で上品な響きで詩情豊かな曲調が魅力的な1曲です。 この短いシンプルな1曲にも音楽性豊かな旋律とハーモニーに溢れていて、 ショパンの才能に改めて驚かされます。個人的には好きな曲です。
プレリュード第13番嬰ヘ長調Op.28-13
Prelude No.13 F-sharp major(Fis dur), Op.28-13
2' 43''
2006/12/15
ノクターン風の甘美でロマンティックなプレリュードで、個人的に好きなプレリュードの5本指に入る曲です。 揺れ動く海の波を思わせる左手の伴奏に乗って、和音を基調とした右手の旋律が美しく歌われる曲で、 何となくマジョルカ島への希望に満ちた船旅を連想させる曲調と個人的には思います。 それにしても、本当に美しい響きで、何度聴いてもいい曲だなぁ…とため息が出るほどです。
プレリュード第15番変ニ長調Op.28-15
「雨だれの前奏曲」

Prelude No.15 D-flat major(Des dur), Op.28-15 'Rain drop'
4' 52''
2006/5/26
前奏曲の中では一番有名な曲ではないかと思いますが、実はあまり人気がない曲のようですね。 恋人のジョルジュ・サンドとともに逃避行したスペイン沖のマジョルカ島で作曲されたとされています。 その時期は雨ばかり降っていたようで、暗い僧院の中で憂鬱に外の雨を眺めながらピアノに向かっているうちに、 このような素晴らしい曲想を思いついたことは想像に難くないですね。 特に左手の変イ音の連続が雨の滴の落下をイメージさせますし、右手の旋律も潤いに満ちていて、 音によってここまで雨の風景を描写できるショパンの才能にも驚かされます。
プレリュード第17番変イ長調Op.28-17
Prelude No.17 A-flat major(As dur), Op.28-17
3' 07''
2008/9/21
プレリュードの中でも特に音楽性豊かな名曲で、個人的には特に好きなプレリュードです。 曲の中ほどは多様で意外な転調と臨時記号の嵐となっていて感興豊かな音楽ですが、 和声の変化は複雑多様で、これらを微妙なルバートと強弱変化によって表現する必要があり、 かなり高度な音楽性が必要になる部分だと思います。 技術的には、左右両手の1指が頻繁に重なり合う(交差する)ためにやや弾きにくく、決して易しい曲ではないです。 僕の演奏がこの曲の本当の良さを引き出せているかどうかは分からないですけど、この曲、本当にいい曲ですよ。
プレリュード第24番ニ短調Op.28-24
Prelude No.24 D minor(d moll), Op.28-24
2' 32''
2013/9/23
ショパンの24の前奏曲の最後を飾るにふさわしい壮大な難曲です。 これは偶然だと思うのですが、ショパンの前奏曲は8の倍数(8番、16番、24番)が エチュード並みの三大難曲プレリュードとも言われていて、それぞれ異質の難しさです。 この24番はまず左手の伴奏音型が普通の手の大きさの人にとって届かない幅の広がりがあり、 正確な跳躍を連続させなければならない点がまず大きな難関となります。 しかも跳躍の幅は一定せず、時に13度の跳躍が要求されます。 コツとしては第2指あるいは第3指を所定の音を弾いた後も、その位置を保ち、 それを支点にして尺を取るように最後の第1指の音を取るような動きをすると跳躍の正確さが上がります。 しかもその跳躍をこなしながら、右手で急速の上昇音階、アルペジオ、下降アルペジオ、 あるいは最後の方に出てくる3度の下降半音階パッセージを弾かなければならない点がこの曲の最大の難しさです。 左手単独、右手単独でそれぞれ弾けても、両手を合わせると左手が慌ただしく動く中、右手のこれらの速いパッセージを弾くのは また別の難しさがあり、これはもう何度も弾いて体で覚えるより仕方のないところです。 この曲の終わり方も特殊で、最後は最も低い二音を3回強打して終わります。 穏やかに始まった24の前奏曲はこうして劇的な幕切れとなります。
プレリュード第25番嬰ハ短調Op.45
Prelude No.25 C-sharp minor(cis moll), Op.45
3' 55''
2006/5/26
ショパンの24の前奏曲からは外れてしまうため、演奏される機会の少ないマイナーな曲ですが、 個人的には、前奏曲の中では特にお気に入りの1曲です。 調性が不安定で目まぐるしく転調しますが、転調の手法が斬新で既にロマン派の枠組みを超えていて 最初に聴くとショパンの曲とは思えないという人も多いのではないかと思います。 調性だけでなく基本的な和声も斬新で、既に印象派の手法を先取りしたかのような印象も持ちます。 この世のものとは思えない極上の美しさを持つ和声に浸ることができるショパンの隠れた名曲の1つです。
プレリュード第26番変イ長調遺作
Prelude No.26 A-flat major(As dur), Op.posth
0' 43''
2008/8/10
この曲もショパンの24の前奏曲から外れていて、25番に比べてもはるかにマイナーな曲で、 演奏される機会は皆無に等しい曲です。曲は40秒程度で終わってしまう非常に短い曲で、 曲の初めから終わりまで左右両手ともに16分音符が絶え間なく続く常動曲(無窮動曲)ですが、 この1曲の中にもクライマックスがあって、しっかりと聴きどころが作られています。

エチュード(練習曲)〜Etude〜

曲目演奏時間演奏者コメント
エチュードホ長調Op.10-3「別れの曲」
Etude No.3 E major(E dur), Op.10-3
3' 52''
2007/9/16
遅くなりましたが、ショパンの超名曲「別れの曲」です。この曲がエチュード(練習曲)だという事実を 知らない人も多いと思いますが、れっきとした練習曲です。この曲は、主部(前後の部分)ではメロディーラインと他の声部を きれいに弾き分けて歌うことが課題ですが、何と言っても課題は中間部に集中しています。 中間部最初の6度の連続からしてクセモノですが、左右ともに4度の連続で乖離進行したり、クライマックスには10度を つかめる手の大きさがないとかなり苦戦する6度の連続部があって、かなり難易度の高い曲です。 中間部をものにするには相当の技術が必要になりますが、そこは無理でも、 前後のホ長調の美しい旋律を弾いて陶酔するのも、この曲の楽しみ方だと思います。
エチュード変ト長調Op.10-5「黒鍵」
Etude No.5 G-flat major(Ges dur), Op.10-5 'Black key'
1' 43''
2007/9/23
「黒鍵のエチュード」として知られる有名曲です。右手は1つの音を除き、後は最初から最後まで黒鍵だけを弾き続けます。 ショパンはこの曲について、「右手が黒鍵ばかりを弾き続ける曲だということを知らないと、何の面白みもない曲」と 言っていたそうですが、確かにエチュードの他の曲に比べると、音楽的にやや物足りないものがあるかもしれない、 とも感じます。なお、この曲はエチュードとしては難しい部類には入らないものの、 ごまかしなくきちんと弾こうとするとかなりの難易度になると思います。 もっと軽いアクションのピアノだったら、もう少しマシな演奏ができるのに…というのは独り言です(笑)
エチュード変ホ短調Op.10-6
Etude No.6 E-flat minor(Es moll), Op.10-6
3' 04''
2009/9/22
ショパンの作品10,25のエチュード全24曲の中で、技術的に最も易しい(と思う)曲です。 しかし曲を聴けば分かると思いますが、音楽的には決して易しくない曲で、ただ単に暗いというだけでなく 独特の和声と雰囲気を持ち、不安定で曖昧な調性の間をゆらゆらとさまようところなど、聴く人に奇異な印象を与える曲です。 構成は分かりやすい3部形式で、主部は右手の旋律vs左手の伴奏という明快な構造でありながら、 旋律がほぼ小節ごとに保持され、各小節の終わりのみに動きを持つ というパターンで、小節の終わりに動く部分でややテンポを落として「ため」を作ることが、 単調な流れになるのを避けるうえで重要なポイントとなります。但しこれをあまり意識してやりすぎると「嫌味」になります。 中間部ではゆっくりした16分音符を刻む役目が右手に移り、右手は5指で旋律を、それ以外の指で内声の16分音符を刻み、 左手はバスを支えるというパターンになります。右手の5指の旋律が他の音に埋もれてしまわないように浮き立たせながら、 不安定な調性の間をさまよう、曖昧で不思議な雰囲気を醸し出すのが課題になります。 主部が再現された後は、そのまま変ホ短調で静かに締めくくられそうな流れで消え入りますが、 最後の音は、当然G♭だろうとの予想を覆し、ナチュラルを付けて半音あげることにより、この一音のみの影響によって この曲は変ホ長調での終結となります(このようなところはノクターン9番の終わり方と相通じるものがありますね)。
エチュードヘ短調Op.10-9
Etude No.9 F minor(f moll), Op.10-9
2' 18''
2009/9/22
左手の指を広げることと右手の表現力を目的とした練習曲で、ショパンのエチュードの中では特に易しい部類に入ります。 左手は同じような音型を繰り返しますが、カバーする音の範囲が広いため、指が短いと厄介な曲ではないかと思います。 (当然のことながら、手が小さいのと指が短いのは別の問題で、この曲の場合は特に指の長さが問題となります。) 左手の伴奏部の運指は531313を基本としますが、ここでの'1313'に当たる部分が9度の広がりを持つ箇所では、 13指で9度が届かない場合には'1414'に変更し、また'53'に相当する部分が6度の広がりを持つ箇所では'52'に変更するなど、 軸となる3指を2指や4指に素早く交代する技術が必要になります。指が短い人ほどこのようなことに気を使う必要がありますが、 いずれにしても手の柔軟性が十分にあればあまり難しくない曲です。右手は旋律を受け持ちますが、左手の伴奏の推進力によって 自然に導かれるようなイメージで右手の旋律を歌えばよい演奏になると思います。右手の5連符のオクターブの強音と 単音の弱音のコントラストもユニークですが、これも楽譜の指示を忠実に守り、そこにテンポの「ため」を入れると良い演奏になります。
エチュード変ホ長調Op.10-11
Etude No.11 E-flat major(Es dur), Op.10-11
2' 35''
2009/8/23
初めから終わりまで左右両手のアルペジオが延々と続くユニークな練習曲です。 パラン、パランというアルペジオは、あたかもハープを連想させるものがあり、 エオリアンハープというサブタイトルは、エチュードOp.25-1よりも、むしろこの曲の方にこそふさわしいとすら思えるほどです。 このアルペジオの多くは1オクターブ以上、場合によっては13度の広がりを持つ幅の広い分散和音で、 普通の手の大きさの人にとって、その多くは一度に抑えることのできない広がりを持ちます。 つまり、手を柔軟に保った上で手首の柔軟な回転を利用して指の広がりを調節しながら 下から上へと順番に的確に打鍵していくことになりますが、このような理由から、 奏法上最もミスタッチをしやすい音はやはり最上音です。ところが多くの場合、その最上音が旋律を受け持つ 最も重要な音となる点がこの曲の厄介なところで、美しい旋律が、外しやすい音の連続によって成り立っているため、 綱渡り的な要素が多分にあります。 1つ1つの和音ごとにアルペジオの構成音が目まぐるしく変わるため、 その都度、指の広がりを調節して自分の覚えた位置感覚を頼りに的確に打鍵するのがこの曲の課題です。 しかし、一度、手になじんでしまえば案外楽に弾けてしまうことに加え、特別な指の運動神経を必要としない曲であるため、 ショパンのエチュードの中ではかなり易しい部類に入ります。 アルペジオが広い範囲にまたがるため、手の小さい人、指の短い人ほど難易度が高く感じる曲だと思います。
エチュードハ短調Op.10-12「革命」
Etude No.12 C minor(c moll), Op.10-12 'Revolutionary'
2' 34''
2006/12/25
「革命のエチュード」として知られる曲で、ショパンのエチュード(練習曲)の中では、「別れの曲」とともに、 最も有名な曲の1つです。速い左手の怒涛のアルペジオの上で、右手が怒りのオクターブを叩きつける曲で、 ショパンの曲としては、かなり激しい曲です。ショパンが祖国ポーランドを離れてパリへ向かう旅の途上で、 祖国ポーランドを支配するロシアへの反乱(革命)が失敗に終わり、再びロシアに制圧されたという知らせを聞き、 激しく激怒して、ピアノに向かって怒りを叩きつけるように弾いたのがこの曲の作曲の動機と言われています。 激しい曲調とは裏腹に、エチュードとしてはそれほど難しい部類には入らないのですが、 左手の速い動きをごまかしなく弾くのはかなり難しいと思います。
エチュード変イ長調Op.25-1「エオリアンハープ」
Etude No.13 A-flat major(As dur), Op.25-1
2' 16''
2008/10/19
ショパンのエチュードの中では人気の高い曲で、「エオリアンハープ」(「牧童」とも)というサブタイトルで 親しまれています。非常にユニークな曲で、1拍の中にある6連符のうち右手の拍の頭の音だけが旋律で、 残りの分散アルペジオは基本的には全てその旋律を支える伴奏としての役割に徹しています。練習曲としての課題もまさにそこにあり、 ハープで奏でられるような細かい伴奏は大きな1つの波として均質なタッチで滑らかに弾き、その上で旋律のみが その伴奏から美しく浮かび上がって聴こえてくるように弾くことが求められています。音型自体は終始一定していて 一種の常動曲とも言えますが、拍ごとに各指の位置関係や広がりが変化します。冒頭を弾いてみただけでは 「この調子で最後まで続くなら難しくない」と感じる人も多いと思いますが、途中に弾きにくい部分が出てくるので注意が必要です。 この曲は音楽的にも陰影、起伏に富んだ素晴らしい内容で、美しくロマンティックな旋律がわずかに憂いを帯びた 雄大なハーモニーに支えられて感動的に流れてきます。僕自身もこの曲は特にお気に入りのエチュードの1つです。
エチュードヘ短調Op.25-2
Etude No.14 F minor(f moll), Op.25-2
1' 43''
2008/10/13
ショパンのエチュードとしては目立たず地味な存在ですが、味わい深い曲で指のための良い練習にもなる曲です。 右手が一瞬も途切れることなく3連符で終始狭い音域を駆け巡る曲ですが、そのパッセージのパーツは複雑で、 音階、トリルを含みながら、不規則な動きが多く現れます。これらを全てもつれずに弾き切るには 右手の各指に、完成された高度な独立性が求められ、上手く弾けない場合、運指の考察も必要になることも多いと思います。 このような理由で、易しそうに聴こえてもそれなりの難易度になりますが、やはりエチュードの中では易しい部類です。
エチュード嬰ハ短調Op.25-7
Etude No.19 C-sharp minor(cis moll), Op.25-7
4' 57''
2009/5/31
この曲は「エチュード」の中の1曲ではありますが、速度表示は「レント」と非常にゆっくりしたテンポの情緒豊かな曲で、 ノクターンに分類した方がよいとさえ思える曲です。 この曲は右手、左手の音型や役割がやや特殊で、右手のゆっくりした連打の伴奏に伴って、 左手が主旋律を歌う形式で、雨音のする外を眺めながら、ため息混じりの男声の孤独なつぶやきを聴くかのようです。 このようなところは、プレリュード6番ロ短調を彷彿とさせます。 やや慣れない人は戸惑うことも多いのではないかと思いますが、技術的にはショパンのエチュードの中では特に易しい部類です。 途中、左手に速いパッセージが現れますが、一番速い部分はほとんど規則的なスケールなので難しくはないです。
エチュード変ニ長調Op.25-8
Etude No.20 D-flat major(Des dur), Op.25-8
1' 13''
2006/12/22
ショパンのエチュードの中でも指折りの難曲として知られる6度の練習曲に挑戦してみました。 右手は絶え間なく6度で動き回る上に、左手も激しく動き、しかもかなり大きな跳躍があって、1分の間に 難しさがぎゅっと凝縮されています。これを弾いていると、まるで拷問にかけられるような気分です。 ちょっと疲れてきたので、この辺で一度アップしてみます。もっと弾き込めば、完成度、テンポともに 上がりそうな感触はあるので、これを暫定アップとして、引き続き練習を頑張ってみようと思います。 もしよかったら、皆さんも是非、この曲に挑戦してみてください。
エチュードハ短調Op.25-12「大洋」
Etude No.24 C minor(c moll), Op.25-12
2' 47''
2008/11/9
両手がアルペジオと素早いポジション移動で鍵盤を目まぐるしく上下に駆け巡る動きをしますが、 その上下動から生まれる壮大な響きが大海原の波のうねりを連想させることから、 「大洋」というタイトルで知られている曲です。演奏時間的には決して長い曲ではありませんが、 響きが壮大で華やかなため、スケールの大きさを感じさせる曲です。 技術的には、両手ともワンポジションで弾くアルペジオはほとんどがオクターブ以内であるため、 それほど手に大きな緊張を強いる箇所は多くないです(手の大きさはあまり必要ではないです)が、 両手とも同音を5指→1指、あるいは1指→5指への置き換えによる連打を素早く正確に行う必要があります。 この素早く正確なポジション移動がこの曲の弾く上で技術的な課題になります。 曲自体、この絶え間ないポジション移動で成り立っているようなものですが、 このポジション移動は常にミスタッチのリスクがあり、これを正確にできないとミスタッチばかりで曲にならない というケースもありえます。その意味でこの曲はエチュードとしても難易度は決して易しくはないと思います。 練習方法としてはとにかく遅いテンポでミスせずに繰り返し弾いて、その感覚を体で覚えるしかないと思います。 この演奏はやや守りに入っていてテンポは遅めですが、本当はもっと速いテンポの方が この曲の荒々しい激しさや暗い情熱が伝わる演奏になりますよね。
3つの新練習曲第1番へ短調
Three New Etude No.1 F minor(f moll)
1' 54''
2006/9/17
ショパンのエチュードと言えば、作品10、25の24曲がよく聴かれますが、その他に3つの新練習曲も書いています。 この曲はその中の第1曲で、左4、右3の複合リズムと、音楽的表現が課題の曲です。エチュードとしては 技術的には易しいほうです。
3つの新練習曲第3番変イ長調
Three New Etude No.3 A-flat major(As dur)
1' 36''
2006/9/19
この曲は3つの新練習曲の第3曲(第2曲?)です。左2、右3の複合リズムの曲ですが、 右手のややこしい和音をしっかり譜読みして記憶し再現すること、和声の微妙な変化を感じ取って音楽の流れに 反映させることが大きな課題です。エチュードとしては易しい曲ですが、右手の和音は本当にややこしいですよ。

その他〜Others〜

曲目演奏時間演奏者コメント
舟歌嬰ヘ長調Op.60
Barcarolle F-sharp major(Fis dur), Op.60
8' 25''
2006/11/20
ショパンの舟歌はこの1曲のみで、幻想ポロネーズとともに、ショパン晩年の最高傑作の1つとされています。 一聴して穏やかな曲調ですが、実は音楽的にものすごく奥が深い曲です。 しかも、技術的にも単音の長いトリル、プラルトリラー、重音トリル(ダブルトリル)、6度のレガート奏法など、 かなり高度な技術が必要とされ、これらをごまかしなく完璧に弾くのは極めて難しいです。 今回の録音のための練習で一応技術的には消化したと思っていますが、全てが揃った録音が取れないため、とりあえず 暫定でアップしておきます。
子守歌変ニ長調Op.57
Berceuse D-flat major(Des dur), Op.57
4' 16''
2006/7/20
ショパンの曲の中ではマイナー作品という位置づけで一風変わった曲です。左手の伴奏音型は終止変わらず、右手の テーマが様々な形で変奏されます。いわゆる変奏曲の一種です。右手には3度のスケール、6度の分散パッセージ、 半音階、装飾的パッセージなど様々な形で、難しいテクニックが要求されます。これをさりげなくさらりと 弾かなければならないのですが、この演奏はちょっと完成度が低いです。これを聴くと、逆に眠れなくなってしまうかも、ですね。
コントルダンス変ト長調
Contredanse G-flat major(Ges dur)
2' 23''
2007/8/10
「コントルダンス」は、イギリスに起源を持つ2拍子系の軽快な舞曲で、英語では「カントリーダンス」と言います。 ショパンのコントルダンスはこの1曲のみで、短いトリオを持つ3部形式の曲です。技術的にも易しく、 初心者の方におすすめの曲です。但し、主部は♭6個の変ト長調(途中変ニ長調に転調)、中間部(トリオ)は ♭7個の変ハ長調(ロ長調に対応)であるため、フラットの多い曲の譜読みに慣れていないと、多少厄介かもしれない、 とも思います。しかし丁寧に音を拾っていけば確実にものにできる曲ではあると思います。

 

ショパン以外の作品

アレクサンドル・スクリャービン(Alexander Scriabin, 1872〜1915, ロシア)

曲名演奏時間演奏者コメント
エチュード嬰ハ短調Op.2-1
Etude in C-sharp minor(cis moll), Op.2-1
2' 43''
2013/4/21
スクリャービンが何と14歳の時の作品です。憂鬱な中にも何ともやるせない思いが込められているかと思えば その一方で諦念がよぎり、中間部は長調には転調して憂鬱ながらも柔らかな光が差し込んでくるようで 同じ音型が繰り返されるときはさらに柔らかく優しく、という無限のニュアンスと深さが音に込められています。 この中間部は最後に元の調である嬰ハ短調になって再現され、こちらは中間部の「柔らかな光」が「絶望」に変わっています。 こんなものすごく「深い」音楽が、弱冠14歳の少年によって書かれたという事実に驚きを禁じることができないです。 ある意味、ショパンよりも早熟な天才ではないでしょうか?凡人の僕が言うのもおこがましいようですが、 「とてつもない天才」というよりほかないです。なお、この曲は「エチュード」という名が付いていますが、 技術的には易しい曲です。技術的な課題としては和音に埋もれそうになってしまう主旋律を引き立たせることと 和音1つ1つの音量、音色のバランスを整えること、左手の遅い連打のコントロールだと思います。 僕自身、2010年8月以来、演奏公開を長期間休んでいて、ブランク明けの久々のアップです。 この曲がその記念すべき再開の1曲になりました。
エチュード嬰ヘ短調Op.8-2
Etude in F-sharp minor(fis moll), Op.8-2
1' 44''
2008/6/8
左3連符、右5連符を基調とした複合リズム(クロスリズム)の練習曲です。右手は5連符、6連符、左手は3連符、16分音符などに 変化し、本当に右と左のリズムがバラバラで、しかもテンポルバートを多様しなければ音楽として成り立たない曲なので、 ピアノを弾き慣れている人でないと自然な演奏をするのが非常に難しい曲ではないかと思います。 スクリャービンはこのようなクロスリズムを多用する傾向があったようです。 短い曲ですが、中間部のドラマティックな展開は、聴く人を強く弾きつける魅力があって、個人的には好きな曲です。
エチュード変イ長調Op.8-8
Etude in A-flat major(As dur), Op.8-8
3' 24''
2008/6/8
速度表示はLentoで非常にテンポが遅く抒情的で美しい曲です。臨時記号が割合的に多く、和音の配列を覚えるのに 多少時間がかかりますが、技術的には易しい曲なので、根気さえあればものにしやすい曲ではないかと思います。 技術的な課題のメインは、主部の再現部で現れるクロスリズムです。右手の中だけで8分音符と3連符を弾き分ける音型が 多少弾きにくいです。
エチュード嬰ニ短調Op.8-12
Etude in D-sharp minor(dis moll), Op.8-12
2' 29''
2006/6/1
スクリャービンのエチュードの中ではこの曲の人気が特に高いようです。右手は基本的にオクターブで動き回り、 左手には10度や11度が現れ、しかもかなり広い音域で目まぐるしく動き回り、跳躍します。 これだけオクターブ、跳躍が多いということはそれだけミスする危険箇所が多いということです。 暗譜も厄介ですし、意外な難曲です。
エチュード嬰ハ短調Op.42-5
Etude in C-sharp minor(cis moll), Op.42-5
3' 15''
2007/2/2
この曲は2006年あたりから急に惚れ込んで、約1年、断続的に弾いてきた曲です。 実はOp.8-12よりもずっと好きな曲で、特に曲中2回現れる破滅的な美しい旋律部(特に2度目)に惹かれました。 実はこの部分を弾きたいがために取り組んだようなものなのですが、一番厄介なのは、実は2ページ目だったりします。 まだ結構ミスがありますけど、何とか妥協レベルギリギリの録音が録れたので、暫定アップです。 皆さんも是非この曲に取り組んでみてください。究極に難しいですよ。
 

クロード・ドビュッシー(Claude Debussy, 1862〜1918, フランス)

曲名演奏時間演奏者コメント
アラベスク第1番ホ長調
Arabesque No.1 in E major(E dur)
3' 30''
2006/8/26
この曲の冒頭部分はテレビCMなどでよく使われているので、皆さんも案外知っているのではないでしょうか? ドビュッシーは時代とともに、徐々にフランス近代の作風に変化し、調性感が希薄な作品を書くようになりますが、 この作品は、初期の作品ということで、ロマン派の影響がかなり残っています。でも美しく斬新なハーモニーは やはりドビュッシー特有のものですね。
ベルガマスク組曲〜第1曲「前奏曲」
Prelude in F major(F dur)
3' 36''
2009/3/20
ドビュッシーのベルガマスク組曲は4曲からなり、特に第3曲「月の光」が有名ですが、 その曲集の幕開けとなるのが、この曲「前奏曲」です。 初期の曲ですが、ドビュッシーの個性が随所に現れていて、幻想的で美しい和声が随所に現れています。 力強い和音や速いパッセージもあり、適度に華やかで聴きばえのする曲であるため、 ドビュッシーのピアノ曲の中でも人気の高い曲です。
月の光(ベルガマスク組曲〜第3曲)
Clair de lune in D-flat major(Des dur)
4' 53''
2006/10/20
ドビュッシーの作品の中で最も有名な曲だと思います。 8分の9拍子という不思議な拍子と不安定な調性、そして、中間部で求められる 独特の演奏技法。冴えた音色を出すのも難しいですし、ルバートも多用する必要もありますね。 技術的にも音楽的にも耳に聴こえるほど易しくない曲です。特に中間部のアルペジオの粒を揃えるのに神経を使う必要があり、 精妙に演奏するのが大きな課題だと思いました。
夢想
Reverie in F major(F dur)
4' 13''
2008/1/21
響きが非常に美しい曲で、「夢想」または「夢」として一般に親しまれているドビュッシーの人気曲の1つです。 ドビュッシーのピアノ曲としては初期の作品に属し、調性は比較的はっきりしていますが、 ピアノの繊細な響きを駆使して陰影に富んだ幻想的な音の世界を作り上げています。 聴いていると眠くなる、という結果は同じでも、「退屈で」というのではなく「響きが心地よくて」という 演奏が理想ですね。
亜麻色の髪の乙女
La Fille aux Cheveux de Lin in G-flat major(Ges dur)
2' 35''
2008/2/2
この曲は前奏曲第1巻(全12曲)の中の第8曲で、何故かこの曲だけが非常に有名なため、単独で演奏されることも多いです。 音の数の少ない、ゆっくりしたシンプルな曲で、技術的にも易しい曲ですが、ドビュッシーの音楽の響きの美しさが味わえる曲です。 アラベスク1番、月の光、夢想よりも難易度が低く、短期間で取り組む曲として最適です(ただ演奏効果は低いので、 発表会で演奏される機会は少ないようです)。
レントより遅く
La Plus que Lente in G-flat major(Ges dur)
4' 25''
2008/12/14
速度指示がそのまま曲名となっていますが、実はこの曲はワルツ(と言ってもフランス風の「ヴァルス」です)。 ドビュッシーの作った数少ないワルツの1つで、ドビュッシーの曲としては一般によく知られている曲です。 ゆっくりとしたテンポで、幻想的なハーモニーが美しい曲ですが、難易度的にも非常に易しく、気軽に取り組むことができます。 個人的には前半、変ホ長調で盛り上がる部分までが好きです。
 

モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875〜1937, フランス)

曲名演奏時間演奏者コメント
亡き王女のためのパヴァーヌ
pavane pour une infante defunte in G major(G dur)
5' 25''
2008/8/23
ラヴェルの作品は、一般のピアノ愛好者には手が出ないほどの難曲が多いのですが、その中にあってこの曲は 難易度があまり高くなく、一般に親しまれている作品です。「亡き王女」というやや意味深なタイトルですが、 作曲者本人によると、実はあまり意味はなく、言葉の調子(語呂の良さ)が理由だとか…。 ベラスケスの描いた「王女の肖像」にインスピレーションを受けたとも言われています。 ラヴェル学生時代の作品で、作曲者本人によるとあまり気に入っていなかったそうですが、 皮肉屋でも知られる彼のこと、それが本心だったと決めつけることはできないようです。 ちなみに「パヴァーヌ」というのは、スペイン由来のテンポの遅い2拍子系の宮廷舞曲です。 美しく感傷的な旋律が心にしみる曲で、主題が登場するたびに内声の伴奏音型が複雑になっていき、 その間に、はかなげな響きを持つ挿入部が置かれています。ラヴェルにしては珍しく、調性感が濃厚ですが(ト長調)、 本曲で使われている斬新な響きを持つ和声には、ラヴェルの個性も現れています。
 

ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms, 1833〜1897, ドイツ)

曲名演奏時間演奏者コメント
間奏曲イ長調Op.118-2
Intermezzo in A major(A dur), Op.118-2
5' 18''
2007/8/23
ロマンティックで美しい曲だと思います。三部形式で主部はイ長調で始まり穏やかですが、リズム的にも対位法的にも手が込んでいて、 呼吸(フレージング)が多少難しいと感じました。中間部は雰囲気が一転して、静かな部分にもやるせない情熱が感じられますね。 全体的に穏やかな曲調なのに、これを弾いていると感情移入して、何故か熱くなってしまうのは不思議です。
ラプソディー第1番ロ短調Op.79-1
Rhapsody No.1 in B minor(h moll), Op.79-1
8' 48''
2008/8/15
ラプソディー2番に比べるとこの曲は若干人気が低いようですが、2番に比べて規模が大きく充実した作品で難易度も若干高いです。 分厚い和音が連続する曲であるため演奏効果は高いですが、いかにもブラームスらしく重心の低い和音が多いです。 形式は3部形式で、主部は初出と再現と、同じものが用いられていますが、個人的にはこの主部の中ほどに登場するニ短調の 孤独な感じのする旋律に一番強く惹かれていて、ここを弾きたいがために取り組んだと言っても過言ではないくらいです。 しかし、一番の難所は主部の最後の方に登場する左手アルペジオ&右手オクターブ+左手和音の音型が連続する部分で、 ここだけはかなり時間を割いて手に馴染ませるための集中練習をしました。参考までに、この部分の左手アルペジオでは 右手が空いているため一番上の音を右手の2指で取っています(これを聴いて「手デカっ!」と思った方、誤解のないように?!(笑))。 手が大きく分厚い和音の連続する曲が得意な人にはおすすめの1曲です。
ラプソディー第2番ト短調Op.79-2
Rhapsody No.2 in G minor(g moll), Op.79-2
6' 13''
2008/7/6
ブラームスのピアノ曲の中では比較的よく知られている曲ですが、曲の内容はブラームスらしく渋く難解です。 まず出だしからして調性不明でとっつきにくさを感じる人も多いのではないかと思います。 しかし、内容的にはソナタ形式で規模がやや大きく充実した作品です。第1主題は、主に2拍目と3拍目で左手が右手を超えて 両手が交差する弾き方をすることになり、それに加えて跳躍が多く、技術的には予想以上に難しく感じました。 その分、演奏効果もあるため、演奏会では比較的よく弾かれる曲のようです。 2日仕上げで断然弾き込み不足ですが、その割にましな録音がとれたのでアップしてしまいました。
ワルツ変イ長調Op.39-15
Waltz in A-flat major(As dur), Op.39-15
1' 31''
2007/1/9
ブラームスというと重厚で大規模な曲を作る本格派作曲家というイメージがあると思いますが、 実はヨハン・シュトラウスのワルツが大好きだったという意外な一面もあります。 この曲は、そんなブラームスの遊び心が表れた曲で、ブラームスのワルツの中では一番有名な曲です。 どこかで聴いたことがある方も多いのではないかと思います。
 

セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov, 1873〜1943, ロシア)

曲名演奏時間演奏者コメント
エレジー変ホ短調Op.3-1
Elegy E-flat minor(es moll), Op.3-1
5' 13''
2007/1/13
「エレジー」は、日本語では「悲歌」あるいは「哀歌」と訳すそうで、その名の通り、ラフマニノフ特有の泣き節が満載(?)の 1曲です。暗く悲しく心を揺さぶる旋律と中間部後半のドラマティックな展開が聴く人を惹き付ける、ラフマニノフの若き日の名作です。 この曲は最近初めて聴いて、一耳惚れしたのがきっかけとなって、一週間足らずで一気に仕上げました。 短期仕上げということでまだまだ弾き込み不足ですが、この曲の魅力が皆さんに少しでも伝われば演奏者としても嬉しいです。
パガニーニの主題による狂詩曲〜第18変奏
2' 36''
2007/3/27
この曲はパガニーニの有名な主題をテーマとした24の変奏からなり、原曲はピアノと管弦楽のための、ピアノ協奏曲的な作品です。 名人芸的ピアニズムを堪能できる名曲としても知られていますが、中でも一番有名なのがこの第18変奏で、 この曲の最大の聴きどころだと思うので、あえて取り上げてみました。ラフマニノフ独特の哀愁漂う旋律、ハーモニーが 心に響く部分ですね。この演奏は、ピアノとオーケストラの各部を自分でアレンジして、色々な声部、要素を 欲張りなくらい盛り込んだ編曲にしてしまいました。その分、演奏もいっぱいいっぱいです(苦笑) でも、皆さんにもこの曲の良さが伝われば、と思いながら弾きました。
前奏曲第1番嬰ハ短調Op.3-2「鐘」
Prelude No.1 C-sharp minor(cis moll), Op.3-2
4' 27''
2008/7/21
ラフマニノフの前奏曲の中で最も人気の高い曲です。「鐘」あるいは「モスクワの鐘」のタイトルで親しまれている名曲で、 モスクワのクレムリン宮殿の荘厳な鐘の音にインスピレーションを受けたと言われています。主部はレントという指示があるように 遅いテンポで暗く荘厳で分厚い和音が連続しますが、中間部は同じ嬰ハ短調という調性ながらアジタートで一転して速いテンポになり、 中間部最後の左右両手の和音の交互連打がすさまじい演奏効果を上げます。この中間部はやや手に馴染みにくく難易度が高いと 感じました。主部の再現は、何と4段譜で書かれていて、地響きを立てるかのような分厚い和音を両手で鳴り響かせ、 ここでも演奏効果を上げる仕組みが施されています。最後は余韻を残しながらフェードアウトするように終わります。 この曲はラフマニノフの出世作の1つでもあり、ラフマニノフ自身、演奏会でも好んで取り上げていたようです。
前奏曲第5番ニ長調Op.23-4
Prelude No.5 D major(D dur), Op.23-4
4' 14''
2007/12/27
ラフマニノフの前奏曲も24曲からなりますが、この曲はその中で特に好きな部類に入ります。 (他に特に好きなのはOp.23-5,Op.23-6,Op.32-5,Op.32-12などです) この曲は、舟歌風のリズムに乗って、ゆったりとした美しいニ長調の旋律が心地よく流れる曲ですが、技術的には地味に難しい曲です。 伴奏部は左手だけでなく多くを右手で受け持つことになりますが、その際、自然な運指を独自に考えること、旋律が埋もれないように やや目立った音量、音色で弾き分ける必要があることや、後半に跳躍や音域の広い分散和音があることなど、 意外に難しい課題が盛り込まれています。
前奏曲第7番変ホ長調Op.23-6
Prelude No.7 E-flat major(Es dur), Op.23-6
3' 10''
2008/3/25
ノクターン風の流麗な旋律が魅力的なプレリュードです。左手の16分音符の伴奏音型がゆっくりと絶え間なく続く中で、 オクターブを基本にした右手の美しい旋律が流れていきます。本当に「夜」を思わせる曲調ですが、ショパンのノクターンと違い、 ラフマニノフらしい作風が随所に見られます。特に左手の16分音符の絶え間なく続く音型は、いかにもラフマニノフらしく、 規則性があまりないため、例のように運指を決める作業から入る必要があります。譜読みと暗譜(弾き込みによる定着も含めて)に 多少時間がかかる曲ですが、ラフマニノフの曲としては技術的にはかなり易しい部類に入ると思います。
前奏曲第23番嬰ト短調Op.32-12
Prelude No.23 G-sharp minor(gis moll), Op.32-12
2' 23''
2013/7/28
ラフマニノフの前奏曲の中では比較的よく知られている作品です。右手の静かな高速の分散アルペジオの伴奏型が 水面の波紋を連想させ、左手で何とも物悲しい旋律が奏でられます。中間部は後半に向けて盛り上がりを見せ、 コーダ直前にも一時的な高揚を見せますが、全体として印象派を連想させる細かく薄い響きが何とも繊細な作品です。 技術的にはラフマニノフにしては易しい部類に入ると思いますが、もつれやすい音型が結構多いのではないかと思います。 アルペジオやトリル、伴奏音型などもきれいに粒が揃わないとこの曲の良さが全く出ないという意味では、 ある程度のレベルに達した人にしか弾けない曲とも言えそうです。
 

エドワード・エルガー(Edward Elgar, 1857〜1934, イギリス)

曲名演奏時間演奏者コメント
愛の挨拶Op.12
Salut D'amour in E major(E dur), Op.12
3' 13''
2007/3/27
この曲は有名ですね。皆さんもどこかで耳にしたことがあるのではないか、と思います。 作曲者が婚約者に贈った愛の抒情詩であるためか、甘い旋律が魅力的ですね。 誰かを思いながら弾いた、というわけではありませんが、そういう気持ちになって弾ければ こういう曲の良さはさらに引き立つのではないか、と思います。
 

ヨハン・セバスチャン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1680〜1750, ドイツ)

曲名演奏時間演奏者コメント
イタリア協奏曲ヘ長調BWV971〜第1楽章3' 43''
2009/1/6
曲名には「協奏曲」とありますが、この曲はピアノと管弦楽による今日の’いわゆる’「協奏曲」とは異なり、 初めから鍵盤楽器独奏用として書かれたものです。当時は「協奏曲」と言えば、弦楽による合奏協奏曲を指していましたが、 バッハは本曲で、この様式を2段チェンバロ独奏用に用いたため、「協奏曲」という名があるようです。 このように本曲のオリジナルはチェンバロ曲ですが、それを現代ピアノで演奏する場合、限りなくチェンバロを意識した演奏にするか、 現代ピアノの響きを重視した演奏をするか、大まかに2通りのアプローチがあると思います(僕の流儀は圧倒的に後者です)。 この第1楽章は溌剌とした明るい曲で、特に冒頭部分はテレビCMに使われることが多く有名です。 個人的には「あのブーニンがうちのピアノを弾いてくれる」という1990年頃に流れていたY社の自動ピアノのテレビCMで この曲が使われていたのが記憶に残っています。あの頃は今以上に「ショパン一筋」だったため、曲名すら知りませんでしたが…
主よ、人の望みの喜びよ3' 00''
2007/8/4
この曲も有名で皆さんも必ずどこかで耳にしたことがあると思います。 原曲は教会カンタータで管弦楽伴奏付きのコラールですが、それをマイラ・ヘスによってピアノ編曲されたものを ここでは演奏しています。演奏は右手のパッセージに和音が入るため、ムラなく演奏するのにも 神経を使います。もうちょっとゆっくり弾くべきだったかな、とも思いましたが、 この曲に関しても、体内テンポがかなり速いようで、これでも速すぎるとは感じないんですよ(苦笑)
 

ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756〜1791, オーストリア)

曲名演奏時間演奏者コメント
トルコ行進曲
Turkish March in A minor(a moll)
3' 13''
2008/6/29
誰もが知っていると言ってもいいほど超有名な「トルコ行進曲」です。本来この曲は、ピアノソナタ第11番イ長調K.331の 第3楽章(最終楽章)ですが、この楽章だけ飛びぬけて有名で、単独で演奏される機会も多いです。 「エリーゼのために」と同等レベルの難易度という誤解が広まっていて (全音ピアノピースの難易度が「B」になっているのが原因でしょうか)、 小学生のピアノレッスンでも取り上げられることが多い曲ですが、 速い分散オクターブや中間部の細かいパッセージを正確にごまかしなく弾き切るには ある程度の手の大きさに加えてかなりの技術が必要になると僕は思っています。 実際の難易度はショパンの「小犬のワルツ」以上で、中級(全音の難易度C)は確実にあります。
 

ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770〜1827, ドイツ)

曲名演奏時間演奏者コメント
ピアノソナタ第8番ハ短調Op.13「悲愴」〜第1楽章
Piano Sonata No.8 C minor(c moll), Op.13 'Pathetique' 1st.mov.
8' 16''
2007/8/1
ベートーヴェンの初期の傑作、有名な「悲愴ソナタ」の第1楽章です。ベートーヴェンは運命交響曲や 英雄交響曲の第2楽章「葬送行進曲」などにも「ハ短調」という調性を 使っていて、このハ短調という暗く荘厳な調性に特別な思い入れがあったものと考えられています。 この曲は中学時代にピアノレッスンで習った曲ですが、あの頃の記憶と勢いだけで弾き飛ばしています。 もう少し丁寧に練習して弾き込む必要がありそうですが、あまりたくさんの人に聴かれるわけではないですし、 気楽にアップしてみました。かなりアップテンポでミスの多い演奏ですが、ご勘弁を。
ピアノソナタ第8番ハ短調Op.13「悲愴」〜第2楽章
Piano Sonata No.8 'Pathetique' 2nd.mov.
5' 15''
2007/8/4
「悲愴ソナタ」の第2楽章です。変イ長調のロマンティックな緩徐楽章です。 この楽章だけ取り上げられることも多く、この楽章の出だしの旋律は、どこかで耳にしたことがある人も多いのではないか、 と思います。技術的には難しくないですが、表現が難しく、テンポルバートや微妙な「間」、「ため」が必要になります。
ピアノソナタ第8番ハ短調Op.13「悲愴」〜第3楽章
Piano Sonata No.8 'Pathetique' 3rd.mov.
4' 23''
2007/9/12
「悲愴ソナタ」の第3楽章です。やっぱりソナタを弾くからには全楽章を、ということで、 尻切れトンボにならないように、忘れないうちに何とかアップまでもってきました。 練習不足&弾き込み不足ですが、とりあえずこの演奏をアップしておきます。 第1楽章同様、速めのテンポで弾きました。
ピアノソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2「月光」〜第1楽章
Piano Sonata No.14 C-sharp minor(cis moll) Op.27-2 'Moon Light' 1st.mov.
5' 34''
2007/7/14
ベートーヴェンの三大ピアノソナタ(月光、悲愴、熱情)は、当サイトでもいずれ全楽章アップする予定でいますが、 まずは第一弾として、最も易しく抒情的な「月光」の第1楽章をアップしてみました。 節回し的にはちょっとショパンチックな感じですけど、自分にとって自然に感じられる範囲でルバートを取り入れてみました。 現在、「悲愴」と同時進行で「月光」の第3楽章も練習中ですが、アップできる見通しは今のところ立っていないです。 気長に取り組みたいと思います。
エリーゼのために
Fur elise in A minor(a moll)
3' 05''
2007/7/30
説明の必要のない超有名曲「エリーゼのために」です。こういう曲はちょっと陳腐かな、とも思いましたが、 ピアノ学習者の誰もが通る道ですよね。これを弾くと、小学生の頃が懐かしくなります。 ベートーヴェンらしくないロマンティックで甘い曲ですね。エリーゼという名前の女性は、ベートーヴェンの周囲には 実在しなかったようで、「テレーゼ」をもじったものと聞いたことがありますが、真相はどうなのでしょうね。
 

グスタフ・ランゲ(Gustav Lange, 1830〜1889, ドイツ)

曲名演奏時間演奏者コメント
花の歌
Blumenlied in F major(F dur)
4' 26''
2007/7/30
これも小学生のピアノ発表会の定番中の定番です。ピアノを習ったことがない人は超マイナー曲?と首を傾げる人が多いと 思いますが、この曲はピアノ学習者の間ではかなりポピュラーです。演奏者も小学生の頃、この曲を弾きましたが、 その頃、果たしてどのように弾いたのか、よく覚えていなかったりします。こんな感じでいいのかな…(笑)
 

フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn, 1809〜1847, ドイツ)

曲名演奏時間演奏者コメント
無言歌集より〜春の歌Op.62-6
2' 28''
2008/3/16
メンデルスゾーンの曲の中でも「結婚行進曲」と並んで最もメジャーな曲で、知らず知らずの間に耳に入っている類の曲です。 易しそうに聴こえますが、連続するアルペジオは結構覚えにくかったです。アルペジオが連続する分、音が多いので、 楽譜を見ながらでは次の音に反応できない箇所が多く、あまり好きではない曲にもかかわらず、結局は暗譜を余儀なくされました。 これは完全に誤算でしたが、いつか弾きたいと思っていた曲がアップできたので、これでよしとしなくちゃですね。
無言歌集より〜ベニスのゴンドラの歌Op.30-63' 20''
2007/8/10
メンデルスゾーンの無言歌集の中では、「春の歌」が有名ですが、ベニスのゴンドラの歌も数曲あり、これはその中の1曲です。 8分の6拍子の舟歌のリズムに乗って、右手が嬰へ短調のもの悲しい旋律を奏でます。 技術的にも非常に易しく、楽譜も見開き2ページということもあり、初心者の方にもおすすめの1曲です。
無言歌集より〜浮雲Op.53-22' 50''
2013/6/2
 

ロベルト・シューマン(Robert Schumann, 1810〜1856, ドイツ)

曲名演奏時間演奏者コメント
子供の情景〜トロイメライ
Traumerei in F major(F dur)
2' 17''
2008/7/12
この曲も、もう誰もが知っていると言っていいほど有名ですね。トロイメライは、「子供の情景」という曲集の中の1曲で、 楽譜にして1ページと極めて短く、また技術的に易しい曲です。シューマンの曲らしく拍子が取りにくいですが、 きちんと拍を数えた上でルバートをかけて歌うと、聴かせられる演奏になると思います。
謝肉祭〜第12曲「ショパン」
Carnaval Op.9-No.12 'Chopin' in A-flat major(As dur)
1' 14''
2007/10/28
謝肉祭はシューマンの代表作の1つで、21曲の小曲から構成されていて、本曲はその第12曲です。 何故「ショパン」?と首をかしげる人もいるかもしれませんが、シューマンはショパンを「天才」と認め、尊敬していたようです (逆にショパンはシューマンの芸術家としての在り方を軽蔑していた節がありますが…)。 この曲は、そんなシューマンが、尊敬するショパンの肖像を音で表したもので、左手の幅広い音域の伴奏の上に 流麗で感傷的な旋律が流れるもので、まさにショパンの象徴である「ノクターン」そのものです。謝肉祭の全曲を初めて聴いた時に、 もっとも印象に残ったのが、この曲と最終曲だったので、あえてこの曲を取り上げてみました。
幻想小曲集〜第1曲「夕べに」
4' 14''
2009/4/19
シューマンの幻想小曲集は8曲の小品からなり、全体的に夕方から夜の雰囲気を醸し出す音楽となっています。 この中で第1曲は「夕べに」というタイトルの曲で、8分の2拍子という拍子を用いながらも、1拍は3連符で構成され、 2音毎に旋律が奏されるという複リズムとなっている点がユニークです。こうしたリズムへのこだわりも シューマンらしさを感じさせます。しかしそうした理屈はともかく、たそがれ時を思わせる恍惚とした旋律が美しく、 夕暮れ時の静かな時の流れを感じさせる幻想的な1曲です。
幻想小曲集〜第2曲「飛翔」
3' 25''
2009/4/19
この曲は、第1曲とは対照的な性格を持つ曲で、激しく情熱的です。 右手の和音は短10度まで要求されるため、ある程度の手の大きさが必要になることに加え、 右手で弾く16分音符の連続する部分も技術的に弾きにくい部分です。 このような類の独特の弾きにくさはシューマン独特のものです。 この曲は、ピアノのレッスンでも取り上げられる機会の多い曲なので、ピアノの学習経験を持つ人の間では、 そこそこ知名度のある有名な曲です。
「ミルテの花」〜第1曲「献呈」:リスト編曲
3' 30''
2013/7/21
歌曲集「ミルテの花」は、シューマンが、愛するクララとの結婚の前夜に捧げた愛の歌ですが、 その中でもこの第1曲「献呈」は特に親しまれており、リストのピアニスティックな編曲により、 この作品のロマンティックな旋律が、一際華やかで聴き映えのする情熱的な音楽に生まれ変わっていると思います。 むしろこのリスト編曲の方が独り歩きしている感すらあるほどです。 この曲は旋律部が途中で左手に移るなど、各声部の音量のコントロールが結構難しいです。 後半の華やかな部分もリスト編曲ならではです。 もう少し遅いテンポで丁寧に静かに弾く人も多いようですが、曲調から考えて、個人的には大音量で華やかに 弾き飛ばす方が演奏効果が高いこのリスト編曲にマッチしていると感じたので、 後半はかなり熱い弾き方をしました。
 

フランツ・リスト(Franz Liszt, 1811〜1886, ハンガリー)

曲名演奏時間演奏者コメント
愛の夢第3番
Liebestraume No.3 in A-flat major(As dur)
4' 20''
2007/9/16
この曲も有名ですね。「愛の夢」というのは「3つのノクターン」という3曲の曲集の副題だそうで、 この他にも第1番、第2番があるようですが、何故かこの第3番だけが有名になったそうです。 リストの作品としては難易度はそれほどではないものの、主部では内声部が旋律を担っていて、 ともすると旋律が伴奏に埋もれがちになってしまう点や、動きのあるやや激しい中間部、 そしてその前後この細かいパッセージの処理など、難しい課題の多い曲です。
3つの演奏会用練習曲〜ため息
Un sospiro in D-flat major(Des dur)
5' 29''
2008/4/7
この曲も人気が高いですね。冒頭はアルペジオの伴奏の上に単音の旋律が奏でられる、一聴すると何の変哲もない曲に 聴こえると思いますが、実はアルペジオは両手にまたがっていて、その一瞬の隙に、右手と左手を交互に使って 旋律を弾くことになっています。これに面食らう人も多いのではないかと思います。 難所は、ヘ長調で始まる華やかな部分と、両手で弾く2度の細かく速いパッセージ、その2度目直前、広い音域を駆け巡る パッセージで、ここを何とかものにできれば終わりが見えてくると思います。 前後の変ニ長調の部分は、回数を弾いて定着させるという 原始的な練習方法でものにすることができると思います。リストとしては易しい部類に属する曲ですが、 完璧に弾こうとすると、技術的にはかなり難しい曲だと思います。
コンソレーション第3番
Consolation No.3 in D-flat major(Des dur)
4' 08''
2008/11/8
リストのコンソレーション(慰め)は6曲からなりますが、 この第3番が最もよく知られています。変ニ長調という調性を選び、揺れ動く波のような左手の伴奏に乗って、 美しく哀愁を帯びた旋律が右手で静かに歌われる曲想は、まさにショパンのノクターンを想わせるものがあります。 この曲は、リストにしては例外的に非常に易しく、気軽に取り組める曲です。 皆さんにも弾いてもらいたい曲の1つです。
 

フランツ・シューベルト(Franz Schubert, 1797〜1828, オーストリア)

曲名演奏時間演奏者コメント
即興曲変ホ長調Op.90-2
Impromptu No.2 E-flat major(Es dur), Op.90-2
4' 22''
2008/3/16
シューベルトの即興曲の中では、Op.90-4とともに、ピアノ発表会定番の人気曲です。 作品90の4曲の即興曲の中で、最も高度の演奏技術が必要とされる曲で、その分華やかで演奏効果が高いため、 演奏される機会が多いです。主部は右手が絶え間なく高速に動き回り、いわゆる常動曲(無窮動曲)の一種と言えます。 この曲は、音の粒を揃えるのに神経を使いますが、使用しているピアノのアクションに問題があり、 通常のテンポでは音の粒の不揃いが耳につくため、苦肉の策として、かなりのアップテンポで弾き飛ばすことにしました。 この曲本来のテンポはもう少し遅く、特に主部の中ほどの短調で始まる部分は、もっと暗い影が差すような雰囲気を出さないと いけないと思います。また機会があったら、ピアノを代えて取り組んでみます。
即興曲変ト長調Op.90-3
Impromptu No.3 G-flat major(Ges dur), Op.90-3
5' 47''
2008/3/16
シューベルトの即興曲の中では、Op.90-2,4に次いで演奏される機会の多い曲で、 シューベルトの即興曲の中で、最も即興曲らしい曲ではないかと個人的には思います。 息の長いロマンティックで美しい旋律が、右手の分散和音の内声と左手の低音のバスの双方に支えられて流れていきます。 あくまで旋律は右手の最高音にあることが多く、この旋律を際立たせ、右手の内声部ときれいに弾き分ける必要があると思います。 技術的には変ホ短調で始まる中間部がやや難しいですが、運指を工夫するとミスタッチの確率を大幅に下げることができます。
即興曲変イ長調Op.90-4
Impromptu No.4 A-flat major(As dur), Op.90-4
6' 46''
2008/3/16
シューベルトの即興曲の中で、Op.90-2と並んで最も演奏される機会の多い人気曲です。 高音から駆け降りてくるアルペジオの連続音型と直後の短い連続和音の単位が形や調性を変えてしつこく繰り返され、 印象的な曲調です。アルペジオの連続は連打を含んでいて、繰り返されるたびに黒鍵と白鍵の位置関係が変わるので、 きれいに粒を揃えるのに多少神経を使う必要があります。中間部は嬰ハ短調となり雰囲気が一変し、やるせない情熱が 込められています。主部が戻ってからは1度目とほとんど同じものが繰り返されて終わります。
楽興の時第3番Op.94-3
Moment musicaux in F minor(f moll), Op.94-3
2' 04''
2008/3/26
この曲も有名ですね。左手は低音(単音)+和音という一定パターンの音型、一定のテンポを保ったまま、淡々と進みますが、 スタッカート、スラー、アクセント、スフォルツァンド、レガート、マルカートなどを駆使してメリハリをつけるのが この曲の表現の面白さだと思います。曲の性格上、弾く人によって大きな違いが表れにくい曲ではあると思いますが、 難易度も低く親しみやすい曲ではあると思います。
 

ピョートル・チャイコフスキー(Peter Tchaikovsky, 1840〜1893, ロシア)

曲名演奏時間演奏者コメント
「四季」より6月「舟歌」
Barcarolle in G minor(g moll)
4' 15''
2007/8/11
チャイコフスキーのピアノ独奏曲は少ないのですが、その中で「四季」は一般に親しまれている数少ない作品です。 「四季」は、各月に相応しい表題とそれらをピアノの音で描写した12の小品からなる曲集ですが、 その中でもこの6月「舟歌」は最も親しまれている曲です。いかにもチャイコフスキーらしい、 もの悲しく涙が出るような旋律が胸に迫ってくる曲です。技術的にやや弾きにくい部分も多く、耳に聴こえるほど易しくはないですが、 皆さんにもおすすめしたい曲です。
「四季」より10月「秋の歌」
Autumn song in D minor(d moll)
3' 54''
2009/3/20
この曲も、「舟歌」と同趣向の曲で、哀愁を帯びたもの悲しい旋律が心にしみる曲です。 「秋」というのは、日本人にとって寂寥感や哀愁、憂鬱といった感情を呼び起こす季節ですが、 こういった季節感は日本人特有のものではなく、洋の東西を問わず、 共通のものがあることを改めて感じさせてくれます。曲の途中、ヘ長調に転調する部分は、個人的には 二短調の部分以上に強い寂寥と孤独を感じます。易しい曲ですが、味わい深い曲だと思います。
 

アントニン・ドヴォルザーク(Antonin Dvorak, 1841〜1904, チェコ)

曲名演奏時間演奏者コメント
8つのユモレスクOp.101〜第7曲 2' 59''
2013/7/21
これはクラシック音楽に興味が全くない人でも聴き覚えがあるほど有名な曲ですね。 今さら何をそんな陳腐な曲を、と思われる方もいるかもしれませんが、実は僕はこの曲を今まで弾いたことが 一度もなく、何となく楽譜を見ながら弾いてみると、中間部が意外に劇的で驚いたのが今回この曲をアップした理由です。 この曲の中間部がこのようなことになっているとは1つの発見でした。 全体的にこの曲を淡々と弾く人が多いようですが、ここではデュナーミクやアゴーギクを広めにとって、ルバートも多用して、 「言いたいこと」をある程度主張する演奏をしてみました。
 

ジュール・マスネ(Jules Massenet, 1842〜1912, フランス)

曲名演奏時間演奏者コメント
タイスの瞑想曲
Meditation de Thais in D major(D dur)
4' 14''
2008/1/12
これは皆さんもどこかで耳にしたことがある曲だと思います。マスネはフランスのオペラ作曲家で、本曲「タイスの瞑想曲」は、 本来、オペラ「タイス」の間奏曲だそうです。しかしその旋律があまりに美しく傑出しているために、ヴァイオリン独奏や ピアノ独奏曲として編曲され、単独で頻繁に演奏されています。このピアノ編曲は、マイラ・ヘスによるものです。 この他に、マスネ自身によるピアノ編曲版も存在するようです。
 

ガブリエル・フォーレ(Gabriel Faure, 1845〜1924, フランス)

曲名演奏時間演奏者コメント
シシリエンヌOp.78
Sicilienne in G minor(g moll), Op.78
3' 58''
2008/1/12
シシリエンヌ(シチリアーノ)とは、南イタリアに起源を持つ舞曲で、通常は3拍子系(8分の6拍子、8分の12拍子、4分の3拍子など)で 遅めのテンポをとる短調の曲が多いようです。フォーレのシシリエンヌは、劇付随音楽「ペレアスとメリザンド」 の中の1曲で、本来は室内楽曲のようです。しかしピアノ編曲も、シンプルながらピアノの響きの美しさが味わえる編曲となっていると 思います。心にしみる曲ですね。
 

エドヴァルド・グリーグ(Edvard Grieg, 1843〜1907, ノルウェー)

曲名演奏時間演奏者コメント
抒情小曲集〜ノクターンOp.54-4
Nocturne in C major(C dur), Op.54-4
4' 03''
2008/1/14
「抒情小曲集」はノルウェーの作曲家グリーグの代表的作品集で、全10巻66曲からなりますが、この曲は第5集Op.54の中の 第4曲です。この「ノクターン」は、いかにもグリーグらしい、北欧の大自然を彷彿とさせる響きを持つ曲で、 北欧の神秘的な白夜を想像させる旋律とハーモニーが耳に心地よく響きます。 技術的に易しく短い曲ですが、グリーグの作風がよく表れた曲と個人的には思っています。
 

ジャン・シベリウス(Jean Sibelius, 1865〜1957, フィンランド)

曲名演奏時間演奏者コメント
5つの小品Op.75〜第5曲「樅の木」
The Spruce in B minor(H moll)
3' 10''
2009/7/18
シベリウスは国民楽派時代を代表するフィンランドの作曲家(グリーグと並び称される北欧の大作曲家)で、 ピアノ、管弦楽を問わず、聴く人に深い孤独感と身を切るような寂寥感を呼び起こす音楽を数多く書いています。 この曲、「樅の木」は、シベリウスのピアノ曲の中では 特によく親しまれている曲で、樹木をテーマにした5つの小品からなる組曲の中の1曲です。 深い霧に包まれたフィンランドの深い森と湖の風景の中に1本の樅の木が孤独に聳え立ち、人影らしきものは全くない、 時間が止まったかのような風景を想像します。本当に孤独で寂寥感を与える旋律が心にしみる曲です。 この曲は中間部のアルペジオの連続を含め、技術的に易しく書かれているため、取り組みやすい曲です。
 

テクラ・バダジェフスカ(Tekla Badarzewska, 1834〜1861, ポーランド)

曲名演奏時間演奏者コメント
乙女の祈り
La priere d'une Vierge in E-flat major(Es dur)
4' 10''
2008/7/12
「エリーゼのために」と並んで、ピアノ学習者の間では最もポピュラーな曲です。 この曲は、初めに示される上昇オクターブのテーマをもとに、次々に変奏されていく、極めてシンプルな変奏曲です。 しかも曲中を通して一定して変ホ長調で一度も転調することがなく、臨時記号も回音に含まれるナチュラルのみです。 このように作曲技法的に見れば注目、特筆すべきことは何もないのですが、旋律とその変奏が印象的で美しく、 ポーランド出身の女流作曲家バダジェフスカは、この1曲によって音楽史に名を残すことになりました。 オクターブ、トリル、上昇アルペジオをきれいに弾くのが課題ですが、技術的には難しくない曲です。
 

ウィリアム・ギロック(William L. Gillock, 1917〜1993, アメリカ)

曲名演奏時間演奏者コメント
叙情小曲集〜「秋のスケッチ」
Short Piano Pieces〜Autumn Sketch in B minor(h moll)
1' 04''
2008/7/11
作曲家も曲名も聴いたことがないという方が圧倒的多数だと思いますが、僕が小学生だった1980年代前半に、ピアノのレッスンで ピアノの先生のすすめでこの曲集を使っていた一時期があり、ギロックという作曲家の名前は知っていました。 その時に弾いた数曲のうち最も強く記憶に残っているのがこの曲です。 何故この曲が最も強く記憶に残っているかというと、やはりこの曲調です。 ロ短調の哀愁、寂寥感が強く胸に迫るこの曲調が小学生の僕の心の琴線に触れ、弾いている時に泣きだしたくなったのが 昨日のことのように思い出されますが遠い昔のことになってしまいました。 洋の東西を問わず、秋というのはセンチメンタルで哀愁漂う季節で、 音楽というのは万国共通語であることを改めて実感させられます。 この曲は難易度は極めて低く、初級者を対象としたものですが、 このシンプルな楽譜にこれほどの情感が込められるものなのか、という驚きを禁じ得ません。 この曲はギロックの「叙情小曲集」の中で特に傑出した白眉の名曲であることは間違いないと思います。 当時は知らなかったのですが、ギロックというのは現代のアメリカの作曲家で、この「叙情小曲集」は ピアノ学習者の音楽性養成のために使われることが多いようです。僕がこの曲を弾いていた小学生の頃、 作曲者のギロックさんも御存命だったことにも改めて驚きです。 インターネットで調べてみると、 今でも教材として使われているようで、やはりこの曲集の中ではこの曲が最も人気が高いようです。 録音は2008年7月ですが、簡単すぎる曲というただそれだけの理由で当サイトで公開はしていませんでした。 PCが故障して昔の古いPCを立ち上げた時に、そのPCにこの録音が入っていて、この曲の自分の演奏を久しぶりに聴いたときに これもアップしてみようかという気持ちになりました。アップは2016年1月11日です。
 

合唱曲・ピアノ伴奏

曲名演奏時間演奏者コメント
野生の馬 2' 55''
2013/6/16
中学生の時、何故か校内でクラス対抗の合唱コンクールというイベントが毎年秋にあって、 音楽担当の先生の第1指名で3年間、課題曲の伴奏者となりました。この「野生の馬」は中学校1年生の時の課題曲で、 6クラス中、僕の伴奏がダントツトップとの評価をいただいた思い出の曲です。それにクラスメートの頑張りや 自由曲のオリジナルのクラスの歌が高く評価されて学年優勝、その後、全校でも最優秀賞に輝きました。 ややテンポが速すぎるような気もしますが、当時の「攻めの伴奏」を思い出して、 28年前の思い出を懐かしみながら弾いてみました。このテンポでは歌がついていけませんね(苦笑)。
山のいぶき
3' 30''
2013/6/23
この「山のいぶき」は中学生の時の校内のクラス対抗の合唱コンクールで、中学校2年生の時の課題曲で、 この伴奏も音楽担当の先生の第1指名で僕が担当しました。学年集会などの全体練習では、僕が学年代表の伴奏者に選ばれて、 いつも伴奏をしていました。しかしピアノ伴奏自体はほとんど記憶にありませんでした。 「野生の馬」とは全く趣向が違っていて、こちらは流れるようなピアノ伴奏が何とも清々しく美しいですね。 ところどころに控えめなテンポルバートをかけたり間を取ったりして、歌が引き立つように工夫するのが 伴奏の醍醐味ですが、ピアノ演奏として聴いても鑑賞に十分耐えうる優れた作品だと思います。
巣立ちの歌
2' 54''
2013/6/23
中学校の卒業式の時に歌った曲です。ちなみに何故かこの時のピアノ伴奏は僕ではありませんでした。 卒業式の歌の定番だそうです。